本物そっくりでも「会社概要」がどこか変? “月1万件超”増幅する「悪質ショッピングサイト」を見破る方法

インターネットを通じて買い物をしたが「注文した商品が届かない」「粗悪品や空箱が届いた」などWEB上のショッピングサイトに関する相談や通報が相次いでいる。

「悪質なショッピング(EC)サイト」とされるのは、実在のサイトそっくりに模倣したものや、架空の企業をかたるサイトを運営し、商品を購入した消費者から金銭をだまし取るというもの。

「悪質ECサイトホットライン」を運営するセーファーインターネット協会に昨年寄せられた通報は2万8000件以上にのぼり、2021年に比べ1万件以上増加したことがわかった。注文前に悪質なショッピングサイトであることに気がつく人が増え、通報につながっているケースも考えられるが、国民生活センターに寄せられた相談数も前年に比べ倍増している 。

日本サイバー犯罪対策センター(JC3)「悪質なショッピングサイト等の通報件数」(https://www.jc3.or.jp/threats/topics/article-485.html)より

「悪質ショッピングサイト」は“見た目”でわからない

セーファーインターネット協会から情報提供を受け、悪質なショッピングサイトの調査・分析を行う日本サイバー犯罪対策センター(JC3)の担当者は、悪質なショッピングサイトの“見分け”の難しさについて説明する。

「洋服から工具まで、さまざまな品物をひとつのサイトで売っているのが特徴のひとつです。お店の名前はでっち上げや、正規サイトの名前を勝手に流用するケースがあります。

勝手に有名企業をかたるサイトは企業側での対策が採られ、比較的早期に見られなくなりますから、より危険なサイトはどこにでもあるような体裁のオンラインショッピングサイトであることが多いです」

売られているものは雑多でとりとめがない(悪質ショッピングサイトの例)

これらのサイトで一旦商品を注文してしまえば「商品が送られてこない」場合がほとんど。品物は送られてきたが、粗悪品や注文していない別の品物、あるいは空箱だったという報告もあったという。

個人口座への「銀行振り込み」は要注意

「フィッシング詐欺」ではクレジットカード情報などの重要な個人情報が盗まれるケースがあるが、悪質ショッピングサイトの利用をめぐっても同様の心配がされているという。

JC3担当者は「もしカード情報が盗まれていた場合、悪用されるのが今すぐなのか、何か月後なのかはわかりません。クレジットカードの被害というのは、すぐには露見しにくい」とこの手の犯罪の特性について話す。JC3でも、悪質なショッピングサイトでの商品購入をきっかけとするクレジットカード被害は把握できていない。

さらに、悪質なショッピングサイト被害者の支払いパターンはクレジットカード決済よりも「銀行振り込み」を求められることが多いという。

JC3「悪質なショッピングサイトへの支払い方法」(https://www.jc3.or.jp/threats/topics/article-485.html)より

「悪質サイトでは支払い方法として商品購入後に別途メールが届き、振り込み先の口座が指定されるというケースが多く見られます。また、クレジットカードでの決済を選択していたのに支払い方法が銀行振り込みに誘導されるケースもあります。

このとき指定される振り込み先が、企業名や企業の代表者の名前ではなく、“誰だかわからない”個人名の口座であることが多いのも特徴です」(JC3担当者)

「悪質」を見破るためのチェックポイント

「悪質なショッピングサイト」を見破る方法について、JC3担当者はチェックポイント4点を挙げる。

  • 商品の価格が極端に安い
  • 決済方法が銀行振り込みに限定される
  • 振り込み先が個人名義の口座である
  • 不自然な日本語表記(繁体字のフォントが使用されているなど)がある

「サイトを全体的にチェックしていただいて、ひとつでも怪しいところに気づいたら利用を中止していただきたいと思います」(JC3担当者)

また、WebサイトのURLを入力するだけで、そのサイトの信ぴょう性について確認することができる「SAGICHECK」(https://sagicheck.jp/)の活用も薦める。この「SAGICHECK」にはJC3のほか、ウイルス対策ソフトを手掛ける「トレンドマイクロ」なども協力している。

「会社概要チェック」のひと手間が被害を防ぐ

JC3担当者は、少しインターネットに慣れている人に向けて、事業者の氏名(名称)、住所、電話番号が記載されている「会社概要」ページの確認の徹底も呼びかける。

「注文する前に、会社概要に記載されている事業者名や住所などを、“検索”してみてください。悪質ショッピングサイトでは、会社名と会社概要をまるごとでっち上げている場合や、実在する会社の住所や代表者を切り貼りしているケースがありますが、いずれにしても、検索によって会社概要と検索結果にどこかしら違和感や矛盾が出てくると思います。特に初めて利用するショッピングサイトでは、会社概要のチェックは癖にしていただきたいです」

悪質ショッピングサイトの例。会社名で検索するとショッピングサイトを運営していない企業Aのサイトが、代表者の名前で検索するとまったく別企業Bの社長が表示された。(画像の一部を加工しています)

最後に大切な“冷静さ”

悪質ショッピングサイトの通報件数は増え続け、JC3の独自調査では月に平均1万件の新しい悪質なショッピングサイトが発見されている状況だという。

「オレオレ詐欺のようにテレビなどで取り上げられ、『こんな手口がある』と広く知られていれば警戒できますが、悪質ショッピングサイトの被害実態はあまり知られていません。インターネット上の非常に身近なところに悪質ショッピングサイトがあるんだということを1人でも多くの方にご認識いただきたいです。

欲しい商品が安い価格で販売されていたら、つい売り切れる前に早く買おうと焦ってしまうと思うのですが、少し立ち止まって冷静に買い物をしていただければと思います」(JC3担当者)

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