季節の変化とともに現れ、自然の中を優雅に駆け巡る美しい野鳥。バードウォッチングは、大自然を求めて山奥へ行かなくとも簡単にできるということは意外と知られていない…。市内にある公園や緑道などでも多くの野鳥を観察することができる。「ここにもいるかも?」と意識し始めることがポイント。ほら、今日もそこに野鳥たちが。(文・取材/伏見真理子)
初心者入門バードウォッチング
早起きをして公園へ出かけてみよう。木を見上げれば、それはもうバードウォッチングの始まり。春の訪れを感じながら野鳥を探してみよう。
野鳥とは? 渡り鳥とは?
飼育されていない鳥は全て野鳥。同じ地に一年を通して生息し続ける野鳥もいれば、渡り鳥と呼ばれ、食糧、環境、繁殖などの事情に応じて定期的に長い距離を移動する野鳥もいる。春になると、熱帯地方からやってくる野鳥がいる。熱帯の暑さの中での繁殖にはさまざまな課題をもたらすため繊細なひよこを育てるため北へ移動するのだ。
渡り鳥が移動する距離は、種によって異なるが、最小のハチドリは、ノンストップで 600マイルも移動することができ、ズグロアメリカムシクイは、2300マイルをノンストップで3、4日間飛行することができる。
適したシーズン
年中通して楽しむことができるバードウォッチングだが、3月から6月にかけてと、8月下旬から10月中旬は多くの渡り鳥を見ることができる。特に4月中旬から5月中旬の間はピークで約200種もの野鳥がニューヨークを訪れる。
ベストな時間帯は?
一番活発な時間帯は朝方からお昼前の午前11時頃まで。
必要なアイテムは?
双眼鏡や望遠カメラがなくても楽しめるということは意外と知られていない。初心者に大事なのは肉眼で野鳥を見る眼を養うこと。また、耳をすまして鳴き声を聞いてみよう。その先に、野鳥を見つけることができるはず。慣れてきたら、双眼鏡を使って少し高いところを見てみよう。
市内のオススメスポット
セントラルパーク centralparknyc.org
全米でもトップクラスのバードウォッチング有名スポット。同公園内にある4カ所の観察ポイントの中でも❷の「ザ・ランブル」は一番有名で野生生物の繁殖を助ける緑豊かなエリアだ。
❶ ノース・ウッズ
Mid-Park at 101st-110th st.
❷ ザ・ランブル
Mid-Park at 73rd-79th st.
❸ ハレット自然保護区
East Side at 60th-62nd st.
❹ ザ・ポンド
East Side between 59th and 63rd
プロスペクト・パーク prospectpark.org
年間通して多種多様な野生生物が250種以上も生息している。子供から大人まで楽しめるガイド付きツアーも定期的に開催。家族揃って観察しよう!
グリーンウッド墓地 green-wood.com
実は知る人ぞ知る観察スポット。同墓地による観察ツアーも開催されている。敷地内での飲食は禁止されているのでピクニックをしたい人はご注意を。
バードウォッチングをする上で気をつけなければならない3カ条
❶野鳥にストレスを与えない
距離を保ち追いかけたりしない。また、音楽をかけたり、大きな音をたてない。野鳥の生活を尊重して観察しよう。
❷自然を守る
植物をむやみに踏まず、散策ルートから外れない。在来種や虫などの生態系と密接に関係し自然が成り立っていることを忘れてはいけない。
❸ 犬同伴の観察はNG
オフリードの犬が鳥の生活領域に近づいたり、攻撃したりすると、野鳥は安全のために巣を放棄する習性がある。そのため、卵と雛たちは放置されてしまい生態に大きな影響を与える。
アプリをダウンロードして野鳥を調べてみよう
Audubon Bird Guide
200万回ダウンロードされている人気アプリ。800種を超える鳥類のサイズや色、鳴き声、飛び姿などを調べることが可能。
iBird Pro Guide to Birds
北米に生息する940種もの野鳥の情報にアクセスすることができる。
Merlin Bird ID
野鳥の鳴き声を録音しアプリを通してどんな種類かをリサーチできる。撮影機能もついた優れものアプリ。
バードウォッチャーに聞いた
この時期に見られる人気の野鳥12選
バードウォッチャーに聞いた 一番楽しいと感じる魅力とは?
ピーターさん: バードウォッチャー歴10年
とある週末の朝、セントラルパークにて
私にとってバードウォッチングは、日常のストレスから解放してくれて、都会の喧騒からも遠ざけさせてくれるんだ。木の上で鳴いてるノドグロ・ミドリ・アメリカムシクイのさえずりに耳を傾け、その姿を見つけようとしている時なんか特に心が洗われるよ。また、都会の小さな自然にも触れられるのは気持ちがいいね。
フレンドリーな野鳥は手に乗せた餌を食べてにきれくれることも
野鳥、自然を守ろう
保護団体とレスキュー団体
バードウォッチングをする上で専門的な知識や技術は特に必要はない。しかし、心得ておくといいエチケットや、知っておくと役立つ知識、最新情報などは定期的にチェックすることをオススメする。野鳥にも自然にも、愛と敬意をもって接しよう。
NYC Audubon nycaudubon.org
オーデュボン・ニューヨークは、市内にいる鳥類の保護や自然保護を行なっている団体。中でも長年に渡り力を入れている「SAFE FLIGHT」プロジェクトは、建物の窓ガラスに衝突して死んでしまう野鳥を減らすべく、地域や建築などに呼びかけている。また、夜のビル群の明かりにより昼間と勘違いをして行動してしまう野鳥の生態系を守るべく企業や市民に注意を勧告している。
他にもボランティア活動を通して公園の清掃や子供たちが学べる教育プログラムやアクティビティなどにも取り組んでいる。
Wild Birds Found wildbirdfund.org
ハトやアヒル、ハヤブサなどを含むさまざまな野鳥をはじめ、リスやカメ、オポッサムなど、小動物を保護し再び野生へ戻すレスキュー団体。怪我を負った野鳥や、親鳥からはぐれたヒナたちに治療とリハビリを行う同施設内には水辺に生息する野鳥のためのプールや、獣医が在中している。他には、セントラルパークでのバードウォッチングガイドを定期的に開催しており、シーズンになると毎週末多くの参加者が集まる。
Wild Bird Fund
565 Columbus Ave.
TEL: 646-306-2862
ドキュメンタリーを観て
野鳥についてもっと知ろう
ザ・セントラルパーク・エフェクト
Birders: The Central Park Effect
【配信】 Tubi、YouTube 他
843エーカーもあるセントラルパークは人工公園であるという事実にもかかわらず、東海岸を行き来する野鳥を引き寄せる。過
酷な旅の途中で野鳥が休息し、エネルギーを補給できる数少ない緑地の1つだ。都会の喧騒と隣り合わせの中で出会える美しい野鳥、それを見に訪れる愛好家たち。バードウォッチングがもっと身近に感じられる作品。
ダンシング・ウィズ・バード 驚きの求愛ダンス
Dancing with the Birds
【配信】 Netflix
美しい羽を大きく広げて動かしたり、完璧な求愛行動でキメてみたり、狙った相手の心をつかむため、楽園の鳥たちは魅惑的な動きを披露する。厳しい自然の中で生き抜く野鳥の知恵や偉大さ、そして時に見せるコミカルな動きやユニークな習性には思わず笑いたくなる。野鳥がもっと好きになり親近感が湧くこと間違いなし。