日本共産党「選挙活動」の舞台裏|松崎いたる  「SNSの活用なくして選挙勝利なし」―党員の平均年齢が70歳以上、スマホをもたない党員に対してもこう檄を飛ばし、党勢拡大のためなら個人情報の利用も厭わない。我が子を児童虐待する女を候補者に据えるなど“やりたい放題”の選挙活動。『日本共産党 暗黒の百年史』の著者で元共産党員の松崎いたる氏による「こんなに変だよ日本共産党」第3弾!

共産党〝最新〟のIT機器はファックス

統一地方選も佳境を迎え、いよいよ後半戦に突入!というところだろうか。

日本共産党はこの選挙に先立ち、同党の選挙戦術を見直し、4年ぶりに『選挙活動の手引き』を改定した。共産党がどんな選挙活動をしているのか、この手引きから見てみようと思う。

ちなみにこの『選挙活動の手引き 2023年版』(以下『手引き』)は《部内資料》という扱いなのだが、党出版局から定価680円(税込み)で販売しており、注文すれば党員でなくても購入することができる。

『手引き』の内容で目立つのは、インターネットやSNSを選挙に活用することを重視していることだ。これは2013年4月の公職選挙法改正で、インターネットを利用した選挙運動が解禁されたことを受けてのことだが、同時に携帯電話の普及に伴い、固定電話の利用者が激減し、電話帳もほぼなくなり、電話番号がわからず、電話で支持を依頼するという従来の選挙戦術が通用しなくなってきたことの反映でもある。

『手引き』は「インターネット・SNSの分野は、激しい党派間闘争の舞台になっている」との見出しを掲げ、「重視する必要があるのは、各党ともインターネット・SNSのとりくみを強めており、激しい党派間闘争の舞台になっていることです。この分野でも他党を凌駕してこそ、新しい支持を広げるとともに、選挙の担い手を増やすことができます」と強調する。

また「インターネット・SNSの活用、若い世代・市民とともにたたかう選挙を」との章を設け、「SNSの活用なくして選挙勝利なし」とまで檄を飛ばす。

しかし共産党は現在、党員の平均年齢が70歳以上ともいわれるほど超高齢化しており、スマホすら持っていないという党員も多数いる。共産党にとっての〝最新〟のIT機器はファックスというのが実態だ。

そうした状況を意識してか、『手引き』は「一人ひとりの党員がインターネット・SNSの活用ができるよう努力しよう」と呼びかけるが、これまでの永い党員生活で、選挙といえば「一にも二にも電話がけ」を貫いてきた後期高齢者党員にとってはかなりの無理難題だ。

「折り入って作戦」とは何か

『手引き』に掲載された「主なSNSの種類と特徴」をみると、たとえばこんな説明がある。

「●LINE(ライン)・国内利用者数 9200万人。・支持拡大や『折り入って作戦』で使うと効果的。・日本で利用者数が最も多く、全世代が利用し、現在では、文章の送受信だけでなく、音声通話やビデオ通話も可能。多くの人が連絡・コミュニケーションの手段として活用。家族や職場、学校のクラス、地元、趣味仲間との連絡など、つながっている人の結びつきが強い」。

「折り入って作戦」とは共産党独自の用語で、党員がつながりのある人物に対して「じつは折り入ってお願いがあるのですが……」と話を切りだし、共産党への支持をお願いする行動のことだ。

共産党員には、自分が党員であることを、親しい友人・知人にも告げていない者も多い。これまでの選挙では、自分の名前を名乗らず「共産党〇〇事務所ですが……」と電話をかけることが多かった。しかし、匿名では昔も今も票には結びつきにくかった。そこで個人同士のつながりを効果的に支持拡大に生かせるようにしたのが「折り入って作戦」である。しかし同時にそれは、党員たちに「自分の正体を世間にさらせ」という党中央の上からの命令でもある。共産党員であることを告白したことをきっかけに友人が遠のいていくことも覚悟しなければならない。

党外の一般の人から見てもビックリするようなことが起きるかもしれない。自分のLINE友だちの中に、共産党員がいた場合、ある日突然「折り入ってお願いがあります」などと共産党への支持依頼のメッセージが送られてくることになるからだ。電話での支持依頼ならガチャンと電話を切れば済む話だが、付き合いのある者からのLINEでは既読スルーもしづらいだろう。

個人情報を党勢拡大に流用

LINEかどうかは不明だが、共産党員が個人情報を党勢拡大に流用していたことが問題になっている。

昨年10月21日、ローカル紙「神奈川新聞」が「横浜の集会参加者4人の個人情報 共産党関係者が不正流用」と報じている。

記事によると「横浜市内の小学校の統廃合を考える集会に参加した保護者や地域住民の個人情報を、共産党の関係者が不正流用していた」という。

会場で新型コロナウイルス感染者が出た場合に連絡が取れるよう、参加者全員に氏名、電話番号、住所を記載してもらっていたが、その4人の個人情報を、集会の主催者メンバーでもある共産党員が書き写し、別の党員がこのメモを元に4人の自宅を訪問、集会の記事を掲載した党機関紙「しんぶん赤旗」を手渡した。これも「折り入って作戦」なのである。

主催団体は当該党員を退会させた上、個人情報保護法に抵触する可能性があるとして関係者に謝罪している。

集会に参加し、訪問を受けた男性は「(不正流用され)保護者の間で『怖い』という声が上がっており、今後会合から足が遠のくことを心配している。党のコンプライアンスの問題で調査と再発防止策を求めたい」と話している。

この不正についての日本共産党神奈川県委員会からのコメントは発表されていないが、『手引き』には「『個人情報』の取り扱いについての注意」という記載がある。そこでは「政党は、報道機関や学術研究、宗教活動などともに『個人情報保護法』の適用除外となってはいます」と前置きされた上で、「(個人情報の)取り扱いや管理には十分注意を払う必要があります。署名運動などで得た『名簿』を本人の了承を得ないで選挙活動に使用したり、第三者に提供することなどがないようにしなければなりません」という。

だが政党のすることは「違法ではない」と前置きされた注意ではどれだけ効き目があるだろうか? 横浜の事例は、手に入れた名簿はなんでも選挙や党勢拡大に使えという「折り入って作戦」の本質を示している。

児童虐待の女を候補者に

インターネットや「折り入って作戦」の他に、『手引き』で目を引いたのは候補者選定についてだ。
「いちはやく候補者を決定する」との見出しの項では「候補者の選考は、党機関と支部がよく相談してすすめることが大事です」と一般的な普通のことも書かれているが、その直後に次のことが書かれている。

「とくに社会的道義と市民道徳、品性などを重視し、党の候補者・議員としてふさわしいか、集団的に検討することが重要です」

「最近一部で、(略)品性や生活状況をよく知らないまま候補者にし、当選後に支部や党機関、議員団との団結上の問題が生じ離党に至る例や、私生活上の深刻な問題が発覚し議員辞職、除籍になった例も生まれています」 。

こうした警告は以前の『手引き』はなかった。近年、共産党の現職地方議員や元議員候補者によるわいせつ事件やパワハラ問題が多発していることの反映だろう。

しかし、それでも〝身体検査〟をすり抜ける者が出てくるのは防ぎようがない。

今回の統一地方選挙でも、同僚議員へのパワハラが原因で党公認を取り消された現職市議もいる。

『手引き』で「ふさわしくない」とされるような人物が公認を取り消されることなくそのまま立候補するケースもある。東京・杉並区では、過去の自転車窃盗や、小学生の息子に自身の女性器を見せて感想を言わせるなど行為をツイッターに投稿していた女性が共産党公認の区議会議員候補になっている。自分の子どもであっても性器を見せつける行為は強制わいせつであり、また児童虐待でもある。この候補者についてはすでに物議をかもしているのだが、仮に当選してしまえば、さらに炎上することは必至だ。

ネット活用にしても候補者選定にしても、共産党の『選挙活動の手引き』には、いまの共産党にはできないことばかりが書かれている。これでどんな選挙結果になるのか、志位和夫委員長の責任の取り方とともに注目していきたい。

松崎いたる

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