高市早苗大臣が「ウソ疑惑」で4度も刑事告発されていた パー券不正問題で 「高市氏の弁明は虚偽の可能性」と専門家 領収証写真掲載

パー券不正を問われて1月13日に記者会見する高市早苗大臣。この時の弁明が嘘である可能性が指摘されている。政府インターネットテレビより。

総務省から流出した文書を「捏造」だと国会で答弁している高市早苗経済安全保障担当大臣に、今度は自身のウソ疑惑が発生している。会計責任者らが2021年開催のパーティ券に関して奈良地検に2度刑事告発されていたのだ。高市大臣らは2019年開催分のパーティでも、不記載と虚偽記載ですでに2度刑事告発されており、これで計4度目の告発となる。
フリージャーナリスト・鈴木祐太

◆1回で3000人超分のパーティ収入 コロナ最中にどうやって集めた?

22万円分のパー券購入領収証。収支報告書に記載していなかった。しんぶん赤旗日曜版より提供。

告発状によると、高市大臣が代表を務める「自由民主党奈良県第二選挙区支部」(以下、第二支部)は、2021年7月24日にホテル日航奈良で「Fight On!! Sanae 2021アフタヌーン・セミナー」を開催した。その際の収入は6325万円だった。一方、支出は約220万円だった。

ホテル日航奈良の大宴会場はセミナー方式の机が全て正面に向いている場合だと700人収容できる。セミナーの参加者のブログによると、『入りきらない人は「サテライト部屋」にいた』とある。仮にそのサテライト部屋が2番目に大きい中宴会場だったとしたら、最大120人収容でき、大宴会場と合わせて820が人収容できる。

このセミナーの参加者がSNSに投稿した案内状をみると、パーティ券代は2万円。収入の6325万円を満たすには単純計算すると、3162.5人の参加が必要である。

820人が2万円を払ったとしても1700万円にも届かない。6つある全ての小会議室にもサテライト部屋を用意していたとしても最大で120人。大中宴会場と合わせて最大940人が参加したとしても収入は2000万円にも届かない。

つまり、収入のうち4000万円以上分は、パーティ券は購入したけれども、セミナーには参加していない可能性があるのだ。これは最大収容人数で計算した場合だが、当時はコロナ禍の最中。座席の距離を取っていたとしたら参加人数はもっと少なかった可能性が高い。

政治資金規正法(以下、規正法)では、参加をしていない人の分はパーティ収入ではなく、寄附として処理しなければならない。そのため、高市大臣らは、政治資金収支報告書(以下、収支報告書)において寄付を正確に記載していない不記載に当たる可能性があると、告発状では指摘されている。

22万円分のパー券購入領収証。収支報告書に記載していなかった。しんぶん赤旗日曜版より提供。

◆パー券収入を不記載

疑惑はそれだけではない。このセミナーのパーティ券22万円分を「自由民主党山添村支部」(以下、山添村支部)が購入していたことが収支報告書に記載されていた。しかし、第二支部の収支報告書には記載されていなかった。

規正法では、1個人や1団体から20万円を超えるパーティ券収入があった場合は収支報告書にその明細を記載することが義務付けられている。そのため、第二支部が22万円のパーティ券収入を記載しなかったのは違法の可能性が高いと告発状では指摘している。

◆最初から隠すつもりだったのでは…

しんぶん赤旗の報道を受け、あわてて領収証を12万円に訂正した。20万円以下なら収支報告書に記載しなくてよいからだと思われる。しんぶん赤旗日曜版より提供。

刑事告発した神戸学院大学の上脇博之教授は次のように指摘する。

「規正法は20万円を超えるパーティ券購入者の明細を収支報告書に記載するよう義務づけているので、政治資金パーティの主催者は20万円を超える購入者には細心の注意を払うので、22万円の購入者を見過ごすはずがありません。

山添村支部は2019年にも22万円分のパーティ券を購入しているのに、第二支部はその明細を記載していませんでしたから、単純なミスで記載しなかったのではなく、山添村支部の購入分は初めから記載しない方針だったのではないかとさえ思えてなりません。ですから収支報告書ネット公表後の昨年12月に告発しました」

しんぶん赤旗の報道を受け、あわてて領収証を12万円に訂正した。20万円以下なら収支報告書に記載しなくてよいからだと思われる。しんぶん赤旗日曜版より提供。

◆高市大臣の弁明はウソの可能性

疑惑はそれだけに留まらない。告発状はもう一通存在していた。第二支部の代表である高市大臣とその会計責任者らが告発されている1月の告発状だ。

上記した通り、山添村支部はパーティ券を22万円分購入していたにもかかわらず、第二支部は記載していなかった。このことが「しんぶん赤旗日曜版」(以下、「赤旗」)で報道されると、山添村支部は、実際のパーティ券の購入は12万円で、残りの10万円は渉外費だったと昨年12月に収支報告書の修正を行ったのだ。要するに、パーティ券収入は20万円以下だったため第二支部は山添村支部からのパーティ券収入を記載しなかった、というわけだ。

高市大臣は今年1月13日の記者会見で次のように弁明している。

「22万円渡されたので、山添村支部宛に領収書を切った。すぐ電話がかかってきて、『支部で購入した分は12万円』と、あとは各個人が購入されているので、各個人宛てに領収書を送ってほしいということで再発送した」

このように「経緯」を説明した上で、

「お金の出入りがあった時期と、それからこの収支報告を作成する時期が違いますので、その全然違う人がやっているということで、先に発行して廃棄してくれといった22万円の方の領収書を使って山添村支部は収支報告書をつくってしまった」

つまり、山添村支部の事情で収支報告書が間違っていたと主張したのだ。

ところが「赤旗」の事前取材によると、山添村支部は「11枚を購入し11人が出席した」と回答している。明らかな矛盾だ。山添村支部の21年の支出は約58万円しかなく、その35%を越える出費を間違えることがあるのだろうか。

山添村支部が修正したことについても、上脇教授は次のように指摘した。

「高市大臣の弁明通り、山添村支部の購入額が12万円だったら、収支報告書に22万円と記載すると、収支が10万円合わなくなります。当時12万円の領収書を再発行していたら、22万円の領収書を廃棄していたでしょうから、収支報告書に22万円と記載するはずがないし、22万円の領収書の写しを選管に提出するはずがありません。嘘の弁明でしょう。ですから、訂正が虚偽だったとして、高市大臣の記者会見後に追加告発したのです」

◆自民党のパー券疑惑は底なし

山添村支部が購入した第二支部のパーティ券収入疑惑は、2019年のパーティ券でも同じような修正をしており告発状が出されている。

パーティ券収入の不記載問題は、自民党の主要派閥のパーティでも続発しており、高市大臣だけでなく、自民党で広く蔓延している問題である。

■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。

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