<北朝鮮内部>困窮都市住民による犯罪増加 農村で強盗、空き巣、家畜盗頻発 警察は非常警戒

(参考写真) 自転車の荷台に豚を乗せて運んでいる。豚などの家畜は売って現金作る貴重な財産。足を紐で縛っているのは生きているからか。2010年6月に平安南道で撮影キム・ドンチョル(アジアプレス)

経済麻痺によって北朝鮮の都市部では脆弱層に栄養失調や病気で死亡する人が出ている。困窮する人に対する十分な支援、救護もない中、各地で窃盗や強盗などの犯罪が増加し安全局(警察)が非常警戒に入っているという。北部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)の状況を報告する。(カン・ジウォン

◆困窮した都市住民が農村を襲う

茂山(ムサン)郡に住む取材協力者が2月末に伝えてきたところによると、豆満江沿いの農村である南村(ナムチョン)で、真昼に夫婦が自宅で縛られているのが発見されたという。

「男2人が水を飲ませてくれと訪ねてきて、ナイフで脅して家にあった食糧と金目のものをすべて奪って行ったそうだ。商売人を装って農村を回って留守にしている家を探り、家畜や食糧、金目のものを盗んでいく事件が頻発するようになり、安全当局では集中取り締まりをしている。協同農場の家畜や精米所を狙う泥棒が多く、パトロールを2時間ごとにするようになった」

茂山郡では、男が農村に来て商売をするのを無条件に禁じ、発覚した場合は荷物検査をした上で村から立ち去らせている。また外部から来る者は、仮に親戚であっても、立ち寄り先と宿泊先を必ず登録しなければならないという。

◆街中からニワトリと犬の姿が消えた

会寧(フェリョン)市でも犯罪が増えている。3月に入って会寧市に住む協力者が次のように伝えてきた。

「毎朝、昨日はどこかで盗みがあったという話が出る。五鳳里(オボンリ)の農場では、除隊軍人含む男3人が牛を盗んで食べたのが発覚して捕まり監獄に送られた。元山里(ウォンサンリ)では、3月2日に協同農場の精米所の倉庫が襲撃され、わずか20分の間にコメ200キロ以上が盗まれる事件があった。警察は犯人を捕まえるために疑わしい者を片端から調べ家宅捜査までして騒ぎになった」

この協力者によれば、会寧市の街中ではニワトリや犬の姿が見えなくなったという。

「今は誰もが暮らしが大変厳しい状況だ。隙があれば捕まえて食べようとするので、飼い主たちは家畜を家の外に出さなくなった。困窮した人の中には、盗める物は手当たり次第に何でも盗もうとする者がいる。そこまでしないと食べていけないからだ」

新型コロナウイルス・パンデミックが始まった2020年1月以降、金正恩政権は中国との国境を封鎖して貿易を強く制限。住民の移動や商行為も厳しく統制したため、都市住民は現金収入が激減して困窮する人が一気に増えた。この人たちが飢えているのである。

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。

北朝鮮地図 製作アジアプレス

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