「DOWN TOWN」「う、ふ、ふ、ふ、」EPO 沖縄移住12年、音楽と人生を自由に楽しむ

ミュージシャンのEPO(エポ、62)が拠点を沖縄に移し、今年で12年目を迎える。1980年に伝説のバラエティー番組「おれたちひょうきん族」のテーマ曲だった「DOWN TOWN」でデビューし、「土曜の夜はパラダイス」、「う、ふ、ふ、ふ、」などのヒット曲を世に送り出した。出身は東京ながら、沖縄を終の棲家とするつもりだという。自身の音楽との波長、友人や住人と気が合い、言いようのない心地良さを感じている。

南風が頬を優しくなでる。沖縄本島の中南部。自宅兼スタジオの敷地に耕した小さな畑。「生まれて初めての土いじり。収穫した野菜でお料理をするのが楽しい。こちらではアポなしで、食材を手に訪れるお客さんも珍しくない。それも楽しい。時間がゆっくり流れて、仕事は多くて忙しいんですけど、オンとオフの切り替えができています」。トマト、ゴーヤ、かぶ、大根などを食材に、家族や突然の来客と一緒にテーブルを囲う。コロナ禍でのセルフロックダウン中に購入したテントサウナで気分転換。夏の訪れを告げるアカショウビンのさえずりは、特にお気に入りだ。「鳴き声だけで、実際に姿を見たことはないんですけれど」と笑った。

EPOの自宅の畑

移住のきっかけは2011年の東日本大震災だった。原発事故に起因する放射能の危険性が連日ニュースに取り上げられ、両親を沖縄に避難させた。そして翌年、夫と一緒に移住した。「もともとラジオや新聞などの仕事で、度々沖縄には行っていましたし、なにより沖縄が大好きでしたから」。初めて沖縄に足を運んだのは二十歳の時。デビューから間もない頃、山下達郎のバックコーラスを務めたツアーメンバーと旅行で訪れた。「説明できないくらいに居心地が良くて、自分でも不思議すぎて翌月、確かめるためひとりで来ました。印象は変わらなかったですね」。以降も度々沖縄を訪れ続けた。現地での仕事、仲間が増えていった。

1980年代に〝RCA三人娘〟として大貫妙子、竹内まりやと並び称された。シティ・ポップをけん引する代表的な女性シンガーソングライターのひとりだった。87年には英国ロンドンに渡り、現地のメジャーレーベルと契約し、数字を追った。「日本では私らしく表現することをあまり良しとされない雰囲気がありました。ロンドンではあなたの個性は何?と常に問われ続けて、私らしい音楽を広く届けないとならない。必死でしたね」と振り返った。

91年に帰国。東京で音楽活動を続ける中、94年にEPOとして中南米ツアーに参加したことが転機になった。「路上からパーカッション、歌声が聴こえてきました。音楽が自由だったんです。誰かに管理されるのではなく、こういう風に、私は音楽と一緒に生きていきたい」と決意した。ロンドンからの帰国後から、ジャズ、現代音楽などへ幅を広げてきたが、このツアーをきっかけに、さらに音楽に対する自由度が増した。先に移住していたミュージシャン仲間に誘われ、沖縄で路上ライブを開くなど、沖縄との関わりも増えていった。

移住から12年目。コロナ禍でライブ活動が制限される中、新たな取り組みを始めた。仲間たちと近所のスタジオに集まり、セッションを楽しむ。「私たちは『ブカツ』と呼んでいます。学生時代の『部活』と同じ意味ですね。皆で好きな音楽を好きに楽しみます」。コロナ禍が落ち着いてからは、20人ほどで満員になる小さな店で、ブカツ仲間とライブを行う。「ジャンルもバラバラ。当日まで誰が来て、どんな音楽になるかも分からないのが楽しい。ベースが二人いて一緒に演奏することもありますよ」と笑った。

EPOの自宅に構えたスタジオ
沖縄の美しい海もEPOのお気に入り

ジャズ、ポップス、ワールドミュージック、ヒーリングなど拡張を続けてきたEPOの音楽。一方、世に出るきっかけとなった、原点ともいえるシティ・ポップも忘れてはいない。「海外からレコードの問い合わせが来ることもあります。昔の作品を好きでいてくれるのは、とてもうれしいですね。今度、ゴリゴリのシティ・ポップの新作を作りたいと思っているんです。昔の紅白歌合戦のように、誰もが知っていて誰もが好きになる王道みたいな曲。そんな曲を考えています。『う、ふ、ふ、ふ、』のセルフカバーも進めていて、すごくカッコイイですよ」と、今春のマクドナルドCMにも使用された名曲の名を挙げて、声を弾ませた。

周囲に気を使う必要はない。自らの個性の一部を抽出し、削り磨く必要もない。「EPOを一つだけのイメージで捉えていません。やりたいこと、チャレンジしたいことがたくさんあって、その度に新しい出会いがありました」と振り返る10年程前、自身の遺伝子型がハプログループM7aという、日本人では珍しいが、その中では沖縄に多い型であることが分かり、沖縄好きの一因を自覚した。幸せそうに「今は好きな人と、好きな音楽を、好きなペースで、普通の暮らしを送りながら楽しんで生活しています」と語った。

5月10日はビルボードライブ大阪で夕夜2回公演、誕生日である同12日はビルボードライブ横浜で夕夜2回公演を行う。自身初のバースデーライブ「GO GO EPO 2023 Birthday」。EPOは「私の大好きな音楽で、みんなにもっと楽しんでもらいたい。今が楽しくて仕方ありませんね」と、朗らかに笑った。

◆「GO GO EPO 2023 Birthday」5月10日、ビルボードライブ大阪(1日2回公演)、1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30

大阪公演の予約等詳細は次のURLへ

http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=14059&shop=2

5月12日、ビルボードライブ横浜(1日2回公演)1stステージ 開場16:30 開演17:30 / 2ndステージ 開場19:30 開演20:30

横浜公演の予約等詳細は次のURLまで

http://www.billboard-live.com/pg/shop/show/index.php?mode=detail1&event=14060&shop=4

<出演>EPO、センチメンタル・シティ・ロマンス(細井豊、瀬川信二、種田博之、野口明彦)、佐野聡、佐橋佳幸

ステージに立つEPO

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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