倉敷観光の大きな魅力のひとつである、白壁の建物。
倉敷の家や蔵の美しさと日本庭園を堪能できるのが、「語らい座 大原本邸(旧大原家住宅)」です。
国指定重要文化財の建物や土地に、倉敷らしい美しさがギュッと凝縮されています。
外観はもちろん邸内どこでも撮影OKで、写真好きにはたまらない場所なんです!
ざっくり見るならば30分ほどで周れるので、観光時間が限られていても安心。
2018年4月に一般公開された、語らい座 大原本邸を紹介します。
語らい座 大原本邸(旧大原家住宅)とは
「語らい座 大原本邸」は、倉敷町家の文化施設です。
倉敷を代表する町家として、国の重要文化財に指定されている「旧大原家住宅」。
倉敷の発展に貢献した「大原家」の人々が、江戸時代後期の1795年(寛政7年)からつい最近まで住んでいました。
住宅であることから邸内非公開となっていましたが、2018年4月1日より展示交流施設「語らい座 大原本邸」として一般公開されています。
「語らい座 大原本邸」の見どころ
語らい座 大原本邸の見どころを紹介します。
江戸時代後期に建てられた、美しい建物
「語らい座 大原本邸」の建物である旧大原家住宅は、倉敷の町家の代表的な形式。
660坪の敷地内に、主屋・蔵・離れ座敷などが並び、10棟が国の重要文化財に指定されました。
江戸時代後期に建てられた主屋は、「倉敷窓」「倉敷格子」と呼ばれる倉敷だけで見られる工夫が施されています。
蔵は、下部に瓦を張りつけて目地を白漆喰で盛りあげる「なまこ壁」と呼ばれる壁。
「倉敷」と聞いて思い浮かぶ、「倉敷らしい」建築を見ることができます。
離れ座敷と緑あふれる庭
離れ座敷からは、庭が一望できます。
とっても美しくて素敵な空間!
美観地区の一等地にありながらも静かで、時の流れを忘れそう。自由に座ってくつろぐことができるのも、うれしいところです。
この離れ座敷では、800円(税込)でお抹茶とお菓子のセットをいただけます。ブックカフェでチケットを買いましょう。
もみじの木がたくさんあるので、紅葉の季節は真っ赤に染まるそうですよ。
なお、大原家の本邸(語らい座 大原本邸)の向かいに建てられたことから、建築当時は「向屋敷(むかいやしき)」と呼ばれていた「新渓園」も、素敵な庭園が堪能できます。
大原家について楽しく知るインスタレーション
大原家は、倉敷に計り知れない影響を与えた一族です。
そんな大原家について楽しく知ることができるのが、土間のインスタレーション。
インスタレーションとは、空間ごと作品として体験するアートのことです。
文章や写真がただ並んでいるだけではありません。
インスタレーションのひとつ、「ふりそそぐ言葉」では、大原家歴代当主の言葉が天井から降ってくるように吊り下げられています。
例えば、「十人のうち七人も八人も賛成するようなら、もうやらない方がいい」という言葉。
先見の明があった実業家の言葉に、重みを感じました。
ほかにも、心を打つ言葉が見つかるかもしれません。壁にも言葉が投影されているので、合わせて見てくださいね。
落ち着いたブックカフェ
ブックカフェは、大原家八代目当主・大原總一郎(そういちろう)の蔵書の一部が飾られています。
哲学・経営・美術・鳥の本などがずらりと並んでいて、カフェに置いていない蔵書も多くあるそうなので、勉強熱心なかただったに違いありません。
貴重な本が多いため手に取ることはできませんが、背表紙を眺めるだけで楽しめました。
ブックカフェでは、オリジナルブレンドのホットコーヒーをいただけます。
コーヒーカップは倉敷市酒津で作られたもの。
水が入っているグラスは、倉敷産の「い草」を燃やし灰にしガラスに溶かし込ませて色を出した「IGUSA GLASS」。
どちらも倉敷在住の作家さんが作られています。
コースターは、綿100%の原糸を撚り合わせて生み出す一級帆布(はんぷ)である「倉敷帆布」です。
倉敷のものづくりを感じられます。
倉敷の魅力が詰まった「語らい座 大原本邸」
大原家のことを知れば知るほど、倉敷の文化や産業を大きく発展させてくれた人たちであることがわかりました。
倉敷の魅力が詰まった、「語らい座 大原本邸」。美しい建築と庭を眺めて、倉敷の歴史に思いを馳せてみませんか。
記事の後半では副館長「藤谷知洋さん」に、「語らい座 大原本邸」の成り立ち、展示品の見所などの話をききました。
副館長・藤谷知洋さんにインタビュー
副館長を務める藤谷知洋さんに、「語らい座 大原本邸」の成り立ちや魅力、展示品について教えていただきました。
インタビューは2018年11月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
──これまでほとんど公開していなかった旧大原家住宅を、「語らい座 大原本邸」として公開することになった理由を教えてください
藤谷────
「倉敷と大原家について知っていただきたい」という思いからです。
例えば中国銀行の初代頭取が大原孫三郎(まごさぶろう)であることを、倉敷の方もあまり知りません。
しかし、単純に紹介するだけの記念館ではなく、「知の殿堂」と言えるような場にしていきたいと、大原家九代目当主の大原謙一郎(けんいちろう)は考えてきました。
学びのある施設にするため、教師向けのセミナー「くらしき未来K塾」も開催しています。
当館の館長は、高校校長を経て岡山大学教育学部の特任教授を務めていて、地域の課題解決にまつわる教育を実践してきた方です。
観光スポットとしてだけではなく、文化・教育の場としての役割も担っています。
──観光する人にとっての、語らい座 大原本邸の魅力はなんですか?
藤谷────
倉敷の街の雰囲気が凝縮しているところです。作り替えていない、本物の倉敷の白壁や蔵が残っていますから。
訪れたお客様の中には「もう外を歩かなくても、大原本邸だけでいいなあ」と言われる方もいるくらい、倉敷らしさを堪能できますよ。
ざっと見るならば所要時間は30分ほどなので、急いでいる方でもお立ち寄りいただけます。ゆっくりできる方には、お座敷での抹茶が人気です。
どこを切り取っても絵になりますし、撮影NGの場所はありません。きっと面白い写真が撮れるでしょう。
大原家にまつわる展示品
藤谷さんに話を聞いた大原家所蔵品の中から、気になった展示品を一部紹介します。
大原家七代目当主・大原孫三郎が立ち上げたり深く関わったりした事業を表したレリーフ
藤谷────
建築家の浦辺鎮太郎(うらべ しずたろう)が制作した、孫三郎の業績を表現したレリーフです。右から次のように並んでいます。
- 岡山孤児院
- 倉敷日曜講演
- 倉敷紡績(現在のクラボウ)
- 大原農業研究所
- 大原社会問題研究所
- 労働科学研究所
- 倉敷中央病院
- 民藝(みんげい)運動
- 倉敷絹織(けんしょく/現在のクラレ)
- 大原美術館
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藤谷──
右の茶碗に、「大林義雄(よしお)」と書いてあるのが見えますか?
茶会に参加した人々が記念に署名したものなんです。下記の方々の名前が見られます。
- 大手総合建設会社・大林組の二代目社長である大林義雄氏
- 裏千家の業躰(ぎょうてい=家元直属の指導者)である金澤宗推(そうすい)氏
- 人物の特定は難しい「たね」さんや「とみ」さん
オーディオ評論家・高城重躬(たかじょう しげみ)が特注で作ったオーディオ
藤谷──
高城重躬が大原總一郎の注文によりつくったものです。現在修理中で、もうすぐここで聴けるようになりますよ。
副館長・藤谷知洋さんよりメッセージ
──最後に、語らい座 大原本邸を訪れる方に、メッセージをいただけますか。
藤谷──
建物や庭はとても見応えがあります。また大原家について知ることで、倉敷のことがもっとよくわかるのではないでしょうか。
ぜひ気軽に来館ください。きっと楽しめると思います。