ジュゴンの生存に安堵広がる 環境団体、市民ら新基地工事の中止求める 大浦湾で食み跡やふん

 沖縄県のジュゴン生息状況調査で、過去最多の食(は)み跡や新たなふんが確認されたことを受け、環境団体や市民には安堵(あんど)が広がった。同時に、ジュゴンの元来の生息地とされる大浦湾で進められている辺野古の新基地建設に対して、改めて工事中止を求める声も上がった。

 北限のジュゴンを見守る会の鈴木雅子代表は、昨年秋にも名護湾で目撃情報があったと明かす。ふんの確認で「生存がはっきりしている。県に希少種を守るという強い意思があるなら、予算も割いて保全に力を入れるべきだ」と強調。その上で「国に対して何らかのアクションを起こしてほしい」と語った。

 ジュゴン保護キャンペーンセンターの吉川秀樹さんは「県の調査の積み重ねによるものだ」と評価する。かつてはジュゴンの目視や食み跡が確認されるのは新基地建設現場の北側だったが、今回ふんが見つかったのは南側であることに着目する。「音に敏感なジュゴンが工事の水中音の影響もあって、移動したのでは」と推察し、「県は国に対して調査結果を前面に押し出し、大浦湾をどう守っていくか考えてほしい」と話した。

 米軍キャンプ・シュワブ前で新基地建設工事の抗議行動に参加する名護市の浦島悦子さん(75)は「工事が進み、藻場などが奪われている中で、頑張って生きてくれている」と胸をなでおろす。人間の活動によって絶滅の危機にひんするザン(ジュゴン)を描いた絵本「ジュゴンの帰る海」を出版している浦島さんは「生きてる証しが見つかり勇気づけられた。工事を止めるために頑張らないといけない」と気を引き締めた。

 (新垣若菜、慶田城七瀬、長嶺晃太朗)

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