2022年度の「新型コロナウイルス」関連破たん 前年度から4割増の2,757件

~ 2022年度 全国「新型コロナウイルス」関連破たん状況 ~

 2022年度(4-3月)の「新型コロナ」関連の経営破たん(負債1,000万円未満を含む)は2,757件に達し、前年度(1,938件)から1.4倍増(42.2%増)に急増した。
 2020年2月25日、「コロナ関連破たん」第1号の判明から2023年3月31日まで、全国で累計5,951件が判明した。アフターコロナの時期に差し掛かってもコロナ破たんは増勢を強め、収束が見通せない。2023年度は物価高や人手不足などコストアップも重なり、複合型のコロナ破たんを中心に、さらに増加する可能性が高い。

 2022年度のコロナ破たんは、最多が東京都の530件。次いで、大阪府276件、愛知県154件、福岡県138件、北海道と神奈川県が各117件と、大都市圏を中心に発生している。
 一方、2021年度との比較では、増加率トップは鹿児島県で、前年度の約4倍増の287.5%増。次いで、長崎県の208.3%増、大分県の188.8%増と、九州3県が上位に並んだ。
 国内の企業数(358万9,333社、2016年総務省「経済センサス」)を基にした比率では、これまで累計のコロナ破たん率は0.165%で、1,000社に1社が破たんした計算になる。都道府県別で最も比率が高いのは東京都の0.291%で0.3%に迫り、最低は宮崎県の0.068%と、地域格差がみられる。
 2022年度の業種別は、休業要請や外出自粛による来店客数の減少が響いた飲食業が最多の425件だった。ただ、まん延防止等措置の解除などで、増加率は31.1%増と全体の増加率を下回り、発生ペースは鈍化した。一方、介護事業を含む医療,福祉事業は93.9%増と倍増した。介護事業は、感染を恐れて利用控えが続いたほか、燃料や食材などの物価高によるコスト増も響いた。
 倒産抑制に効果を発揮したコロナ関連融資などの支援策が徐々に縮小し、融資の返済が本格化している。これに歩調を合わせるようにコロナ破たんは3月まで4カ月連続で月間最多を更新した。特に、2023年3月は初めて月間300件を超えて338件に達し、増勢が鮮明になっている。

  • ※原則として、「新型コロナ」関連の経営破たんは、担当弁護士、当事者から要因の言質が取れたものなどを対象に集計。
  • ※東京商工リサーチの取材で、経営破たんが判明した日を基準に集計、分析した。
コロナ破たん

【都道府県別】~累計100件以上が16都道府県 前年度比増加率トップは鹿児島県~

 これまでの都道府県別の累計は、東京都が1,217件で全体の2割強(構成比20.4%)を占め、突出している。以下、大阪府597件、福岡県298件、神奈川県262件と続く。100件超えは16都道府県に広がっている。
 都道府県別に2021年度(前年度)との比較をみると、最も増加したのが鹿児島県の287.5%増(8→31件)と約4倍に大幅に増えた。次いで、長崎県の208.3%増(12→37件)、大分県の188.8%増(9→26件)と、九州3県の増加が目立った。
 一方、前年度から減少したのは6県だった。減少率トップは香川県の29.6%減(27→19件)、次いで徳島県の23.0%減、山形県と奈良県の各10.0%減、富山県6.6%減、愛媛県6.2%減と続く。

コロナ破たん

【業種別】~ 一次産業と運輸業が急増、業種別では医療,福祉事業が倍増~

 2022年度の産業別では、最多がサービス業他の1,087件(前年度比39.7%増)。前年度比較では、農・林・漁・鉱業が222.2%増(9→29件)と前年度から3倍超に急増。外食産業の低迷による需要減や飼料高騰などが響いた。また、燃料高騰や人手不足など厳しい環境が続く運輸業も49.4%増(87→130件)と増加した。
 さらに細分化した業種別では、飲食業が425件にのぼり、最多だった。ただ、増加率では前年度比31.1%増と全体(42.2%増)を下回り、増勢は弱まった。一方、増加が目立つのは介護事業を含む医療,福祉事業が93.9%増で、利用控えや物価高などコスト面の負担が重かった。また、飲食業の不振から飲食料品製造販売が52.4%増で、販売不振に加えて価格転嫁の遅れなどから事業継続が難しくなるケースが目立っている。 

コロナ破たん

【負債額別】

 2022年度で負債額が判明した2,722件の負債額別では、1千万円以上5千万円未満が最多の1,020件(構成比37.4%)、次いで1億円以上5億円未満が800件(同29.3%)、5千万円以上1億円未満が532件(同19.5%)、1千万円未満が136件(同4.9%)、5億円以上10億円未満が118件(同4.3%)、10億円以上が116件(同4.2%)と続く。
 負債1億円未満が1,688件(同62.0%)と6割を占める。一方、負債10億円以上も前年度から39.7%増(83→116件)と増え、小・零細企業中心に中堅や大企業にまで広がっている。

【形態別】

 2022年度の「新型コロナ」関連破たんのうち、倒産した2,613件の形態別では、破産が2,405件(構成比92.0%)で最多。次いで取引停止処分が70件(同2.67%)、特別清算が68件(同2.60%)、民事再生法が65件(同2.4%)、会社更生法が3件、内整理が2件だった。
 前年度との比較では、破産が40.0%増(1,717→2,405件)と、大幅に増加した一方で、民事再生法は1.5%増(64→65件)とほぼ同数だった。「新型コロナ」関連倒産の9割を消滅型の破産が占め、再建型の会社更生法と民事再生法の合計は3%に満たない。
 業績不振が続いていたところに新型コロナのダメージがとどめを刺すかたちで脱落するケースが大半。
 先行きの見通しが立たず、再建型の選択が難しい状況が浮き彫りとなっている。

 コロナ関連破たんが底上げするかたちで全国の倒産件数は2月までで11カ月連続で前年同月を上回り、増勢が強まってきた。
 「新型コロナウイルス」は5月8日に「5類」に移行され、これまで以上に経済活動が活発化することが予想される。しかし、過剰債務に陥り、経営体力が低下した企業にとって、運転資金の調達は容易ではなく、資金繰り破たんや脱落型による更なる倒産増加が現実味を帯びている。
 3月末に破産した企業の管財人は、当該企業について「コロナがあったからこそ、逆にここまで生き延びることができた」と語った。また、ある金融機関では「コロナ禍前から経営不振に陥っていた企業のうち、事業再構築が難しい企業への追加支援は難しい」とした。有事から平時へと移行するなかで、これまで抑制されてきた倒産が反動増に転じている。
 また、影響の少なかった業種やエリアでもコロナ破たんが広がり始めている。2023年度のコロナ関連破たんは、業績回復の波に乗れず疲弊した企業の脱落を中心に年間3,000件超えの可能性も出てきた。

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