なべやかん遺産|「昭和のプロップ遺産」 芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「昭和のプロップ遺産」!

たまに考える「終活」

映画やドラマを観ていたり、人と話している時に話題にあがったり、Twitterなどで色んな人がつぶやいている物が自分の家にあったりすると、ちょっと自慢したくなったりする。コレクターならその気持ちがわかるのでは?

でも、話題に出たり、注目されているのに「実はそれを持っているのだよね」と言っても、リアクションは薄い事がわりと多いのが寂しい。そんな時、コレクションってやっぱり自己満足の世界なのだなーと感じてしまう。

例えば、撮影用プロップを展示するイベントがあるとしよう。

昭和・平成・令和と続いている人気キャラクター唯一の昭和プロップを持っていたりしても、展示でその他大勢みたいな扱いをされたり、主催者が重要性を感じていなかったり、イベントを観に来る人も「うわー、凄い!!!なんで残っているの!!!!」といった理想的なリアクションをしてくれなかったりする。

こういったリアクションばかり感じていると、自分の考え方も変わっていく。

たまに終活に関して聞かれる事があるのだが、現在は少し考えてしまったりする。どんな事を考えるかというと、リアクションが薄かった物を「海外のオークションに出して売って欲しい」または「ゴミとして捨ててくれ」と遺言に書くという事だ。

昭和の物を大事に思わない報いを受けよ!!そんな呪詛を唱えてしまう。きっと今のままでは意固地な頑固爺になるような気がする。

現存する唯一のプロップ

というわけで、今回は昭和のプロップを紹介しようと思うのだが、何を選択しようか?
昭和のプロップは沢山持っているので悩んでしまう。(数分のシンキングタイム…)

悩んだ結果「こんな物が令和になっても現存しているのだぞ、どうだ驚いたか!」と叫びたくなるような物にする事にした。

地獄河童。誕生から今年で50年!

まずは『キカイダー01』(1973)に登場したキャラクターから。『キカイダー01』は『人造人間キカイダー』の続編として放送された、石ノ森章太郎先生原作の特撮テレビ番組。

第27話『秘境の激戦!! ザダムの地獄の罠』に登場した地獄河童が令和になっても残っている!
これが何故凄いのかと言うと、キカイダー01に登場したシャドウ殺人部隊のロボットが現存しているのを他で見たことがないからだ。

戦闘員のシャドウマンは見た事があるが殺人部隊ロボットは見た事が無いので、おそらくこれだけだろう。

もしも他に残っている物があれば是非拝見したい。この当時使っていたラテックスとウレタンは劣化が激しい。地獄河童が残っているのはウレタン使用率が低いからだ。ラテックスを補強するためのドンゴロス(米袋)がしっかりしているからだと思われる。

がんがんじい。誕生から今年で44年!

続いて『仮面ライダー (スカイライダー)』(1979)から、がんがんじいをご紹介。

第34話から登場スしたカイライダーに協力するコミカルなヒーロー。ヒーローを目指す矢田勘次が自作した鎧姿。スカイライダーを観ていた人ならがんがんじいの存在は良く知っているはず。

最近の仮面ライダーイベントでは復元されたがんがんじいが展示されているようだが、硬質ウレタンとウレタンを切り貼りして作った一点物なのでどんなに良く作ってもオリジナルと違いがある。

ゴースト怪人。誕生から今年で44年!

続いて、スーパー戦隊シリーズの3作目『バトルフィーバーJ』(1979)、第23話『決戦!! 怪人総登場』に登場したゴースト怪人。我が家にいる戦隊シリーズ怪人の最古参。

怪人の中には頭と胴体一体型の着ぐるみが多かったりするが、ゴースト怪人は頭と体が別パーツなので今まで生き残れたのだと思う。

一体型は体の劣化が激しくなり廃棄されてしまうからだ。

生き残ったこと自体奇跡

イナズマギンガー。誕生から今年で42年!

今回紹介する最後の逸品は、スーパー戦隊シリーズの5作目『太陽戦隊サンバルカン』(1981)、第45話『銀河無敵の電気男』に登場した宇宙海賊のイナズマギンガーだ。

サンバルカの後半に登場し最終回直前まで物語を盛り上げてくれたキャラなので人気が高いと思う。当時から自分はイナズマギンガーが大好きだったのでこれ以上劣化して崩れてしまわない事を望む。

昭和の特撮作品のキャラクターが現存している事は凄い事だ。特にラテックスやウレタンで作られた物が今なお残り続けている事はほぼありえない。

当時の怪人は、撮影後はショーで全国ドサ周りをするのでマスク内は汗を吸い込み表面は擦り切れウレタンはボロボロになりラテックスはベトベトになるので生き残ったこと自体奇跡。

最後にこれだけは言っておきたいという事がある。昭和の撮影用プロップは劣化し保存が本当に大変だ。保管し残し続けている事はお金もかかる。

光熱費が高くなっているのに室温管理しなくてはならない。今年の夏のことを考えると頭が痛い。

イベントや本などで「展示に貸してください」とか「写真掲載させて下さい」と言ってくるのは良いが、合言葉のように「予算が無いので」とか「無償で」と言うのは物やコレクターに対するリスペクトが無いって事だからね。100歩どころか1万歩譲って、こちらがそれを受け入れたとしよう。

その時は物に対して敬意を払い「唯一現存する昭和の…」とか特別扱いしてほしい。それをしてくれない人には貸したくないし、こちらも将来的には「日本に残さず海外に売ろう」とか「俺が死んだらゴミとして捨ててもらう」って考えてしまうもん。

毎度毎度、これ以上俺を意固地な爺にさせないでくれって思うからね。昭和時代から現在まで続いているキャラクターのシリーズは、昭和の物があって今があるのだから。人のふんどしで相撲を取るなら、きっちりした礼儀とリスペクトを示すべきだ。それが物やキャラに対する愛情だと思う。

でも、これもコレクターとそうでない人の温度差なのかもしれない。今回は物と自分の恨み節だね。

イナズマギンガーの声をやった渡部猛さんのサイン。最近入手したもの。渡部さんは2010年に亡くなられた。

なべやかん

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