Mr.玄米 富山県で農家に 国内外でおにぎり販売の大石さん

「自然栽培の農業を通じ、富山の良さを発信したい」と話す大石さん

 農薬や肥料を使わずに育てた玄米のおにぎりを移動販売する「Mr.(ミスター)玄米」こと、大石雅和さん(43)が富山県立山町釜ケ渕地区で農業に挑戦する。米・ロサンゼルス(LA)や都内で玄米の良さを広めてきた大石さんが提供するおにぎりは、県内でも口コミで人気が拡大中。自然栽培にこだわったコメなどの農作物を生産する考えで「農家としてデビューし、富山の魅力を発信したい」と意気込む。

 大阪府門真市出身の大石さんは、ドラマーとして渡米し活動。世界的に有名なアーティストらが玄米を食べていたことから、自身の食事に取り入れたところ、体重が20キロ減り、体調も良くなった。

 玄米の魅力に引かれ、多くの人に味わってもらいたいと思うようになり、転身を決意。LAのおにぎりレストランでマネジャーを務め、玄米など素材にこだわったメニューを提供した。

 米国の永住権も持ち、LAと東京を行き来する生活を送っていたが、新型コロナの大流行を機に帰国。都内にある自然食レストランで修業を積んだ。

 富山とのつながりは、自然栽培に取り組む富山市婦中地域の生産者との交流がきっかけだ。2021年に初めて来県すると、立山連峰の景色や水の良さなど豊かな自然に触れ、移住することを決めた。「富山の土地も人もすぐに好きになった」と振り返る。

 富山では、軽トラックで富山市のグランドプラザに定期的に繰り出し、自然栽培の発酵玄米やエゴマなどを使ったおにぎりを販売。今ではリピーターも増え、氷見市の小学校で炊き方などを体験できるワークショップを開くほどで、県内で幅広く人気を集めている。

 玄米を扱ううちに「自然栽培の農業にチャレンジしたい」と考えるようになった。過疎地などに移住して地域活性化を担う「地域おこし協力隊」の農業研修生として町から委嘱を受け、コメづくりなど農業の技術習得を目指す。

 活動拠点となる釜ケ渕地区は昨年、県内初の農村型地域運営組織(農村RMO)が設立。自然栽培を世界に発信するプロジェクトも始まるなど、大石さんに“追い風”が吹く。「世界では自然栽培の農作物の需要は高い。これまで玄米好きな人を増やしてきたように、釜ケ渕での農業を通じ、多くの人に富山を好きになってもらいたい」と話している。

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