蔵全焼の結城酒造 再起の新酒出荷 ラベルに感謝の言葉 茨城県内外の酒蔵協力

火災後初めて造られ、ボランティアの協力で出荷される「結ゆい」=結城市結城

国登録有形文化財の酒蔵2棟などが全焼した茨城県結城市の老舗酒造会社「結城酒造」で、他社の酒蔵を間借りして火災後初めて造った新酒の出荷作業が始まった。再起へ向けた歩みをさらに進めた形で、浦里昌明社長(46)は「今年も造らせていただけることに喜びを感じる」と感謝しきり。7日の出荷作業には、浦里社長と弟の宜明専務(41)をはじめ、ボランティア3人が参加。商品のラベル貼りや箱詰め作業に追われた。

この日出荷されたのは、代表銘柄の「結(むすび)ゆい」。2022年5月の火災後は、浦里社長が茨城県筑西市の来福酒造で、妻で杜氏(とうじ)の美智子さん(45)は、北海道東川町の三千桜酒造で、それぞれ酒造りを手伝いながら、各社の酒蔵も借りて仕込みに励んできた。

結ゆいは、三千桜酒造で造られた新酒には薄い桃色、来福酒造のものには濃い桃色のラベルを貼付。いずれのラベルにも、浦里社長夫妻から支援者への感謝を込めたメッセージが印刷されている。

完成した二つの新酒について、浦里社長は「どちらもうちらしい味になったのでは」と笑顔。それぞれ現地の水を使った酒造りだったため、軟水の来福酒造と硬水の三千桜酒造では、味わいに微妙な違いがあり、飲み比べを楽しめるようになっている。

一方、宜明専務は火災後、東京都の酒販店に勤務しており、浦里社長との共同作業は久しぶり。この日は新酒の運搬作業に汗を流しながら、「これからも酒を造っていけるよう、頑張っていきたい」と前を向いた。

結城酒造の火災は昨年5月11日午後、ボイラーから出火した。鎮火後、被災を免れた冷蔵庫に残っていた結ゆいは、支援者の購入が全国で相次いだ。被災した蔵の解体作業は6月末に終了しており、現在は、さら地に国登録有形文化財の「煉瓦煙突」が立っている。

© 株式会社茨城新聞社