<社説>「人手不足」中小7割 人材確保の戦略見直しを

 県内中小企業の7割超が人手不足を感じている。琉球新報と県中小企業家同友会が共同で実施した調査による結果だ。基本的労働力だけでなく、育成に時間のかかる技術者、マネジメント層の不足も深刻化していることが分かった。 人手不足の主な原因は、生産年齢人口の減少、特別な資格や技術を有する人材がいない、高水準の賃金や福利厚生ができていないことなどだ。

 人手不足で売上高の減少、営業時間の短縮、労働環境の悪化などの影響が出ている。収益が上がらず、さらに人材が流出するという悪循環も生じているとみられる。人手不足を解消し、生産性を高める好循環へ転換するには、官民一体となって知恵を絞り、労働者の目線で人材確保の戦略を見直す必要がある。

 調査では、人手不足の原因(複数回答)について32.3%が生産年齢人口の減少を挙げ、最も多かった。育児制度の充実など女性が働きやすい環境を整備したり、障がい者や外国人を積極的に採用したりすることで人材の発掘を図る必要がある。それを進めるには政府の取り組みや人々の意識改革が欠かせない。少子高齢化の影響は、企業の努力だけでは解決困難な構造的問題である。社会全体の問題として取り組まねばならない。

 かねて存在していたこれらの問題に、コロナ禍や原材料価格の高騰が追い打ちをかけた。中小零細企業は、価格転嫁や賃上げが難しいために収益を圧迫し、人材の確保を一層困難にしている。

 調査によると、人手不足は、売上高の減少、熟練技術者の不足による受注の見合わせ、営業時間の短縮など経済的影響を及ぼしている。新規事業や既存事業拡大の見合わせなど成長投資も阻害している。

 最も懸念されるのは、労働者への影響である。従業員の疲労による生産性低下、既存スタッフの業務負荷の増大、管理職が休みを取れないなど職場環境の悪化を挙げる企業が多かった。

 人材を確保するには、賃金アップなど待遇改善を図る必要があるが、賃上げできないと答えた企業が2割以上あった。これでは、人材の確保どころか流出を招きかねない。

 中小零細企業の自助努力だけでは解決が困難だ。政治や行政の関係者は企業側の窮状に対する理解を深めるべきだ。調査では、国や県への切実な要望があった。パート従業員らが働く時間を抑える「年収の壁」問題の解決や税制優遇などである。「働き損と考えないような税制度や社会保障の仕組みを考えるべきだ」との声があった。こうした声に耳を傾け、政策に反映させてほしい。求人のマッチング支援も強化すべきだ。

 一方、企業側に求められるのは、採用計画や育成計画の策定・実行など人材を確保するための戦略の見直しだ。労働者の立場に立ち、いかに働きがいを感じてもらえるか、改めて考える時に来ている。

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