伊良部島沿岸に「人のようなもの」 市民から連絡、陸自と海保が確認急ぐ 宮古沖陸自ヘリ事故 

 沖縄県宮古島市沖で陸上自衛隊幹部ら10人を乗せたヘリコプターが消息を絶った件で、8日夜、宮古島市の伊良部島北側の海上で「人のようなものが浮いている」と市民から陸上自衛隊に連絡があった。現場は崖下50メートルほどの海上で、海上保安庁の巡視船や巡視艇では近づけない場所だという。海保がヘリを派遣するなど、関係機関が確認を急いでいるが、8日午後11時現在、詳しい状況は分かっていない。

 ヘリはレーダーから機影が消える2分前に下地島空港の管制と交信した際、緊急事態を伝える内容ではなかったことが関係者への取材で分かった。見つかった救命ボートが使用された形跡がないことや回収された機体の一部の破損状況から、機影消失直前に事態が急変して激しく海面に衝突した可能性がある。

 10人は陸自の坂本雄一第8師団長ら師団の幹部5人、ヘリを運航する第8飛行隊の4人、宮古警備隊の幹部1人。師団長は3月末に就任したばかりで、宮古島周辺の地形の視察が目的だった。

 8日の捜索では自衛隊の航空機や艦艇、海上保安庁の巡視船を投入し、陸上からは約270人が捜索に当たった。同日夜、伊良部島北方の通称「三角点」付近で人のようなものが浮いているとの情報が陸自に寄せられ、陸自が海保や宮古島消防本部に通報した。三角点周辺は断崖絶壁になっており、確認が難航している。

 救命ボートは搭載していた二つとも海で見つかったが、折りたたまれたままで事故発生時に使用された形跡はない。簡易な操作で膨らませて使うものだが、陸自は「開くことができなかったほどの強い衝撃があった可能性がある」とみている。

 ヘリに搭載された航空機用救命無線機(ELT)による救難信号を、宮古空港と下地島空港の管制が受信していなかったことも判明した。ヘリのELTは墜落など機体に強い衝撃が加わった場合に自動発信し、位置を知らせる仕組みだが、今回の事故時に周囲の管制や船舶は救難信号を受け取っていない。

 防衛省関係者によると、緊急時に備えた頑丈な機材だが、何らかの理由で通常通り作動しなかった可能性がある。(明真南斗、安里洋輔、友寄開)

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