喫緊の課題“少子化対策”、都はいち早く政策を発表…今本当に必要なことは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、日本の喫緊の課題“少子化対策”について議論しました。

◆東京都がいち早く打ち出した少子化対策…一方で国は議論ばかり!?

東京都は2023年度当初予算案で、少子化対策や子育て支援に総額1兆6,000億円を計上。そこには18歳以下の子どもに月5,000円を給付する事業や第2子の保育料を2歳まで完全無償化する取り組みなどが盛り込まれています。

一方で、岸田首相が掲げる"異次元の少子化対策”に対し、小池知事は「国が遅いだけの話。ずっと議論ばかりしているのでは間に合わない」と述べる場面もありました。

キャスターの堀潤は「こうして動くことで都政のなかでもいろいろな動きが刺激されるし、当然国もメンツがある。東京都の判断がどう波及していくのか楽しみ」と期待。

東京都は0~18歳への月5,000円の給付を2024年1月頃に6万円(1年分)を支給する予定です。第3子以降無償化となっていた保育料の対象を第2子まで拡大しましたが、これらは所得制限なしで実施されます。その他にも健康な女性の卵子凍結保存の助成。また、結婚を予定している人に都営住宅などを提供します。

なお、東京都の出生率は2021年が1.08。小池都政が始まった2016年以降、低下の一途を辿っています。

モデルでタレントの藤井サチさんは「"子どもを持たない”もしくは"子どもを持てない”ことにはいろいろな理由があると思う」と語り、20代の結婚・育児感に言及。現在26歳の藤井さんの周囲では、結婚や子育てに対しリアルに考える方が増え、そこでは「仕事に復帰できるか不安という声がすごく多い」と話します。

そこで女性の社会進出の推進と脱少子化を両立している国を調べてみたところ「スウェーデンが興味深い制度をとっていた」と藤井さん。それは育休に関する制度で、スウェーデンでは両親合わせて390日、子どもが8歳になるまで1日単位で自由に取得できるそうで、「これなら仕事復帰へのハードルが下がるし、ぜひ国にやってもらいたい!」と訴え、「女性活躍の推進と脱少子化の両立を総合的に行ってほしい」と熱望します。

工学博士の古田貴之さんは、東京都の施策について「プラスになるし、やったほうがいい。少子化対策が話題になるのはとてもいいこと」と肯定します。自身はというと、晩婚で子どもを授かったそうで、その理由は「未来への不安があった」と打ち明けます。

そして、そんな不安の残る社会のなかでも少子化対策に成功している町に共通しているキーワードに"コミュニティ”を挙げます。「例えば、(兵庫県)明石市などはいろいろな施策をやりながらコミュニティを作っている。コミュニティを作って相談し合える未来の社会、つまりグランドデザインで若い世代がどうこれからの社会を作るかが重要」と古田さん。

この意見に堀は「確かに、個々にいくら手厚い支援があっても、不安や心配になったときなどにコミュニティがあると安心」と同意します。

アフリカの紛争問題を研究する東大院生の阿部将貴さんからは、支援金の給付に対する質問が。今回、東京都の5,000円給付は所得制限なしとなっていますが、国の児童手当は高所得者が対象外。必要としている人に配分するという政策になっています。そこで「一律で支給すべきなのか、それとも高所得者には配分しなくてもいいのか?」と疑問を呈します。

藤井さんは「平均所得の方たちが届かない政策が現状多いので、所得制限なしのほうが幅広くできると思う」と一律給付を望み、その上で「高所得者の方たちは返金できるなど、そういった手段もあれば」と述べます。

◆必要なのはあらゆる人々が集まり、話し合う議論の場

少子化対策は、東京都以外の地方自治体でもさまざまな取り組みが行われています。例えば、兵庫県明石市では医療費が高校3年生まで無料で、中学校の給食費も無料。また、0歳児の見守り訪問、おむつ定期便を実施しており、一連の政策のかいもあり10年連続で人口が増加。約1万4,000人(4.8%)増加したということです。

さらに、岡山県奈義町も医療費は高校3年生まで無料で、子育て中の親子が集まれる支援施設などを開設。すると2005年は1.41だった出生率が、2019年は2.95と2倍超となりました。

少子化対策に成功した自治体の事例を鑑み、堀は「移住者が集まってくる。子どもが産まれる。働く場所を作る。そして、その子たちが大きくなったときにもう一度その町に戻ってきてもいいように雇用の受け皿、産業作りにも力を入れる。まさに古田さんが言っていたような都市として、町としての"グランドデザイン”が50年、100年を見据えたなかで出来上がっていないと、この歳出の処方箋が必ずしも上手く機能するとは限らない」と意見します。

古田さんは、フィンランドを引き合いに「2010~2012年あたりは出生率1.7ぐらいだったが、2019年あたりには1.3ぐらいまで落ちた。なぜかといえば、若者たちの雇用に対する不安が上がっていったから。つまり、世の中の経済、コミュニティ、全てはひとつ。一片だけを切り出すのは対処療法でしかない」と話します。

番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「少子化対策といったときに子育て支援も必要かもしれないが、それだけが少子化対策なのか考えたほうがいい。資金がないと子育てをしようという気にもならない」といった声が。

そのほか、「男性が提唱する少子化対策の具体論はたいてい的外れ。出産した母親が何を求めているのかわかっていない場合が多い。ぜひ女性に発言していただきたい」といった意見もありました。

キャスターの田中陽南は、視聴者の"的外れ”という表現に反応し「これはひとつのポイントだと思っていて、男女だけでなく、年齢でも言えると思う。まだ子どもを産んでいない私たちも的外れなことを言うこともあると思うし、そうならないぐらいいろいろな人で議論をやっていかないと」と話します。

すると、2児の父である古田さんからは「僕は子どもが産まれたとき、離乳食も食事作りも全部やっていた。100%コミットしたら子育ては仕事どころではなくなる。その切実さを世の男性は、ほとんどわかっていない」と自身の経験から感じた子育ての大変さを吐露。

堀は「あらゆるステークホルダーが集まり、どうするのか話し合いをしないと、どこかでピントがずれたり、偏ってしまったりする」と危惧し、「そうした場所を作ること。異次元の少子化対策というのであれば、政党間も取っ払ってやってほしい」と希望。

古田さんは「出生率が上がっている先進国、ドイツやアメリカなどに言えることは新しい産業を作っている。そして、若者たちが政治に参加してグランドデザインしている」と海外の事例を示し、今後のより良い社会作りを期待していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:30 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、豊崎由里絵、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag
番組Instagram:@morning_flag

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