2022年度の「負債1,000万円未満の倒産」は426件 2年連続で前年度を下回る、コロナ関連倒産は1.4倍に増加

~ 2022年度(4-3月)「負債1,000万円未満の倒産」状況 ~

   2022年度(4-3月)の負債1,000万円未満の企業倒産は426件(前年度比6.5%減)で、2年連続で前年度を下回った。このうち、「新型コロナ」関連倒産は138件(同42.2%増)で、1.4倍に増加した。
  負債1,000万円以上の企業倒産は、2022年4月から12カ月連続で前年同月を上回り、3年ぶりに増加した。実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)などの支援策で負債が膨らんだことも一因と見られる。

 産業別は、最多が「サービス業他」の208件(前年度比3.2%減、構成比48.8%)。サービス業他では、医療,福祉事業(25→41件)、学術研究,専門・技術サービス業(32→36件)などが増加した。次いで、建設業73件(前年度比4.2%増)、小売業44件(同31.2%減)と続く。

 原因別は、最多が「販売不振」の283件(前年度比14.2%減、構成比66.4%)。以下、「他社倒産の余波」47件(前年度比23.6%増)、「事業上の失敗」39件(同77.2%増)の順。コロナ禍では、経営基盤が脆弱な業歴が浅い企業の倒産が急増した。

 資本金別は、「個人企業他」を含む1千万円未満が402件(前年度比6.0%減、構成比94.3%)で、ほとんどが小・零細企業だった。

 形態別は、「破産」が419件(構成比98.3%)で、構成比は2008年度以降の15年間で最高となった。負債1,000万円未満の企業は、小・零細規模のため資金余力が乏しく、業態転換なども難しく、資金繰りに行き詰まると破産を選択するケースが多い。

 コロナ関連支援の効果は薄れ、アフターコロナに向けて経済活動も再開しつつある。そうしたなかで、ゼロ・ゼロ融資の元金返済と利払いが本格化する。物価や人件費などの上昇で資金負担が増し、返済原資の確保が難しい小・零細企業は少なくない。
 資金面で経営再建や事業の再構築が難しい場合、倒産回避のため、早い段階での廃業や事業譲渡の決断も必要だろう。

  • ※本調査は、2022年度(4-3月)に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産426件、2年連続で前年度を下回る

 2022年度の負債1,000万円未満の倒産は426件(前年度比6.5%減)で、2年連続で前年度を下回った。このうち、「新型コロナ」関連倒産は138件(同42.2%増)で、前年度の1.4倍に増加した。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は32.3%で、前年度の21.2%より11.1ポイント上昇した。
 負債1,000万円未満の倒産は小・零細企業がほとんどだが、コロナ禍の資金繰り支援で負債が押し上げられた結果、負債1,000万円未満の倒産の減少につながっている可能性がある。

1000万未満

【産業別】サービス業他が約5割

 産業別では、10産業のうち、前年度を上回ったのは農・林・漁・鉱業、建設業、不動産業の3産業だった。
 最多は、サービス業他の208件(前年度比3.2%減)で、2年連続で前年度を下回った。ただ、構成比は48.8%で、前年度の47.1%から1.7ポイント上昇した。
 このほか、製造業16件(同23.8%減)と卸売業34件(同5.5%減)、運輸業10件(同28.5%減)、情報通信業18件(同10.0%減)が2年連続、小売業が44件(同31.2%減)で2年ぶり、金融・保険業が2件(同33.3%減)で3年ぶりに、それぞれ前年度を下回った。
 一方、農・林・漁・鉱業7件(同16.6%増)と建設業73件(同4.2%増)が2年ぶり、不動産業が14件(同100.0%増)で5年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。

 業種別は、食堂,レストラン(18→20件)、建築工事業(9→15件)、酒場,ビヤホール(12→14件)、経営コンサルタント業(8→12件)、通所・短期入所介護事業(ゼロ→10件)、エステティック業(4→8件)、一般貨物自動車運送業(6→7件)。また、5件の一般電気工事業(前年度3件)、不動産代理業・仲介業(同2件)、不動産管理業(同4件)、4件の建築リフォーム工事業(同2件)、一般管工事業(同1件)、ペット・ペット用品小売業(同1件)、デザイン業(同1件)などが、前年度を上回った。

1000万未満

【形態別】破産の構成比が15年間で最高

 形態別は、「破産」が419件(前年度比5.6%減、前年度444件)で、2年連続で前年度を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は98.3%で、2008年度以降の15年間では前年度の97.3%を超え、最高となった。一方、再建型の民事再生法が3件(前年度比50.0%減)で、2年連続で前年度を下回った。また、会社更生法は2008年度より15年連続で発生がなし。
 負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどで資金余力が乏しい。このため、経営再建や事業再構築が難しく、経営に行き詰まると破産を選択するケースがほとんど。

【原因別】『不況型』倒産が7割

 原因別は、最多が「販売不振」の283件(前年度比14.2%減)で、2年連続で前年度を下回った。構成比は66.4%で、前年度の72.3%より5.9ポイント低下した。
 「既往のシワ寄せ」は、前年度と同件数の20件だった。
 『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は303件(同13.4%減)で、2年連続で前年度を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は71.1%で、前年度の76.7%より5.6ポイント低下した。
 このほか、「事業上の失敗」が39件(同77.2%増)で、4年ぶりに前年度を上回った。コロナ禍の支援効果も薄れ、業歴が浅く、事業基盤が脆弱な企業の脱落が顕著となった。また、「他社倒産の余波」が47件(同23.6%増)で3年ぶり、「運転資金の欠乏」が12件(同20.0%増)で2年ぶりに、それぞれ前年度を上回った。一方、代表者の病気や死亡を含む「その他」が19件(同34.4%減)で、7年ぶりに前年度を下回った。

【資本金別】1千万円未満が9割超

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が402件(前年度比6.0%減、前年度428件)で、2年連続で前年度を下回った。構成比は94.3%で、前年度の93.8%より0.5ポイント上昇した。内訳は、「1百万円以上5百万円未満」159件(同1.2%減、同161件)、「個人企業他」128件(同20.0%減、同160件)、「1百万円未満」70件(同4.1%減、同73件)、「5百万円以上1千万円未満」45件(同32.3%増、同34件)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が24件(同11.1%減、同27件)で、2年連続で前年度を下回った。また、「5千万円以上1億円未満」が3年ぶり、「1億円以上」が2018年度より4年連続で、それぞれ発生しなかった。

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