演出にスコット・シュワルツ、劇団四季最新オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』製作発表会レポ

劇団四季が、2024年5月に最新ミュージカル『ゴースト&レディ』を四季劇場[秋]にて上演する。
原作は「うしおとら」や「からくりサーカス」などのヒット作で知られる藤田和日郎の中編コミックス「黒博物館ゴーストアンドレディ」、19世紀の欧州で近代介護の礎を築いた「ランプを持った淑女」、フローレンス・ナイチンゲール(フロー)と、芝居好きなゴースト、グレイにまつわるファンタジックなラブストーリー。
舞台版では、原作の魅力を大事に、その上で題材の再現に収まらない「演劇」としての新しい魅力の創出を追求する。
演出はスコット・シュワルツ、脚本・作詞に高橋知伽江、作曲・編曲に富貴晴美、音楽監督には鎮守めぐみ、振付にチェイス・ブロック(『ノートルダムの鐘』)、イリュージョンには四季作品初参加のクリス・フィッシャー、擬闘に栗原直樹、映像に松澤延拓を迎え、紫藤正樹(照明デザイン)をはじめとした劇団内の才能が加わる。目下、創作が進められている、とのこと。
4月のよく晴れた日、製作発表会が執り行われた。登壇したのは、劇団四季 代表取締役社長 吉田 智誉樹、演出のスコット・シュワルツ。

まず、吉田 智誉樹から公演概要の説明。公演は来年、2024年5月開幕、半年程度公演予定だそう。それから原作者についての説明。1988年(昭和63年)に第22回新人コミック大賞に入選した「連絡船奇譚」が『週刊少年サンデー』の増刊号に掲載されてデビューを果たす。そして1989年(平成元年)に「うしおととら」で第2回少年サンデーコミックグランプリに入賞。「黒博物館ゴースト アンド レディ」は「モーニング」で2014年から2015年連載された。この作品を選んだ理由について「冒険とロマンスが取り込まれている作品」と語り、四季作品の大きなテーマでもある「信念を貫くことの大切さ」「人生の価値とは何か」という要素がある、とのこと。今回演出を担うスコット・シュワルツとの出会いは『ノートルダムの鐘』、劇団四季の大きなレパートリーの一つになっている作品で、その芸術性の高さやスケールで話題に。そして「兼ねてから、またご一緒できないものか」と思案していたそう。また、原作については「人間、人生の本質を描き、また演劇の本質も描いている」といい、今回初めてオリジナルミュージカルで海外の演出家を起用。現在、既にリーディング・ワークショップや美術プランの打ち合わせ、楽曲制作に入っており、8月に劇団内オーデションを実施する予定。来年の2月より稽古を開始する。まず、東京公演、それから全国公演を行う予定とのこと。また、オリジナルミュージカルの強みとして「オンライン配信や、海外での上演など可能性の幅が広い」と語る。オリジナルならではの強み、今後の展開に期待。

それから演出のスコット・シュワルツより作品についての説明。原作を読んだ感想として「オリジナリティに溢れ、ワクワクする、どんどん読みたくなる作品、心動かされた、ダークでロマンチック、同時に楽しい」と語った。ヒロインのフロー(ナイチンゲール)については「意外性のある描き方」と語る。看護は当時、身分の低い女性の仕事といった偏見や差別をはねのけて邁進する。看護こそ我が使命と感じ、生きる意味を見出す。また、どんな作品になるのかチラッと発言「ゴーストたちが魔法のごとくに現れる、ワクワクして観ていただける作品」だそう。また出演者は30人ほどになるそうで、セットも19世紀のヴィクトリア朝時代ゆえ、「素晴らしいものになる」とスコット・シュワルツ。またアプローチについては「ラブストーリーである、ということ、情熱的でロマンチック、壮大なスケール、演劇的な要素がある…題材はシリアスだが、とても楽しく、遊び心があり、冒険のようなワクワク」と語る。衣裳デザインなど、現在進行中。「ロマンチック、愛、冒険、ユーモア、マジック」もう盛りだくさん!「ぜひ!」とスコット・シュワルツ。
チケットの発売など詳細は後日。それから記者席からいくつかの質問が出た。
海外公演だが、グローバルな公演が理想、だが、その前に「まず、日本のお客さまに観ていただける作品にしたい」と吉田社長。
予算についての質問、吉田社長は「『マンマ・ミーア!』などと同規模になる」そう。そしてスコット・シュワルツに依頼の経過だが、「なんとか、スコットさんと、また!」というのが動機だそう。それから、漫画原作となると、いわゆる『2.5次元』のカテゴリーに入るが、ビジュアルについての質問、「漫画はインスピレーションの元であり、舞台版は舞台版のスタイル」とのこと。また物語については「漫画の物語ではあるが、しかし異なる部分もある」とのこと。そして「ナイチンゲールの人生を盛り込むのはいい機会」と語り、原作の藤田和日郎とも相談しているとのこと「応援してくださり、フィードバックもしていただいてる」そう。また、吉田社長から「原作ファンの方々に楽しんでいただけるように」とのこと。またゴーストなどの表現方法については「サプライズをとっておきたい」、ここは観てのお楽しみポイント。また、具体的な上演期間については、まだ、具体的ではないが「半年くらいでしょうか」と吉田社長。
また登場キャラクターについては主要なキャラクター2名の他に、もう一人、ゴーストが現れるそう、また、フローの友人の若いナース、フローの家族など登場する予定。ここも観てのお楽しみ。劇団四季が手がけるオリジナルミュージカル、どんな作品になるのか、来年5月が待ち遠しい。

原作者より
長いこと漫画を描いてきて、口を「え?」の発声のカタチのまま固まることがあるとは思いませんでした。
自作が「劇団四季」のミュージカルになるとは!
この作品にはとんでもない幽霊が出ますし、激しいアクションシーンはもちろんのこと、ものすごい女性が途轍もない力で戦場を変えていきます。
これを本当にミュージカルにできるのでしょうか?
…………知りませんよう。演出のスコット・シュワルツさん、脚本の高橋さん(笑)

一方、この斜に構えたゴーストと信念のレディの心が交わる大変なお話を既に描き終わっている自分は、ただもうワクワクしながら、素晴らしい上演を待っておりますね。
ただし、

まだ、口は驚きのカタチを残したまま。

藤田和日郎

物語
時は19世紀。ロンドンのドルーリー・レーン王立劇場には〈灰色の服の男=グレイ〉と呼ばれる有名なシアター・ゴーストがいた。彼が客席に現れるとその芝居は必ず成功すると言われている。
ある日、彼のもとに一人のレディが現れ、「私を殺してほしい」と懇願する。彼女の名は、フローレンス・ナイチンゲール(フロー)。フローは看護の道に進むことが使命と信じながらも、看護婦を卑しい仕事と蔑む世間の風潮と家族の反対に抗えず、自らの生きる意味を見失い、死を望んでいた。芝居をこよなく愛するグレイはそんな彼女に興味を持ち、自らが悲劇の主役になるため、「フローが絶望の底に落ちた時に取り殺す」ことを条件に願いを聞き入れる。

グレイとの契約で死を覚悟したことにより、看護の道を突き進むことを決断したフロー。行動を共にするようになった二人は、クリミア戦争での傷病兵を収容するスクタリ陸軍野戦病院へ赴く。現地では「女性に看護はさせない」という軍からの強い反発が待っていたが、フローは力と知恵を振り絞り、数々の困難、そしてグレイの期待する絶望を撥ね除け、自らの理想に向かって突き進み始める。グレイもそんなフローの情熱に魅せられ、次第にフローの手助けをするようになり、いつしか二人は不思議な絆で結ばれていく。

スクタリ陸軍野戦病院の改善も進み、フローは「クリミアの天使」と呼ばれるようになっていた。しかし、そんな彼女の活躍をよく思わない人々もいた。陸軍野戦病院を管轄する軍医長官のジョン・ホールもその一人。フローの活躍によって、必死に築き上げてきた自らの地位を失いかけたホールは、彼女を亡き者にしようと謀り、とある人物に命令を下す。
その人物はグレイと同じゴーストで……。

公演概要
日程・会場:2024年5月 四季劇場[秋]
公式サイト:https://www.shiki.jp/

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