「統一地方選前半終了!関西での『維新旋風』で、明らかになったものは?

4月9日に投開票が行われた「統一地方選挙・前半戦」ですが、関西圏での「日本維新の会」(以下、維新)の躍進がいやが上でも目につきました。本拠地である大阪府・大阪市の知事選・市長選・府議選・市議選はもとより、奈良県知事選挙で維新の山下真氏の当選を筆頭に、兵庫県・京都府も含め、県や政令指定都市の議会構図が大きく変わったのは事実です。

維新が躍進した、ということは、後退した政党や勢力があるということです。「候補者全員当選」を目指した公明党が政令指定都市の大阪市「都島区」などで落選したのが後退として注目されていますが、ここでは私が「これは」と思った「選挙区」の結果から振り返ってみます。

兵庫県での自由民主党の退潮

最初に、兵庫県の「自由民主党」(以下、自民党)の退潮です。象徴的だったのは、兵庫県唯一の政令指定都市・神戸市の「兵庫区」と「長田区」の2つの選挙区です。

まずは「兵庫区」。ここの市会議員選では、市会議長経験者の自民党ベテラン議員が候補7人中7位で落選しています。「絶大な支援を頂きながら議席を守り切る事が出来ず申し訳ない」と当人はSNSで敗戦の弁を語っていますが、議長経験者の最下位落選が与えた衝撃が党内部にとどまらないのは想像に難くありません。同区で自民党は県議でも現職が落選。また、その隣の「長田区」でも、神戸市議会議員の経験を持つ54歳の働き盛りの自民党現職が維新の新人に押し出される形で落選し、この両区で自民党県議「ゼロ」になってしまいました。

2年前の兵庫県知事選で現知事の斎藤元彦氏を推薦したのが「自由民主党」と「日本維新の会」でした。県議会の第一会派だった自民党は、その時の経緯で2会派に分れ、そのまま今回の選挙にも突入しています。そして迎えた今回の県議選で、同県民が示した民意は政令指定都市の神戸市内9区の選挙区で、自民党候補の1位当選は1区のみ、維新の会は7区で1位当選でした。

京都府での日本共産党の衰退

次に、京都府の「日本共産党」です。改選前は12名の府議会議員がいたのですが、今回の当選は9名にとどまりました。

京都府は1950年から28年間、日本共産党(以下、共産党)が知事与党だった時代を持っています。その影響は脈々と受け継がれ、私が京都府議会議員となった2015年の統一地方選挙でも京都市内の11区で12名が当選するなど14名で会派を形成、全60名の府議会で自民党に次ぐ第2勢力を誇っていました。

そして、当時は、共産党以外、私たちの2名会派を除いてオール知事与党の時代。そのため議会内で共産党の発言力を弱める狙いもあってオール与党の会派の議員が、私たちに各委員会の委員長選びなどで「(知事与党の候補に)投票してください」とお願いに来られることが頻繁に起こってました。

今後は、「お願い」にオール与党会派の方が別会派に訪れる、という構図はもう見られないはずです。

有権者はしっかりみている

次に、今回、こういった流れにもかかわらず、有権者もしっかり選んでいるな、と思った選挙区や立候補者も挙げてみます。

まず、神戸市垂水区の神戸市議選で当選した公明党の新人。この方は、身内の方が視覚障がいを持たれており、民間企業務めをしながら子育てを地域の方の支えもありながら行ってきていた方でした。明石市に位置しながら神戸市と隣接していることで、神戸市の候補も明石市の候補も駅立ちする「JR朝霧駅」に約半年間、時間が許す限り立ち続けられてました。駅立ちで話しかけた際「自然とやってきてるので苦労と思ったことはありません」と、身内の方の介護を続けながらも何ごともないかのように優しい表情で語られてました。私自身、選挙区民でないにも関わらず「投票してあげたい」と思ったことは隠しません。そして、やはり上位(当選者9人中3位)で当選を勝ち取られていました。

 同じく神戸市の「東灘区」で再選を決められた立憲民主党の議員も、初当選から4年間、地域をくまなく回られ、市議会では「市長与党」である立場も活かし、子育て・教育などの分野で予算に関する的確な質問をされていました。日々の活動のSNS発信は欠かさず、私のような一市民(私は神戸市長田区に投票権があります)にも、たとえば2年前の神戸市営地下鉄海岸線開業20周年記念ヘッドマークデザインコンテストで私の小学生親族の作品が選ばれた際に、掲載メディアに関して真っ先にSNSを通じてお伝えくださるなど細かい気配りもできる方でした。今回、「前回より1091票増やし7位で再選できました」とラインを通じて報告。当選者10人中最下位だった前回以上に、維新の勢いに加え議席が1つ減るなど逆風に近い形の中で上澄み当選されたのは、有権者の方の選択以外のなにものでもないのです。

また、私がかつて議員を務めさせて頂いた京都市西京区。ここで当選した共産党の市議会議員現職は、どんな状況でも自分のことより人の心配をしてしまうような方でした。2015年にこの選挙区で「府議会議員」として当選した私は、この議員にとって所属政党的には「口も聞きたくない」間柄だったはずですが、地元で私が行政、あるいは区民の方との間で困った状況に陥った時、まるで自分のことのように考えて的確なアドバイスをくださっていました。自民党・共産党が安泰とされている地域。今回は3人区となる同区の府議選で、同党の舌鋒鋭いベテラン府議が2位当選の「日本維新の会」の大きく離される3位当選になるなどしましたが、この市議の方は1位の維新新人とほぼ差なしの2位で当選されていました。

「維新躍進を許したのはその他の政党の情けなさ」という指摘も

都道府県議会や政令指定都市の選挙は、国政政党に属すか、なんらかの関係を持っていないとほとんど勝機がない、という近年、私が選挙に出馬した経験も加味して確信していたことを覆した方もいます。前出の神戸市「兵庫区」の市議会議員選2位で再選を果たした、駅立ちも含めた地元での活動量に自信を持つ30歳の無所属議員の方がそうです。前出の通り、元議会議長経験の自民党議員が最下位で落選した区での出来事だっただけに余計、新鮮に感じました。

「維新躍進を許したのはその他の政党の情けなさです。地方自治を守るため、まともに選挙戦で戦ったのは○○(当該議員の姓)陣営だけです。情けない」という立場を鮮明にした上での、再選に関するこの神戸市議のSNS発信でこの原稿を締めます。やはり候補者の日ごろをみている有権者も、しっかりいるのです。

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