電子“ドリフト”ブレーキ搭載。フォードが第7世代『マスタングRTR スペック5-FD』を披露

 フォードのモータースポーツ活動を担当するフォード・パフォーマンスは、フォード本社とフォーミュラ・ドリフト(FD)で2回のチャンピオンに輝くヴォーン・ギッティンJr.に加え、車両製作を手掛けるRTRビークルスらと協業し、最新世代となる7代目フォード・マスタングをベースとした競技車両『マスタングRTRスペック5-FD』を披露。同車両と今夏の本国発売が予定される最新の量産モデルには、競技から「インスパイアされた」という“Electronic Drift Brake(電子ドリフトブレーキ)”が搭載される。

 2023年が約1年ぶりの競技復帰となり、チームメイトのアダムLZと任務を分かち合う格好で、このブランニューモデル『モンスターエナジー・マスタングRTRスペック5-FD』のステアリングを握ることが発表されたギッティンJr.は「ブランドのシグネチャーであるアグレッシブなスタイリングと、劇的なパフォーマンスのアップデートを実現した、競技用『マスタングRTR』のシートに座ると発表できたことに興奮している」と挨拶した。

「それだけでなく、フォードとRTRがたゆまぬ努力を重ね、特別な何かを作ることにもワクワクしている。この新しい“電子ドリフトブレーキ”のようなね!」

 世界的に有名な「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した写真にインスパイアされた」というカラーリングの新型FD用車両は、フォード本社と協業して車両開発を担ったRTRが都合3台を製作中で、グローバルな展開を計画するGT3仕様や、北米最高峰NASCARに豪州大陸のスーパーカーなどと同様、第7世代モデルをベースとした競技車両の1台に数えられる。

 施されたモディファイには、約1300PS以上を誇るエンジンと強化されたサスペンションが含まれ、その開発には前述のふたりやチェルシー・デノファ、さらにアイルランド出身で2017年からFDで3連覇を達成したジェームズ・ディーンらのフィードバックが含まれている。

「フォーミュラドリフト用の新型『マスタングRTR』を開発するため、そのインスピレーションとして、まったく新しいマスタングの“bad ass(めちゃくちゃヤバそう)”なスタイリングに、最新のテクノロジー、そして全体的な進歩が採り入れられた」と続けたギッティンJr.。

「その結果、これまで作成した中で最高のルックスと最高のパフォーマンスを誇る『マスタングRTR』が完成し、ドライブするのが本当に楽しいクルマに仕上がったさ」

RTR Vehiclesがフォード本社などと協業して開発した『フォード・マスタングRTR Spec 5-FD』
同車両と今夏の本国発売が予定される最新の量産モデルには、競技から「インスパイアされた」という”Electronic Drift Brake(電子ドリフトブレーキ)”が搭載される
施されたモディファイには、約1300PS以上を誇るエンジンと強化されたサスペンションが含まれる

■従来の機械式パーキングブレーキの3倍以上の制動力

 その競技車両には、前述のとおり新機軸の電子ドリフトブレーキが搭載され、フォード本社とRTRは2024年型マスタングの発売に向け、セグメント初の機構を開発するべく協力体制を敷いてきた。

「チェルシー(・デノファ)と僕は、フォードの情熱的なエンジニアリング・チームと協力して開発できたことを光栄に思っている。僕らの目標は、間もなく同じ第7世代のマスタング・オーナーになる人々の顔に、より大きな笑顔をもたらすことだった」とギッティンJr.。

 この電子ドリフトブレーキは、先代同様2.3リッターの直列4気筒エコブースト搭載車と、5.0リッターV8搭載車に装備される“マスタング・パフォーマンス電子パーキングブレーキ”の一部(AT/MTともに利用可能なパフォーマンスパックの一部)で「従来の機械式ハンドブレーキの視覚的な魅力と機能性を備えた、後輪駆動マスタングのドリフト能力を解き放つ、まったく新しい、セグメント初の、トラック専用の電子ドリフトブレーキ」だと謳われる。

 その機構はRTRの競技車両にも採用される油圧式ハンドブレーキを高度な電子機器でエミュレートし、従来の機械式パーキングブレーキ・システムの3倍以上の制動力を備えるという。

 量産モデルのブランドマネージャーを務めるフォードのジム・オーウェンズは、初心者は電子ドリフトブレーキを使用してドリフトを学び、のちにシステム設定を変更してトラックのみの競技で使用することも可能な、この新機軸に対し「ほぼすべての人が、ギッティンJr.のようなドリフトを決めることが可能になる」とアピールした。

「マスタングはつねに、オンロードでの自由度とサーキットでのパフォーマンスを代弁してきた存在だ。史上初の電子ドリフトブレーキは、サーキットでの楽しさとその能力に、まったく新しい次元を追加するものとなるだろう!」

新機軸の”Electronic Drift Brake”は、2024年夏に本国で発売予定の量産モデルにも搭載される
油圧式ハンドブレーキを高度な電子機器でエミュレートし、従来の機械式パーキングブレーキ・システムの3倍以上の制動力を備えるという
「ドライブするのが本当に楽しいクルマに仕上がったさ」と手応えを語ったヴォーン・ギッティンJr.

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