『中国から見た古琉球の世界』 三山時代から統一まで考察

<a href="http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4897421985/ryukyushimpo-22/ref=nosim/" name="amazletlink" target="_blank">中国から見た古琉球の世界

 本書は、2004年1月から10月にかけて、本紙に連載された「冊封使来琉600年」の著者執筆分を中心に、いくつかの新稿を加えて一冊にまとめあげたものである。考察の対象となっているのは1372年から琉球が中山・北山・南山という三山に分かれて抗争していたといわれる三山時代を経て、統一にいたるまでの約半世紀である。古琉球史を、その独自性、特殊性ではなく、アジア的、普遍的な視点から捉えようとしたとされる本書は、全体が7幕から構成されている。

 まず、第1幕「中国『五礼』と琉球の『三山』」では、明の永楽帝によって1404年に初めての冊封使として派遣された時中の役割に焦点が当てられている。第2幕「群雄割拠の山南の『王』たち」では、山南の王たちの、第3幕「王権発祥地ー山北の『王』たちの虚実」では山北の王たちの存在様相がそれぞれ追究されている。第4幕「統一を目指す王」では、再び南部の西の島尻大里(糸満市高嶺)と東の島添大里(南城市大里)という二つの「大里」について論及し、第5幕「拒否された琉球と思紹の登場」では明の永楽帝の招諭を受けて以後の、初期の入貢の様子が触れられている。第6幕「冊封システムへ貢献した琉球」では主として、明国から下賜された冠帯・冠服の問題に焦点が当てられ、最後の第7幕「漢籍記録にみる琉球」は、漢籍で琉球がどのように記述されてきたかについて紹介している。

 著者は中国大連外国語学院、北京外国語大学日本学研究センターなどで日本語を学んだ経歴の持ち主で、持ち前の語学力を生かして随所で新たな史料解釈を試みている。史料的に乏しいこの時代の研究に、あえて挑み続けてきた著者の気概に敬意をはらいたい。ただし、具体的な論点となると、読者には異論・反論も多くあるであろう。本書の刊行を契機に、三山時代に関する議論が大いに高まることを期待したい。

 (上原兼善・岡山大学名誉教授)

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 すぅん・うぇー 1962年、遼寧省瀋陽市生まれ。北京外国語大学終了後、琉球大学法学研究科、法政大学人文研究科博士課程などを経て、現在は中国天津工業大学外国語学部主任、教授。

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