創業105年クリーニング店も打撃「余裕全くない」 店舗ほぼ全焼の危機、乗り越えたが

スチームアイロンで衣類をふんわりと仕上げる近藤英司さん=ドライクリーニング大橋屋

 創業105年の老舗クリーニング店が相次ぐ物価高騰に苦しんでいる。「ドライクリーニング大橋屋」(横浜市西区)を営む近藤英司さん(43)は、石油やガス代の急激な値上げに直面し、「かなり打撃を受けている。余裕は全くない」と生活の苦しさを吐露する。

 穏やかな陽気に包まれた3月下旬。近藤さんは店頭に立ち、笑顔でお客さんを迎え入れていた。注文を聞いて衣服を受け取ると、ポケットの中身や生地の傷み具合を確認し、洗濯に乾燥、形を整えるプレス作業まで手際よく行う。衣替えの春と秋は忙しく、来客数は月に500人を超える。

 1918年に祖父信次郎さんが開業し、3代にわたり店を切り盛りしてきた。2018年には店内で火災が発生し、店舗がほぼ全焼。1年間の休業を余儀なくされたが、一緒に働く家族らと力を合わせて乗り越えた。この先には明るい未来があると信じて─。

 しかし、20年には新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げが3割以上落ちた。リモートワークの普及でワイシャツの注文枚数は半減し、冠婚葬祭の中止によってフォーマル衣装の依頼に至っては8割近く減った。家族の踏ん張りで「ぎりぎり耐えられた」が、今度は物価高の波が押し寄せてきた。

 原油の高騰が著しい。スーツやコートの洗浄に用いられるドライクリーニングでは、繁忙期だと1カ月に150リットルほど石油系溶剤を使い、石油が原料のハンガーは千本ほど消費する。

 昨年2月のロシアによるウクライナ侵攻で値上げはさらに加速。ガス代や電気代の値上がりが経営に暗い影を落とす。

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