元学徒隊員の遺志継ぐ 茨城・鹿嶋の鳥羽さん親子 平和を願い朗読劇

平和の大切さを訴える朗読劇を企画している鳥羽千津子さんと広樹さん親子=鹿嶋市宮中

太平洋戦争末期の沖縄戦で多くが犠牲となった白梅学徒隊の語り部を務めていた元隊員、中山きくさんの遺志を継ぎ、茨城県鹿嶋市宮中の鳥羽千津子さん(68)、広樹さん(45)親子が、平和の大切さを訴える朗読劇の開催を計画している。終戦記念日の8月15日に同市内で開催予定。2人は「沖縄戦を直接語れる人が減ってきている。多くの人と一緒に学ぶ機会にしたい」と話している。

■8月15日開催へ

中山さんは、沖縄県立第二高等女学校の生徒たちで結成された白梅学徒隊に所属し、野戦病院で負傷兵の手当てなどを行った。しかし、隊員46人のうち22人が命を落とした。戦後50年の1995年には、元白梅学徒隊の戦争体験をつづった記録集「平和への道しるべ」の発刊に尽力。これを契機に、語り部として修学旅行生らに平和の尊さを訴えてきた。

鳥羽さん親子と中山さんの交流は、市民団体「鹿嶋物語を語る会」の活動で、記録集を読み上げたことがきっかけ。2017年から文通を重ね、同年12月には、鳥羽さん親子が同県を訪問した。白梅の塔(同県糸満市)前では、広樹さんが、未来を絶たれた少女らを慰霊するため、同女学校の校歌を三線(さんしん)で奏で、祈りをささげた。それ以降も交流を続けてきたが、中山さんは今年1月中旬、病気のため、94歳で亡くなった。

鳥羽さん親子は「語る会」のメンバーとして「慰霊の日」(6月23日)に合わせて平和活動を続けていたが、メンバーの高齢化で活動が縮小してきたため、「2人でできることはないか」と朗読劇を企画した。

朗読劇の脚本は、中山さんの体験を中心に制作された絵本「白梅学徒隊 きくさんの沖縄戦」を基に千津子さんが執筆。脚本化については生前に許可を取っており、千津子さんは「出来上がったものを見てほしかった」と寂しがる。

朗読劇は2人のほかにも参加者を募っている。年齢、性別、居住地などは問わず、「平和を希求する考えに賛同してくれる方はどなたでもOK」と千津子さん。既に2人が加わり、今月から順次、月2回程度の練習を重ねて本番を迎える予定だ。

練習開始を前に、広樹さんは「沖縄に目が向く契機になればいいと考えている」、千津子さんは「天国のきくさんに届くように、そして、『いい劇だった』と言われるようなものにしていきたい」と意欲を見せている。

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