ハーケンクロイツのパイ ナチス式敬礼をする妊婦 異様な光景を捉えた「ソフト/クワイエット」予告

2023年5月19日より劇場公開される、全編をワンショットのリアルタイムで描くスリラー「ソフト/クワイエット」の、予告編映像が公開された。

予告編映像では、閑静な田舎町の森に囲まれた教会の談話室での、白人女性による会合のシーンから始まる。マイノリティーへの偏見を持つ白人女性たちの不穏な会話は、日頃の不満や過激な思想を共有することで徐々に白熱。ハーケンクロイツの描かれたパイやナチス式敬礼をする妊婦など、異様な光景も捉えられている。そして、二次会へ向かう途中に立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発し、ついには揉み合いから拷問へと発展していく。平凡な日常が惨劇に変わる様子が切り取られている。

「ソフト/クワイエット」は、アメリカで社会問題化しているヘイトクライム(憎悪犯罪)の狂気をえぐり出した作品。とある郊外の幼稚園に勤める教師エミリーが、白人至上主義のグループを結成する。第1回の会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、大いに盛り上がる。やがて彼女たちはエミリーの自宅で二次会を行うことに。だが、立ち寄った食料品店でアジア系姉妹との激しい口論が勃発。腹の虫が治まらないエミリーらは、いたずら半分で姉妹の家を荒らすことを計画する。

92分の全編をワンショットで映像化し、閑静な町のごく平凡な日常が地獄絵図へと変貌していく過程をリアルタイム進行で描き出したのは、長編デビューを飾った女性監督のベス・デ・アラウージョ。主人公エミリーの自尊心の高さと精神的なもろさを演じきったステファニー・エステスを始め、キャストはほぼ無名の俳優たちが務めている。

一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■内田樹(思想家・武道家)
ワンショット・リアルタイムのスリラーと言えば、ヒッチコックの『ロープ』が映画史に残る傑作だけれど、本作はそれに挑戦している。途中から加速する登場人物たちの暴走と救いのない精神崩壊は『ロープ』を凌駕している。

■瀬々敬久(映画監督)
黄昏の〈逢魔が時〉がリアルに過ぎる92分。暮れゆくワンカットの中、人々は狂気に陥り、魔物に出会ったと自ら信じ込む。それは「分断」の時代を生きる我々自身の姿だ。

■森達也(映画監督/作家)
これほどひどい映画はちょっと記憶にない。でも絶対にあなたは最後まで目を離せない。悔しい。すごい。悲しい。怖い。すべてが凝縮されている。この映画だからこその全編ワンショット。一人でも多くの人に観てほしい。

【作品情報】
ソフト/クワイエット
2023年5月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
配給:アルバトロス・フィルム
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