イラン国内からの批判を恐れ、予定の主演女優が降板したシーン 「聖地には蜘蛛が巣を張る」本編映像

2023年4月14日より劇場公開される、2022年第75回カンヌ国際映画祭でザーラ・アミール・エブラヒミが女優賞を受賞した、アリ・アッバシ監督最新作「聖地には蜘蛛が巣を張る」から、“スパイダー・キラー”による娼婦連続殺人事件の取材のため、明け方の聖地マシュハドを訪れたラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)が、ホテルでチェックインをするシーンの、本編映像が公開された。

ラヒミに対して、「このマシュハド出身?」と尊大な態度で尋ねるフロントの男。「そうよ」と答えるラヒミだが、男はすぐには部屋を案内せず、こそこそと支配人に「予約しているけど、未婚です」「どうします?1人です」と確認している。そして、「すみません、システムエラーのせいで今夜はすでに満室になっています」とラヒミの宿泊を断る。予約をしているラヒミは引き下がらず「まったく面倒ね。私はジャーナリスト」とIDを見せると、なぜか宿泊を認められる。部屋についたラヒミは、ヒジャブを取り、着替えを始める。

ラヒミを演じたザーラ・アミール・エブラヒミは、第三者による私的なセックステープの流出によってスキャンダルの被害者となり、2008年に国民的女優として成功を収めていたイランからフランスへの亡命を余儀なくされた過去を持つ。本作ではキャスティング・ディレクターを務めていたが、ラヒミ役に決まっていた女優がこのシーンが国内から批判を受けることを恐れて降板。ザーラ・アミール・エブラヒミがあらためてオーディションを受け、主演に抜擢されたという経緯があったという。

アリ・アッバシ監督は、ラヒミ役を演じたザーラについて「動画の流出によって私生活と仕事で味わった挫折感を自分の演技に取り入れてくれた」「私や制作陣以外で、この作品が誰のものかと聞かれたら、間違いなく彼女の作品だ」と賛辞を送っている。

また、ザーラ・アミール・エブラヒミの日本公開に向けたメッセージも公開された。「この映画は、イランの女性を描いた作品です。直視し難い作品ですが 一見の価値があります。本当に。それは私が保証します。時間をムダにさせません。素晴らしい映画体験ができるはずです。お願いします。 「楽しんでください」とは言えませんが、この作品をぜひとも心で感じて、しっかり見届けてください」と、メッセージを送っている。

「聖地には蜘蛛が巣を張る」は、2000年から2001年にかけてイランで実際に起こった、16人もの犠牲者を出した売春婦連続殺人事件から着想を得て作られた作品。監督を務めたのは、「ボーダー 二つの世界」などで知られる、イラン出身でデンマークやスウェーデンで活躍するアリ・アッバシ。主演の女性ジャーナリストを演じたザーラ・アミール・エブラヒミは、イランで活躍していたが、2008年フランスへ亡命した女優。その後はフランスの映像業界で活躍し、2017年にフランス国籍を取得後、意欲的に映画に出演している。

【作品情報】
聖地には蜘蛛が巣を張る
2023年4月14日(金) 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、TOHOシネマズシャンテ他全国順次公開
配給:ギャガ
©Profile Pictures / One Two Films

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