【福井県越前市】独創から共創へ。使い手とともに歩む「越前箪笥」

独創から共創へ。使い手とともに歩む「越前箪笥」

木を組み、漆を塗り、飾り金具をつくる。越前箪笥の3つの技すべてをこなす職人は、今では数えるほどしかいない。そのひとりが小柳箪笥(おやなぎたんす)の4代目・小柳範和さんだ。

1907年(明治40年)に創業した小柳箪笥は、初代が旦那衆の指物、2代目が嫁入り道具の桐箪笥、3代目は建具や家具を得意とした。

「それぞれが時代に即したものづくりをしていますが、共通しているのは“あつらえる”こと。使い手のために魂を込める姿勢は一貫しているんです」

小柳さんは伝統の技を継承しつつも、クリエイティブなものづくりを目指しており、木製の雑貨から家具まで幅広く手がける。根底には芸事の進化の思想をあらわす「守破離」の精神があり、先人の技術の結晶である型をいかにイノベーションしていくかという、型破りの追求がある。

それは使い手との関わりにもあらわれている。小柳さんは自身のものづくりに「共創」という新たなテーマを掲げる。職人に注文して完成を待つという従来型のオーダーではなく、産地に足を運んで木を選び、実際の作業にも参加してもらうスタイルを提案。思い出づくりが家族の絆をつくり、箪笥が宝物として受け継がれていく物語を形にしたいのだという。

「子どもがイタズラした跡が残ったりしながら、箪笥がどんどんいい顔になっていって、『ひいおじいちゃんの箪笥だよ』って伝えられていく。そんなストーリーを思い描きながら、使い手のためにできることを一生懸命にやっていきたいんです」

越前箪笥の精巧な指物の技も吉兆をあらわす金具の細工も、家や人を守る願いから生まれ、磨かれ、高められてきたものだ。「箪笥って、ただものを入れる箱じゃない」と語る小柳さんの言葉は、この地で箪笥をつくり続けた先人たちの想いそのもののように感じた。

「新しくあつらえるものには未来を見てほしい。だからこそ時間というベクトルをどれだけ長く残せるかを常に考えています」

使い手と箪笥を結ぶストーリーを大切にしたものづくりのあり方は、職人や産地、担い手を含めた人との関わりをより深め、新しい縁を紡いでいくだろう。

https://oyanagi-tansu.jp/

© 株式会社MATCHA