【福井県越前市】越前打刃物の「柄」と漆器の「蒔絵」が融合した新しい工芸のかたち

越前市が誇る伝統工芸の一つ「越前打刃物」。700年ほどの歴史があり、鋳造技術や職人の手研ぎの技術が高く評価されたことで、全国で刃物としては初めての伝統工芸品に指定された。刃物は持ち手である柄に挿げることによって初めてその価値が生まれる。1912年創業の山謙木工所は、お椀の木地製作からスタートし、2代目の時にこの地域で生産される鎌の柄をつくるようになった。しかし、戦後機械化が進んだことで鎌の需要は減り、鎌の柄より少ない材料でできる「包丁の柄」をつくりはじめることに。3代目の時には二重構造の柄を開発して特許を取得し、仕上がりの良さと多様な柄のバリエーションの実現。耐久性や抗菌性があるもの、黒檀や紫檀といった高級材を使ったものなど、県内唯一の「柄」に特化した工房としてさまざまな種類の柄を生み出している。

そんな山謙木工所が2020年9月にオープンしたのが、ギャラリー&ショップ「柄と繪(えとえ)」。山謙木工所がつくる包丁の「柄」に、越前漆器を彩る伝統技術「蒔絵(繪)」を施した一品ものの包丁やアクセサリー、小物の限定商品などを取り揃えている。

運営するのは山謙木工所4代目の山本卓哉さんとパートナーの山本由麻さん。卓哉さんはこの道20年以上の柄のプロフェッショナル。大学時代に漆芸を専攻していた由麻さんは、漆器産地である鯖江市河和田地区で゙蒔絵や塗師としての修行を積み、結婚をきっかけに山謙木工所に入社した。

越前打刃物の周辺には越前漆器、越前和紙、越前箪笥などさまざまな伝統工芸が息づいているが、これまではそれぞれの産地が独自に技術を磨いてきた。そのようななかで、伝統工芸x伝統工芸が融合した「柄と繪」は、新しい産地のあり方を示していると注目されている。

ギャラリーでは産地の刃物職人によるさまざまな種類と柄の組み合わせが堪能できるほか、不定期で蒔絵や包丁研ぎのワークショップも開催。「柄と繪」を通して、これまでにはない伝統工芸の表現の可能性を感じてほしい。

https://www.yamaken-japan.com/

© 株式会社MATCHA