開幕勝者ヘイデン・パッドンが「予定変更」で第2戦へ。マッズ・オストベルグも「大歓迎」/ERC

 今季で創設70周年を迎えた2023年ERCヨーロッパ・ラリー選手権の第2戦を前に、開幕の『ラリー・セラ・デ・ファフェ・フェルゲイラス』で自身とヒョンデにERC初優勝をもたらしたヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 Nラリー2)が「チャンピオンシップ・タイトル挑戦への意図を強調」すべく、年間参戦計画を変更。急きょ5月4~6日にグラン・カナリア諸島で争われる『ラリー・イソラス・カナリアス』への出場を表明した。

 最終ステージで劇的な逆転勝利を収めたニュージーランド出身のパッドンだが、当初は2023年の年間スケジュールにフルターマック・ラリーのカナリア戦を組み込んでいなかった。

 というのも、ERCのポイント規定では年間の参戦バジェットを軽減する施策のひとつとして、全8戦のうち1戦を除くすべてのスコアをカウントできる(ベスト7戦方式)ため、各ドライバーにはどのイベントを“スキップするか”の選択肢が与えられている。

 しかし35歳の“Kiwi(ニュージーランド人)”が説明したように、今季ERCフル参戦の目標を高く掲げる男にとって、ERCのランキングで暫定首位に立っている状況も踏まえ「第2戦を欠場するという選択肢は採れなかった」と説明した。

「ポルトガルの後、僕らはチームと会い、チャンピオンシップの戦いをもっとも強化する選択肢について話し合った。当初、カナリアスを『ドロップ・ラウンド』として計画していたが、それにはシーズンが早すぎるとの判断で合意したんだ」と、今季は自身が運営するパッドン・ラリー・スポーツ(PRS)をベースに、イタリアの名門BRCレーシングチームとのジョイントチームで参戦するパッドン。

「僕が見た限りでは、ラリー・イソラス・カナリアスは美しいラリーのようで、その会場に向かうのが待ち切れないね」

「僕もターマック(舗装路)でこの新型ヒョンデi20 Nラリー2をまだ走らせていないから、準備を整えるためBRCと一緒に(今週末、イタリアで開催される)ラリー・ディ・アルバ(イタリア国内選手権第2戦)に出場する。それが完璧なテストラリーになるだろうね」

 そう語ったパッドンだが、今回のテストラリーやERCでのタイトル獲得に向け、こうした柔軟な対応が可能な状況も優位に働くとして、改めて「チームには本当に感謝している」との謝意を述べた。

「ポルトガルでのように、ワールドクラスのチームと協力するだけでなく、これらの追加イベントやシーズンの計画で協力する方法は、ERCを勝ち獲ろうとするうえで最高のチャンスを与えてくれるんだ!」

 そのパッドンの言葉を受け、BRC代表のガブリエレ・リッツォも「ファフェでの成功が、シーズンへの我々のコミットメントを後押しした。これらふたつの素晴らしいイベントに、ヘイデンの参加を確認できてうれしく思う」と応じた。

ERCのランキングで暫定首位に立っている状況も踏まえ「第2戦を欠場するという選択肢は採れなかった」と説明したヘイデン・パッドン(ヒョンデi20 N Rally2)
初ターマックに向け、BRCと一緒にラリー・ディ・アルバ(現Rally Regione Piemonte/イタリア国内選手権第2戦)に出場する
「ERCを勝ち獲ろうとする上で最高のチャンスを与えてくれるんだ!」と、BRCとの共闘体制の成果を語ったパッドン

■オストベルグもラリー・ディ・アルバに出場しERCカナリアスに備える

「まずはパートナーであるピレリのサポートに感謝したい。アルバは我々のホームラリーであり、過去数年間ですでに優勝を経験しているイベントだ。これは素晴らしいラリーであり、来年のFIA ERCで見られることを本当に楽しみにしているよ」と続けたリッツォ代表。

「このラリーは挑戦的なステージのある素晴らしい場所で、情熱的な人々によってうまく組織されている。チームとヘイデンの両方のために、カナリアスの前にヒョンデi20 Nラリー2でターマックでのマイレージを構築するべく、特別な準備なしでアプローチするつもりだ」

 そのパッドンとはWRC世界ラリー選手権でも研鑽を積んだ好敵手、マッズ・オストベルグ(シトロエンC3 ラリー2)も「ヘイデンもカナリアスにいるのは、素晴らしいことだ」と、ライバル関係の再開を歓迎する言葉を残した。

「どのラリーでも勝てる選手は5人か6人で、ヘイデンもそのうちのひとりだと確信している。当然、ビッグファイトになると思うが、カナリア諸島に戻れることを本当に喜んでいるよ。すべてのラリーと同様に、僕らは勝つためにそこにいる。それが第2戦での目標でもあるんだ」

 昨季ERC初タイトルを獲得したエフレン・ヤレーナ(シュコダ・ファビアRSラリー2)擁するチームMRFタイヤは今季、“ディーラーチーム”をサテライト的に展開し、パッドンもオストベルグも、そのチャンピオンタイヤを装着してフルターマック戦に挑む。とくにオストベルグは、同ラリーへのデビューとなった2016年にはリードを奪いながらSS7でクラッシュを喫し、勝利を逃した経験もある。

「過去にラリーに参加したこともあるし、休暇で何度も訪れた島でもあるから、個人的に島との強いつながりを感じてラリーを楽しんでいる」と語った35歳の元WRC2チャンピオン。

「戻ってくるのは素晴らしいことだ。ステージは本当に素晴らしく、要求が厳しく、速い部分もある技術的なもの。間違いなく大きな挑戦になるね」

 その7年前のイベントに先立って行われたインタビューでは、当時のRMCモータースポーツが運営するフォード・フィエスタR5のステアリングを握る機会が、どのように与えられたかについてのエピソードも披露していた。

「信じられないかもしれないが、それはInstagram(インスタグラム)に投稿した写真からだったんだ!」と明かしたオストベルグ。

「僕は(2015年の)復活祭の頃にカナリア諸島で休暇を過ごしていた。ホテルの写真をインスタグラムに投稿し、島がどれだけ好きかを伝えたんだ。そこでホテルの支配人が僕にコンタクトし、この島の関係者たちを紹介してくれた。僕らは話し合い、最終的にRMCモータースポーツと契約を結ぶことができ、ラリーに参加することができた。これは素晴らしい出会いさ」

 そのオストベルグもこの週末にイタリアへ飛び、パッドンとともにアスファルトでのウォームアップを行い、お互いに対戦する別の機会を得る。「良い準備ができて、ターマックでマシンとタイヤのフィーリングが良くなることを願っているよ」

開幕戦でも初日から優勝戦戦に絡んだマッズ・オストベルグ(シトロエンC3 Rally2)は、惜しくも2位に終わっていた
「ヘイデンもカナリアスにいるのは、素晴らしいことだ」と、オストベルグもライバル関係の再開を歓迎する言葉を残した
2016年の『Rally Islas Canarias』への出場時にあったエピソードも明かした

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