“地球型惑星“内部の貯水量は惑星のサイズが左右する? 予測モデルを開発

【▲地球(右端)と地球に似た系外惑星の想像図(Credit: NASA)】

地球以外のどこかに生命が存在する可能性を探るために、科学者はこれまで地表に液体の水が存在する惑星を探してきました。しかし、岩石惑星(地球型惑星)に存在する水の多くは、地表の海や川のような場所を流れているのではなく、惑星内部の深いところにある岩石の中に閉じ込められていることがあります。

このたびケンブリッジ大学の科学者たちは、岩石惑星の内部に存在する水が豊富な鉱物の割合を予測できるモデルを開発しました。この鉱物は「ワズレアイト(wadsleyite)」「リングウッダイト(ringwoodite)」と呼ばれる青緑色の鉱物で、スポンジのような働きをして水を吸収します。

今回の新しいモデルでは、惑星の大きさと主星(恒星)の化学的性質に基づいて、惑星内部の水の貯蔵量を計算します。研究チームは、惑星が保持できる水の量を決定する上で、惑星のサイズが重要な役割を果たすことを発見しました。水を貯留する鉱物の割合は、惑星の大きさに左右されるからです。

惑星内部の水のほとんどは、地殻の真下にある上部マントルと呼ばれる岩石層に含まれています。この層では、ワズレアイトとリングウッダイトが形成されるために最適な圧力と温度の条件が整っているといいます。また、この岩石層は火山にも近く、噴火によって水を地表に戻すことができます。

今回の研究では、地球と比べてサイズが2~3倍大きい惑星では、水の豊富な上部マントルの割合が惑星の全質量に対して小さいため、一般に水の貯蔵量が少ない乾燥した岩石層を持っていることがわかりました。

この研究結果は、惑星が誕生した初期に激しい熱や放射線にさらされた後、その惑星がどのようにして居住可能な状態に移行したのかを理解する上で役立つ可能性があります。

天の川銀河で最も一般的な恒星である赤色矮星(M型星)を周回する惑星は、地球外生命を探すのに最も適した場所の一つと考えられています。しかし、この恒星は活発な「青春時代」(「主系列星」の時代)を迎えると強烈な放射線を放ち、近くの惑星表面を焼き払う可能性があります。影響を受けた惑星が温室効果の暴走にさらされると、気候は混乱に陥ります。

本研究では、主星である恒星の明るさが青春時代を経て成熟し暗くなると、惑星内部に吸収されていた水が循環することで、表面に水を補給する有効な方法となる可能性が示されています。この水は火山活動によって惑星の表面に運ばれ、生命を育む他の元素とともに、水蒸気として徐々に大気中に放出された可能性が高いといいます。

また、今回の結果は、生命を宿す可能性のある系外惑星を探索する上での指標となるかもしれません。

論文の主執筆者であるクレア・ギモンド(Claire Guimond)氏は「おそらく、地球よりも著しく巨大な惑星や極端に小さな惑星には、地表に液体の水は期待できない」と述べています。

この発見はまた、金星のような身近な惑星を含めて、不毛で地獄のような惑星が青い大理石のような惑星へと移行する仕組みについての理解を深めるのに役立つ可能性もあります。

論文の共著者であるオリバー・ショートル(Oliver Shorttle)氏は「地球とよく似たサイズの金星は表面温度が450℃前後で、二酸化炭素を主成分とする大気を持っています。過去の金星の表面に液体の水があったかどうかは未解決ですが、灼熱の太陽の周りで生まれた金星が、自らを冷却して表面に水を取り戻すために内部の水を利用した可能性があります」と指摘しています。

本研究成果は2023年1月20日付けで「王立天文学会月報(Monthly Notices of the Royal Astronomical Society)」に掲載されました。

Source

文/吉田哲郎

© 株式会社sorae