<社説>外国人技能実習 人権守る新制度創設せよ

 悪質な労働問題や人権侵害を招くような制度を放置してはならない。日本で働く外国人の人権を保護する新制度創設が求められる。 外国人の技能実習・特定技能両制度の見直しを検討する政府有識者会議は、技能実習を廃止し、新制度の創設を提案する中間報告書のたたき台を示した。新制度の目的に「人材確保」を盛り込み、外国人を「労働力」として扱うことを明記する。

 技能実習制度に関して、外国人実習生に対する賃金未払いや暴行などの人権侵害が問題となっている。秋ごろに出る最終報告を踏まえ、政府は制度設計に取り組む。現行制度の欠陥を徹底的に改め、外国人労働者の人権を守る制度にしてほしい。

 技能実習制度は1993年、発展途上国への技術移転や人材育成を目的に始まった。ところが人材不足を補う手段として技能実習制度は機能してきた。「国際貢献」という建前と、「安価な労働力」として実習生を扱う実態との間に乖離(かいり)が生まれた。

 現行の制度では実習生の受け入れ先の転籍や家族帯同は原則として認められていない。日本に渡航するため多額の借金を背負った実習生は、勤務先の企業に縛られ、賃金未払いや長時間残業などの労働問題に巻き込まれた。

 暴行を振るわれたり、妊娠を伝えると退職を迫られたりするなどの人権侵害も起きている。耐えきれず職場から失踪する実習生は2021年に7千人を数えた。これでは「労働奴隷」である。

 技能実習制度はかねてから問題視されてきた。日弁連は2022年4月の意見書で「制度の構造が悪質な人権侵害の温床となっている実態がある」と指摘し、技能実習制度の廃止を求めた。古川禎久法相(当時)は昨年7月に制度見直しを表明した。高まる批判に対応せざるを得なかったというのが実情だろう。

 たたき台に対しては既に「看板のかけ替えに過ぎない」という批判が出ている。実習生を受け入れる枠組みは維持されているからだ。新制度でも、実習生を仲介し、受け入れ先の企業を監督する役割を担うのは大臣許可の「監理団体」である。それが十分に機能せず、不適切な就労を防げなかったという実態が指摘されている。

 たたき台は人権侵害を防げない「監理団体」、悪質な送り出し機関やブローカーの排除策が必要だとしている。しかし、受け入れ枠組みを維持したままで、どれほどの対応が可能なのか疑問だ。必要に応じて国が主体となって実習生受け入れや語学指導などに関与するなど、外国人の就労を支援すべきだ。

 日本の人材不足を補うため、外国人の労働力に頼ることは時代の趨勢(すうせい)である。その前提として日本で働く外国人の人権問題に対処する体制が必要だ。小手先の制度改革で済ませてはならない。

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