豪雨被災、天瀬町の旅館「本陣」5月から営業再開 より愛犬家が喜ぶ施設に【大分県】

5月に営業を再開する新しい「本陣」の建物と大庭正徳さん=日田市天瀬町
ドッグガーデンを整備予定の屋上。「クラウドファンディングで整備費を募っています」と大庭さん
愛犬と一緒に泊まれる専用浴槽やキッチンを備えた客室

 【日田】2020年7月豪雨で浸水被害に遭い、休業中の日田市天瀬町の老舗旅館「本陣」が、5月1日に営業を再開する。大規模半壊した玖珠川沿いの建物を約1.2メートルかさ上げし、建て替えた。愛犬家を主なターゲットに誰もが立ち寄れる「川の駅」として共用スペースも整備し、天ケ瀬温泉街の復興・活性化に貢献したい考え。

 本陣は1910年創業で天ケ瀬温泉街を代表する旅館の一つ。映画「男はつらいよ」の「寅次郎の休日」にも登場した。近年は愛犬と宿泊できる宿を売りにしていたが、豪雨で1階のフロントや厨房が浸水するなど大きな被害が出て、営業ができなくなった。

 新型コロナウイルス禍で観光業に逆風が吹く中、4代目社長の大庭正徳さん(37)は「もう潮時か」と悩んだものの、利用者らの励ましに後押しされて再開を決断した。

 2億円以上をかけて建て替え。被災前10室だった客室は5室にし、室内温泉や犬用浴槽、防水ベッドや防音設備などを整えた。犬用シャンプーやドライヤーといったアメニティーも充実し、休業前より愛犬家が喜ぶ施設にした。

 屋上には共用スペースとしてドッグガーデンを設ける。屋外の階段を使い、宿泊客以外も利用できるようにする。「天ケ瀬温泉を訪れた全ての愛犬家が気軽に立ち寄り、周辺ののどかな自然を満喫する拠点にしたい」と大庭さん。

 資材が高騰しているため、共用スペースの整備費はクラウドファンディング(CF、目標額530万円)で調達する。支援額に応じた整備を予定し、特別なドッグフードや宿泊先行予約券などの返礼品を用意している。

 宿泊料は1泊2食付きで1人3万円前後、犬は1匹6千円。

 大庭さんは「住民は川の恵みを受けてきた。目指す『川の駅』に大勢の方に訪れてもらい、地域のにぎわいを取り戻したい」と話している。

 CFはサイト「レディーフォー」で今月20日まで募集中。「HONJIN」で検索できる。問い合わせは本陣(0973.57.2317)。

<メモ>

 2020年7月豪雨で、天ケ瀬温泉街は宿泊施設15軒のうち、11軒が浸水被害に遭った。業態変更や廃業した施設があるほか、本陣以外に1軒が営業再開を予定している。

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