<南風>コミュニケーション能力

 最近、メタ認知という言葉を読者の皆さんも目にする機会が増えているのではなかろうか。メタ認知とは、自分の認知を俯瞰(ふかん)し客観的に捉えることである。

 言葉で書くと簡単だが、意外と難しい。例えば、職場に出勤した際、誰かにあいさつをしたが返事がなく、ムッとした。その時「ああ、自分はあいさつというものを大切にしていて、それに対してレスポンスがないと嫌だと思うタイプの人間なんだな。それとも、自分が普通だと思うことが、相手が普通だと思っていないことに関して、自分の普通という価値観を押し付けたいと思っているのかも知れない…奥深い!」と思う状態である。これを一日中やっていると仙人ランクへグレードアップ確定である。

 メタ認知が高い人はコミュニケーション能力が高いという見方があるが、私はそれだけだとは思わない。もちろん、それも大切ではあるが、似たようなもので他者視点というものがある。これは、相手がどのように思うだろう? という、自分の認知ではなく可能な限り相手の捉え方を理解しようとする力である。

 今回、この内容でコラムを書こうと思ったきっかけは、3月18日掲載「南風」の玉城伸悟氏の「そつえんするきみへ」を読んだせいだ。誰に読んでほしいのか、どストレートに伝わってきた。他の誰でもない「きみ」へ伝えたかったのだろう。全文「ひらがな」で書かれていた。それだけではなく単語や言葉遣いなども園児の理解力も考慮して執筆されているのが推察される。心温まる優しく、すてきなコラムであった。

 邪推だが「え~全文平仮名ですか? せめて簡単な漢字かカタカナとかは使えませんか?」「いや、平仮名しか書かん!」というやり取りが担当の方とあったのか、感動的な内容にもかかわらず、そこが気になっている自分がいる。

(神谷牧人、アソシア代表)

© 株式会社琉球新報社