米国で初めてリジェネラティブ・オーガニック認証を取得した国産米が発売へ

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米カリフォルニアで4世代にわたってコメやコメ菓子を製造・販売するランドバーグ・ファミリー・ファームズは4月から、米国で初めて国産のリジェネラティブ・オーガニック認証(環境再生型有機農業認証)米の販売を始める。同社は早くから有機農業に着手し、現在では総収量の約75%をUSDA(米国農務省)オーガニック認証製品が占める。(翻訳・編集=小松はるか)

ランドバーグ・ファミリー・ファームズは全米の自然食品店でよく見かける有名ブランドの一つだ。同社の規模を考えると、4月から米国産のリジェネラティブ・オーガニック認証米の販売を開始するという発表は、これまで確固たる基準がなかった米国の農業部門に重要な節目が訪れたことを意味する。

REGENERATIVE ORGANIC WHITE BASMATI RICE

最初に販売するコメはインディカ米の一種であるバスマティ米。1袋32オンス(907グラム)のバスマティ米の白米は、米国の農業に確固たるリジェネラティブな基準をもたらすものだ。

同認証を管理するリジェネラティブ・オーガニック・アライアンス(ROA)の事務局長のエリザベス・ウィットロー氏は「ランドバーグ社は常にROAと協力し、向上・前進をしてきました」と話す。ROAはアウトドアブランドのパタゴニアなどが設立に携わった組織だ。

ウィットロー氏によると、昨年だけで5つの新たなリジェネラティブ認証が誕生したという。しかし、リジェネラティブ・オーガニック認証も勢力を拡大しており、昨年には米国で、直近では欧州で商標を取得し、日本でも近々取得する見込みだ。

ランドバーグ社は2027年までに全ての有機栽培作物をリジェネラティブ・オーガニック認証製品にする計画で、新製品の発売は同社にとって最初の一歩を踏み出したに過ぎない。

コラボレーションから誕生した認証米

今回の米国産リジェネラティブ・オーガニック認証米は、ランドバーグとROAのほかに、自然食品やオーガニック食品を販売するスーパーマーケット「ホールフーズ・マーケット」(以下、ホールフーズ)との連携により実現した。

ホールフーズでは、店舗で販売する「リジェネラティブ」と謳う全ての製品に対し、リジェネラティブ・オーガニック認証か米セイボリー研究所のランドトゥマーケット(Land to Market)認証を取得することを求めている。目指しているのは、消費者がリジェネラティブな製品を探すときに、棚に並ぶ商品を通じてリジェネラティブ農業について何らかの知識を得てもらうことだ。

ホールフーズの食品部門の責任者であるアナマリア・フリーデ氏は「ホールフーズにとって環境は常に重要なステークホルダーです。そして、リジェネラティブな農業慣行が消費者にとってますます重要になっていることを当社は認識しています。ROAは、ホールフーズが農業の重要な潮流の中で定期的に関わりを持っている認証機関の1つです」と語る。

ホールフーズは、協業の詳細についての言及は避けたが、ランドバーグ社の最高成長責任者(Chief Growth Officer)であるスザンヌ・センゲルマン氏と取締役のブライス・ランドバーグ氏は、大手食料品店のサポートなくして同社の製品が市場に投入されることは起こり得ないことだっただろうと話している。バスマティ米の白米はランドバーグ社の人気商品の一つ。「この商品はホールフーズと共に生み出したものです」とランドバーグ氏は言う。

コメの栽培に適した認証基準を共につくる

3社の協働のきっかけは1年前に遡る。ランドバーグ氏がROAの役員だった従兄弟のグラント氏に連絡をとったことからだ。ランドバーグ氏によると、ランドバーグ・ファミリー・ファームは、リジェネラティブ・オーガニック認証の掲げる基準がコメを栽培することを考えると厳格だったため、いくらか懸念があったと話す。

「この基準は農家や環境活動家、消費者保護団体が集まって定めたものですが、そこにコメ農家は含まれていませんでした。そこで、私たちはROAと当社の参画について、そして土壌改良や動物福祉、フェアトレード(農家や連携する人たちに配慮すること)といったROAの柱となる考え方について話し合いを始めたのです。コメとほかの作物では栽培方法が異なるため、土壌改良から話し合いました」(ランドバーグ氏)

ランドバーグ氏が言うように、稲は、地表から3フィート(約91cm)下にある硬盤層の地盤材料に支えられた粘土成分を多く含む土壌で育つ水生植物だ。コメの栽培には大量の水が必要で、米国の農業の中でも非常に手間のかかる特殊な作物とみなされている。話し合いを重ねたことで、同社にはリジェネラティブ・オーガニック認証米を生産する明確な道筋が見えてきた。そのため、ROAと共にコメの恒久的な基準を制定し、認証取得に向けて取り組みを始めた。

ランドバーグ・ファミリー・ファームは認証を取得している有機米の割合が非常に高い。そのため、同社にとってオーガニック認証の取得が前提となるリジェネラティブ・オーガニック認証取得への道筋は困難なものではない。

同社のセンゲルマン氏は、「リジェネラティブ・オーガニック認証の基準を満たせる製品は5割近くあります。2023年の栽培により、2024年には当社が掲げる目標達成に向けて大きく前進するでしょう」と話す。

ランドバーグ氏によると、リジェネラティブ・オーガニック認証製品の最初の生産量は約1500エイカー(約607ヘクタール)相当となる計画だ。なお、同社の昨年の総栽培面積は1万5000エイカー(約6070ヘクタール)だった。2023年は、リジェネラティブ・オーガニック認証米の栽培面積が4000エイカー(約1618ヘクタール)以上になると見込んでいる。「一定の基準を満たすために、出荷できないリジェネラティブ・オーガニック認証米も多くあります」とランドバーク氏は付け加えた。[^undefined]

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