北海道観光 朝食バトルにインバウンドも復調!?現状は

今回の特集は北海道の観光業。コロナ禍でこの約3年間は苦しめられたが、北海道にとっては欠かせない基幹産業のひとつ。北海道観光振興機構がまとめた総観光消費額を見ると、2021年度は5350億円で、コロナ前から6割以上落ち込んでしまっている。

そんな中、ようやく復調の兆しもある。どのような状況にあるのか複数の事例を取り上げる。

【登別には訪日外国人の姿が】

北海道の人気観光地、登別。ここに先月、ある外国人観光客の姿が。

左:李さん(香港から)右:陳さん(台湾から)

北海道旅行は2回目だという李さん(香港から)と北海道は初めてという陳さん(台湾から)。2人は、ある共通のものをきっかけに登別へと足を運んだ。それは、「登別BOX」。

登別市と旅行業大手のJTBがタッグを組んで作ったセット商品で、地元の特産品が中心だ。ターゲットは、北海道人気の高い香港と台湾。アフターコロナを見据え、外国人観光客が徐々に戻ってきた去年10月に企画を立ち上げ、12月からJTBの越境ECサイトで販売をスタート。用意した2200個は2月末までに完売した。

地元企業や高校生にも協力してもらい、この登別ボックスによる経済効果は1500万円ほどにも。SNSでの情報発信も期待できるという。

李さんと陳さんたちは、まず地獄谷を散策。鬼の像巡りや閻魔堂の見学を、日が落ちるまで楽しんだ。そして、本日の宿へと到着。和室を楽しみにしていたという。

和室に満足げな陳さん

スタジオにはJTB北海道広域代表の阿部晃士さんを招いて話を聞いた。

阿部さんは観光の現状について「爆買いなど、コロナ前に起こっていたことが再び起きている。日本の商品は土産の種類も多く、商品のクオリティーが高い」と話す。アフターコロナの観光の傾向としては「モノ消費よりコト消費に移行している。さらに、“トキ消費”つまり滞在時間でどれだけ満足を得られるか。それから“ヒト消費”、『この人がいるからこの町に行ってみたい』というようなニーズの変化が起きている」と話す。

【函館で“朝食バトル”再燃!?海鮮丼にウナギも】

先月下旬の函館。ここも、北海道内外からの観光客が多く訪れるようになった。そんな観光地函館の数ある人気スポットの中で、今、再び熱を帯びてきているのが、朝食バイキング。

旅行予約サイトがきっかけで人気に火がついた、函館の朝食ビュッフェ。豪華な朝食で観光客を呼び込むホテル間の競争、いわゆる「函館朝食バトル」がコロナを経た今、再び激しさを増しているのだ。

函館国際ホテルの朝食ビュッフェでは、新鮮な魚介が並んでいる。ほかにも、地元食材を使ったタラ汁やスープカレー、洋食、中華まで豊富なメニューがずらり。常時120種類もの料理が並んでいるという。

ステーキやオムレツをその場で調理するライブキッチンも。

観光客は、オープン前から並び始め、あっという間に行列が。かつては函館観光の朝食といえば、朝市に繰り出して食べるのが定番だったのだが、函館国際ホテルやラビスタ函館ベイなど人気のホテルが2014年ごろから相次ぎ、朝食を豪華にする取り組みをスタート。結果、ホテルの朝食が観光の目玉となった。

函館国際ホテルはコロナ禍で宿泊者数が半減。ゆえに、その落ち込みを朝食で取り戻そうと力を入れている。過熱する競争の中で優位に立とうと、新たなスタイルの朝食も用意した。コロナ後に増えてきた、朝食ビュッフェとは雰囲気の異なる落ち着いた場で食事をしたいという要望を受け、御膳での朝食を用意。ひつまぶしや海鮮丼を用意する。今では宿泊客の2割ほどが利用しているという。

【町まるごとホテルに 民泊で泊まるのは町長の自宅!?】

人口約9000人、十勝平野の西側に位置する清水町。年間約16万人訪れていた観光客は、コロナ後に5万人まで減少。そして、訪れる人の大半が町内には泊まらず、帯広や近隣の宿泊施設へと流れてしまっていた。

そこで活用しようと考えたのが、民泊。町内の民泊施設の一つを見せてもらった。実はこの建物、町長の自宅だ。

清水町は去年、仲介事業者と連携し町内の個人宅や移住体験できる住宅を民泊として登録する取り組みをスタートした。現在民泊として登録されているのは13軒。50軒の登録を目指しているという。

町長の許可さえあれば、役場職員も民泊を営むことができる。気になる、一泊のお値段は、町長宅は夕食と土産付きで9100円。課長宅は「し・み・ず」にかけて4320円とのこと。こちらも夕食代込みだ。

清水町の高橋さんは「移住体験住宅を利用するのは60代以上が多かったが、民泊のサイトを活用することで若者の利用も増えた」と話す。昨年度は46組が利用した。

埼玉出身で1カ月ほど体験住宅を利用している男性は「1カ月間車なしの生活をしている。コンパクトな町で生活しやすい」と話す。

キッチンカーで飲み物を販売するこちらの女性は、島根県から移住しことしで7年目。「子どもも生まれて、子育て支援がすごく手厚い町なので、子どもを育てやすい町」と話す。町長は「こうした取り組みが起爆剤となり、定住人口が増えるといい」と話す。

コロナ禍で変わる、観光のニーズ。受け入れ側もしっかりと戦略を立てることが必要なようだ。
(2023年4月15日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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