地方議会って役立つ?~地方議会・自治体主導で進む『性の多様性の尊重』~(オフィス・シュンキ)

地方議会・議員が目に見えて役に立っていると分かるのは、国がなかなか動かないことが「わが街」では実現しているのを目の当たりにするときでしょう。

国の法整備が進まない中、近年、目に見えて「地方議会・地方自治体」主導で進んでいるのが、「性の多様性の尊重」に関することです。その根幹となるのは「(同性)パートナーシップ制度」と「LGBTなど性的少数者への差別禁止」となるのですが、議会の議決によって制定される条例、あるいは行政機関内部における内規となる要綱によって、性の多様性を尊重した制度を導入している自治体は今年になっても増え続けています。

「パートナーシップ制度」って何?

「パートナーシップ制度」とは、簡単にいうと、各自治体が異性同士でないカップルに婚姻に相当する関係と認め証明書を発行するなどの制度です。2015年11月に東京都の渋谷区が「条例」で、世田谷区が「要綱」で、それぞれが同時に導入したのが国内では最初です。以降、性的マイノリティの婚姻に準ずる公的な証明制度の存在、必要性が注目されるようになったのです。

渋谷区と世田谷区の制度導入が話題になって以後、各自治体での動きが活発化、2017年6月には政令指定都市として初めて札幌市が要綱として施行するなどし、2022年には年間だけで108自治体が導入、現在、全国で250以上の自治体に広がりをみせています。

2021年6月から施行となった京都府長岡京市で、議会の副議長を務める小原明大(おはら・あきひろ)氏に話を聞いてみました。小原さんは、すでに議員在職中だった2017年12月、本議会の一般質問の中で、LGBTの当事者(同性愛者)であることを公表しています。

この年(2017年)に、『LGBT自治体議員連盟』ができて、僕も乗り遅れないように、というか公表しないと、という気持ちになっていました」と小原さんはいいます。

日本で初めて同性愛を公表して同じ2011年の統一地方選挙で東京都区議に選出された中野区の石坂わたる氏、豊島区の石川大我氏(石川氏は、現・参議院議員)、トランスジェンダー女性議員として、自治体での日本初「パートナーシップ制度」導入に尽力した東京都世田谷区・区議の上川あや氏、日本ではじめてトランスジェンダーの男性議員となった埼玉県入間市議の細田智也氏、設立発表の日に同性愛者であることを公表した東京都文京区・区議だった前田邦博氏と、すでに議会などでこの問題に向き合っていた性の多様性を代表するような議員5人が世話人、また全国から78人の地方議員が参加して「LGBT自治体議員連盟」は、2017年7月に発足されています。小原さんも、その発足会に参加されたひとりでした。

「公表してからも、パートナーシップ制度導入に好意的でない意見は議会でほとんど聞かれなかったです。」と小原さん。翌年、ほかの議員の働きかけで、議会の全会派が参加する「性の多様性」分科会ができ、自治体内での「パートナーシップ制度」導入の筋道ができました。長岡京市はこれらの動きに基づき、2年前に要綱で「パートナーシップ宣誓制度」を施行しています。

その上で、同様の制度を試行している京都市、亀岡市、福知山市、向日市との都市間連携も実施しており、京都府内で制度を実施している5都市のどこに在住していてもたとえば「市営住宅にパートナーと住みたい」などの望みを、制度を活用して実現できるようにするなど利便性は高まっています。

しかし、小原さんは「根本的には(国が)同性婚を認めないと解決しないと思っています」といいます。同性婚に向けた議論を国が進め、法整備に手を付けるよう地方=一般国民からの一層の訴えが必要で大切、といいます。

小原さんは「性の多様性分科会」の副会長として「同性婚実現の意見書」を執筆。2019年9月に地方議会では全国で初めて、同性婚に向けた議論を進めるよう政府や国会に求める意見書を全会一致で採択するなど、地方から国への訴えかけを続けています。

「パートナーシップ制度」も多様化

子育て施策で全国的に注目を集める兵庫県明石市では、2021年1月から「明石市パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を要綱として開始しています。これは、制度を利用した行政サービスに関して、同性に限らない、子どもも含めるという制度で「最大のポイントとしは、子どもを核としたまちづくりを進めてきた本市といたしましては、子どもも届出があれば対応していくところが最大の特徴となっております」(明石市HPより、泉房穂市長)と、たとえば病院などでICUに入る・入らない、などで家族として対応できることで面会や病院説明を受けられるようになることなどがうたわれています。

「このテーマをいわゆる少数者の人権的なテーマのみにおいてとらえるのではなくて、まさにみんなの問題、まちづくりそのものとして位置付けております」(前出の明石市・泉市長)と、街の玄関となるJR明石駅前の商業施設の階段部が「レインボーカラー」にされるなど、「まちづくり」としてとらえる自治体もあらわれています。

「いまやLGBTのこと自体が国民の課題の中ではマイノリティではなく、マジョリティになってきているということかもしれません。ギャンブル依存症に対する世間での広がり、などと比べると、そう思えたりします」とは前出の小原さん。この声こそが、「パートナーシップ制度」に関して、地方議会の働きが、世の空気をつくり、国を動かそうとする政策となった証明のような気がします。

© 選挙ドットコム株式会社