元タワレコ副社長 原宿に「ジャンプ+」無名漫画家カフェ インディーズ音楽のように猛プッシュ

かつてのインディーズ音楽のように、店舗発で漫画界の新星を世に送り出したい。「SPY×FAMILY」(作・遠藤達哉)、「チェンソーマン」(作・藤本タツキ)、「タコピーの原罪」(作・タイザン5)などの話題作が続々と誕生する集英社のマンガアプリ「ジャンプ+(ジャンププラス)」で配信中の読み切り作品から、見開き2ページをパネル化し、ギャラリーと飲食スペースに展示するカフェ「The Unknown Café Gallery Harajuku」が14日、東京・原宿にオープンする。同店をプロデュースした庄司明弘氏(62)に話を聞いた。

一般的には無名の漫画家による作品が、原宿の表通りで存在感を発揮している。縦1メートル横1・5メートル程度から、縦1・7メートル横2・5メートル程度のものまで、スマホ画面から飛び出した作品たち。飲食メニューは黒いレモネード、白いナポリタンなど、マンガのモノトーンを意識したSNS映え抜群のものを用意。マンガと食で来場者に楽しさと驚きを提供する。

庄司氏は2009年まで約5年間、タワーレコードの副社長を務めるなど、音楽業界でキャリアを重ねた。コロナ禍で原宿の活気が失われていた約2年前、保有する物件を通して「街を応援したい」というコンセプトを打ち出した東急不動産に、今カフェの企画を提案した。

「インディーズをプッシュするのが好きだったので、有名人よりも、無名の作家を応援したかった。原宿、渋谷からなら、世界に向けて”The Unknownな才能”を発信できる可能性があるので、写真やアートを展示することも浮かんだが、日本が誇る”マンガ”を軸に据えることが良いと考えました。若手の漫画家さんにすそ野を広く開け、歴史に残るヒットも生み出しているジャンプ+に魅かれました。お勧めのページを2ページとしたのは、横読みマンガならではの”見開き”という魅力を生かすためです」

オムライス、ナポリタン、ビーフカツサンドなど「The Unknown Café Gallery Harajuku」の飲食メニュー (C)2023 The Unknown Café Gallery Harajuku

1年ほど協議を重ねた末に決めた、ジャンプ+へのラブコール。集英社の担当者からは「少年ジャンプ、ヤングジャンプでもなくジャンプ+がピッタリだと思う。ぜひやりましょう」と歓迎され、実現へと進んだ。

無名作家の読み切り作品、その見開きページを選んだのは、ロックバンド・OKAMOTO'Sのオカモトショウら8人。選出は各人の感性のみに任せた。SNSのフォロワー数などが重視されてメジャーとなり、その数字を上げるための職業が存在するような今の潮流に乗らず、かつてタワーレコードのインディーズコーナーが担ったような、目利きのセンスに委ねる方式を採用した。パネルの隣には作品名と漫画家名、選出者のコメントに加え、ジャンプ+アプリの作品ページに誘導するQRコードを掲示。拡大されたパネルの絵を、アプリでマンガ作品を、モノトーンの個性的な飲食メニューを楽しむ。

パネル化される読みきり作品は、60日ごとに一新される。広いギャラリースペースでのイベント開催、タワーレコード渋谷店とのコラボ企画なども進められている。内覧会では通りから、海外からの観光客が興味深そうにパネルにカメラを向けるなど、注目度は抜群。庄司氏は「無名だけどいいもの、をコンセプトに好きな人が集まって、新しい街の遊び方、マンガの見つけ方が誕生すればうれしい。自信と情熱はあるけれど、コネがない若い人同士が出会う場にもなってほしい」と期待を寄せた。

「The Unknown Café Gallery Harajuku」のギャラリースペース=東京・原宿 (C)2023 The Unknown Café Gallery Harajuku
「The Unknown Café Gallery Harajuku」のカフェスペース=東京・原宿 (C)2023 The Unknown Café Gallery Harajuku

◆展示作品と作家名、選出者と肩書…「灰色の町」亞城シロ(選者=星野天宏、フードクリエイター)、「フリーダム」大鳥雄介(MORIYUKI、ファッションデザイナー)、「六弦少女」若竹アビシ(尾上永晃、CDCプランナー)、「愛を食らわば皿まで」ナジ(マリア・コラロッシ、観光アドバイザー)、「恋する五分前仮説」植下(村上雅彦、ゲームクリエイター)、「シンプルイズベスト」ワートン(OKAMOTO'S・オカモトショウ、アーティスト)、「トラブル・カウンティ」大寿林(服部桃子、編集者)、「コンテンポラリー」仁志奈陸/もつ(松尾悟史、空間デザイナー)

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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