ライブをするかのように、ほぼ一発録りのレコーディング
──ちょうど、アナーキーのギタリスト・藤沼伸一さんが監督を務める映画『GOLDFISH』(主演:永瀬正敏)が全国公開中ですが、WENDYメンバーも出演されてましたね!
Skye(vo):あれが実は、バンドを結成して初めての仕事だったんですよ。だから実は俳優としてこの世界に入ってるんですよね、デビューとしては(一同笑)。
──なるほど(笑)、昨年は都内を中心にコンスタントにライブを重ねていましたが、今年は今のところライブ予定が少しスローな印象です。最近はどうされてました?
Skye:練習してます。メンバーの中でも話し合って昔はとにかくスタジオに入ったらひたすら曲をバーっとやってたんですけど、スタジオに入ってただ弾くだけなのも違うなと思って。スタジオに入らない日も次に入るときまでに曲を考えてくるなり個人でやれることをやって、バランス良くやってます。
Paul(g):今は週3日のペースでスタジオに入ってるんですけど、やっぱり自分の家で練習することがすごく増えましたね。個人的に自分が克服しなきゃいけない課題をしっかりやって、スタジオで集まったときにそれを出すっていう感じです。
Johnny(b):僕は家で曲や詞を書くことが多いです、それで集まったときに皆に聴かせて。
──Johnnyは会う度にルックスが変わって良い意味でいつも驚かせてくれますけど、いつの間に髪の毛を真っ黒にしたのですか?(笑)
Johnny:1年半ぐらいずっと金髪だったので、そろそろ落ち着きたいなと思いまして(笑)。黒は安定して落ち着けますね。
──そしてお待たせしました、ドラムに関しては家で練習というのも大変でしょう?
Sena(ds):家ではパッドで練習したりしてますけどうるさくなって大変なので、1人でスタジオに入って練習したりもしてます。動画で自分を録画してみたり、1人でいろいろと工夫しながらやってます。
──今年1月にレコーディングしている現場にお邪魔しましたが、あのレコーディングで音楽への向き合い方がさらに変わったような気がしたりします。レコーディングのときを振り返ってみましょうか。
Skye:Marcといろいろとやってみて、技術面も新しいことを学んだし精神的な面のレコーディングの整え方・曲をレコーディングするときに感情的な部分をどう入れ込むかっていうのを勉強させてもらった感じで。曲によって照明を変えたり、自分とメンバーの気持ちが入るまではレコーディングをしないで休憩したりとか。ほぼ一発録りなんですけど、自分たちが納得いく演奏ができるようなメンタルになるまではゆっくりと進めてくれたり。だから時間がかかっちゃってスタッフとかスタジオの方には迷惑をかけたんですけど(笑)、夜の10時に終わる約束がいっつも0時過ぎちゃって。Marcも熱心な人なので、休憩のときにも音楽のいろんな話もして。みっちり、7曲録りました。
──そのうちの1曲が、4月26日リリースの「Pretty in pink」になるわけですね。他メンバーはどうでした?
Paul:良い意味でレコーディングらしくないな、と。Skyeも言ってたように演奏以外でもフォローアップしてくれたり、(一発録りなのもあるし)緊張感があるんですけどMarcが気遣いをしてくれたり。そもそもMarc自身がかなり音楽好きで俺らの気持ちをよく分かった上での行動をしてくれたので、安心して臨むことができました。技術面では、あんまり日本ではやらないような…ボーカルが別録りとかでなく皆一緒だし、アンプの位置も斜めにしてちょっとドアを開けて演奏したりとか。俺的には“何だこれは!”っていう驚きがたくさんありました。
──「Pretty in pink」もWENDYらしくちゃんとギターソロを入れてますけど、一発録りでプレッシャー的にも大変だったでしょう?
Paul:メチャメチャ大変でした(笑)。ソロ前にかなり緊張しちゃうんですけど、そこもMarcがフォローアップしてくれて“よし、やるぞ!”みたいな感じで。いろいろと話していっぱいコミュニケーションも取って彼自身の音楽的な情熱も感じられてレコーディングができて楽しかったし、本当に時間があっという間でした。
Johnny:MarcはものすごくWENDYと相性が良かったなぁと思います。今回録った7曲以外の曲も一緒にやりたいなというぐらい、頭の柔らかさとか考えも広い人でした。曲のアレンジとか、俺たちだけで作ってたら思いつかない発想がいっぱいあってびっくりでしたね。
Skye:(未発表の)「Chasing a song」っていう曲に関してはちょっと苦戦してたんです。レコーディングに入る前に、俺たちが作ったデモをMarcのアレンジだったらこうなるっていうのをMarc自身がデモにしてくれて。部分的にカットされたりテンポを変えたりしてくれたんですけど、テンポに関しては自分たちのデモの倍の速さになってて人間が弾けないような速さで(一同笑)、レコーディングでMarcが自分で弾いてくれて何回か合わせてテンポを掴んで速さも決めて、ちゃんと人間が弾けるような(笑)。Marcは新鮮な耳で俺らの曲を聴いてくれてるので新鮮なアイディアが出てくる感じで、それを取り入れながら、気に入らないものは“要らない”って言って。
──気に入らないところはちゃんと伝えたりもしつつ?
Skye:例えば、Marcのデモではカットされてたところを“俺はここを残したほうが良いと思う”って言ったり、いろいろありました。でもお互いちゃんと分かり合って、平和にやれましたね。
──バンドとしてやりたいことはちゃんと通しているのですね。
Skye:そうですね、バンドを始めてからは自分たちのやりたいことはちゃんと通すっていう、そこは最初っからそうでしたね。やりたくないことをやらない、でもやらなきゃいけないときもあるのでそういうときはちゃんと話をして、それでもやっぱりやりたくなければやらない、って。
Paul:今回に関しては、Marc自身も俺ら自身も正直に向き合った感じですね、真の音楽好きとして。
──“真の音楽好きとして”っていうのが良いですね。そして英語でコミュニケーションを取りながらレコーディングというのも良き経験になりましたよね。
Sena:俺はまだあんまり話せなくて、Marcと話すときには“Skye、ちょっと来て!”って呼んで(笑)、でしたけど、まずとにかく楽しかったです。ドラム的には全員の目が合いながら演奏するっていうのもこれまであまりなかったし、目が合うっていうのは気持ち良くて。
Skye:タイミングが合うからでしょ?(笑)
Sena:そうそう。Marcのセッティングが家みたいで居心地良かったし、チューニングの仕方が全然違うので、スネアの音も全然違ったし。
──ライブでもドラムはメンバーの後ろだからメンバーの顔も見えなければ、一般的なレコーディングだとドラムだけ別で録ったりすることも多いですものね。
Sena:そうなんですよ、1人で叩いて誰もいなくて結構寂しいんですよ(笑)。これからもレコーディングではこうしたいですね。
Skye:ロックバンドってライブが勝負だけど、それをちゃんとリリースした曲でも伝えられるようになりたいなと。「Pretty in pink」も聴いてたら“ライブにいるような感じがする”って思ってもらえると思うんですよ。Marcとも話してたんですけど、最近の曲は綺麗にハマってるんですよ。でも例えば、ニルヴァーナでもカート(・コバーン)のボーカル以外の楽器を聴くと全部が完璧なわけではない、けどカートの“ウォーッ”っていう生々しさ。WENDYの曲も生々しいというか、人間味が聴こえるっていうのはすごくあると思ってて。
Paul:パソコンを使って音楽もできるけど、バンドは人間じゃないとできないからね。
Skye:ちゃんと人間にしか出せない音っていうのを、ちゃんと表していると思います。
──昨年リリースした楽曲たちと「Pretty in pink」を聴き比べると明らかな違いが分かります。こうなるとMarcとレコーディングした他の楽曲も聴きたくなります!
Skye:目標ですけど、今年中にはアルバムとして…出せたら良いなっていうのはありますね。誰も聴いたことがないようなものを作れたら良いなっていう、ジャンルとかも関係なく“このアルバムはWENDYのアルバム”っていうものを。
新宿ロフトでのショーケースは、WENDYをもっと知ってもらえるチャンス
──これからの動きもとても楽しみにしています。楽しみと言えば、Marcとのレコーディングを経て、これからのライブにも良い影響が出るような気がしていて。
Skye:レコーディングもほぼライブみたいなものだったし、圧倒的に演奏技術が上がってるけど、もうちょっとパフォーマンスに力を入れて行きたいなと思うようになって。ライブでも動かないアーティストって多いですよね、だから動き回りたいんですよ(笑)。やっぱり動かなきゃ楽しくないし、それはお客さんにしても。ここで歌う、ここで弾くっていうのが固定されちゃってアーティストはあまり動かないっていう想定で舞台も作られているところがあるような気がして、自分たちのライブでもたまに照明が追いついてないときとかがあったりするし(笑)。でもWENDYはギターもベースも動くバンドなんで。
Paul:俺も動くのが好きだし、どんどん自分たちが動いて行くことで、舞台が変わるようになっていけば良いなと思うところがあります。
Johnny:パフォーマンスは大事ですよね。ライブっていう面で見ると今のライブがつまらないなって思うときがあるのは(演者の)表情もずっと一緒だったりとかで。見てて楽しいのはやっぱり動いてること、ロックはパフォーマーなのでそれをやらないと演ってる側も見てる側も楽しくないと思いますね。
Sena:パフォーマンスっていう部分で言うと今まで、どんなドラマーよりも上のパフォーマンスをしよう、なめんなよ! っていう気持ちでやってました。ドラムは負けないぞ! って。プライベートは可愛い系に見えるかもですけど(一同笑)。
Skye:“可愛い系”って、自分で言うことじゃないよ!(笑)
Sena:WENDYって3人が怖い系に見えて、俺が一番普通で一番話しやすそうなんですよ。でもライブのときは全員怖いんだぞ、っていう感じでやっていきます!
──今回お話をして4人のキャラもそれぞれ立ってきたなと感じます。そんな4人のライブを目撃できる次の機会が実は、新宿ロフトでの『WENDY Showcase Live 2023』になるわけで!
Skye:そうです。“ショーケース”だからWENDYを知ってもらえるチャンスでもあるし、ロフトでは未発表曲もやろうかな…と考えているし。“ショーケース”だけども今は声出しもOKになったりしたし、お客さんが積極的にワーっと盛り上がって暴れさせて、ストレスとか辛いときにWENDYのライブを見て別世界に連れてってもらえたっていう感じにさせようと思ってます。もちろん自分たちも暴れます!(笑) ショーケースって業界の大人たちが多く見に来るイメージで、その大人たちも仕事で来てるとは思うんですけど仕事を忘れちゃうぐらいのライブで、一緒に暴れちゃいましょうっていう感じです。腕組みして見てるような人には“腕組みして見てんじゃねーよ!”って言います(一同笑)。
Paul:新宿ロフトはずーっと出させてもらっている場所だし、俺としてもWENDYとしても特別なライブになると思うので、肩の力を抜いて来て欲しいですね。
Johnny:熱量があるライブなると思うので、楽しむ気持ちを存分に持ってきてください!
Sena:俺もいつも以上に声を張って、目立つようにライブをしたいと思ってます。
Skye:単に目立ちたいだけだろ!(一同笑) じゃあ、メンバー紹介を(ドラムから離れて)前に出てやったりしよっか?
──それ良いかも! ライブの音は言わずもがな、今までWENDYがライブで見せていない、違う何かを期待したいですね!?
Skye:そうですね! じゃあ皆で何か考えておきます!
【プロフィール】
WENDY 世田谷から世界へ
全員が世田谷区在住の18歳と19歳からなる4ピースバンド。世田谷区の青少年センターで出会った仲間で2020年10月結成。
10代とは思えない新旧を問わない洋楽ロックのヘヴィリスナーであり、イギリスやロシアにルーツを持つメンバーがいるこのバンドは最初から自然と全歌詞英語となった。
2022年には「SUMMER SONIC 2022」へも出演。70sや80sのルーツロックやハードロックの影響を色濃く感じさせる楽曲と、それを体現するロックスター然としたルックスやスタイルを併せ持つWENDY。
マネスキン、リンダ・リンダズなど新世代のロックが世界的に勢いを増してきている昨今のシーンにおいて、世田谷・そして日本から世界を狙う今最も注目のティーンエイジバンド。
2023年4月26日「Pretty in pink」をリリース。4月28日には、「Showcase Live 2023」を開催。