横浜国立大学大学院環境情報研究院の島圭介准教授と株式会社ミルウスらは、手術中の医師の感情を心電センサとAIを用いて可視化するシステムを共同開発した。
今回のシステムは、独自開発したAI感情推定モデルを用いて、医師の胸に貼り付けた心電センサ波形から手術中の感情を見える化するもの。感情は人々のパフォーマンスを大きく左右することが経験的にも知られていることから、とりわけ命を預かる手術中の医師の感情を可視化することは重要と言える。
本システムで、AIによる手術中の医師の感情推定実験を行った結果、手術開始時点では比較的落ち着いた感情にあったものの、手術後半に術野が脳内に至った佳境段階では、緊張を表す感情が増えたことが見てとれた。感情の起伏については、強弱を繰り返しながら、緊張時ではその間隔が短くなっていたことが確認された。このようなデータは、心理学の専門家による心理的側面からの分析にも有効である。
本システムにより、経験豊富な医師が術中の各ステージでどのように感情をコントロールしているかの可視化や、熟練医師でも緊張する手術ステージの抽出が可能となり、研修医の教育等において非常に有効な、客観的なデータに基づく知識の共有が可能になると期待できる。
手術医師の感情可視化だけでなく、感情推定技術には非常に広範囲の応用が想定されるともしており、例にはアンケートによる商品・サービス市場調査、ヘッドマウントディスプレイを装着した人に対応するアバターの感情表現、認知症の早期発見等の医療応用などを挙げている。今後、AI感情推定システムは性能評価と改良を重ね、さまざまなシーンへの活用を目指すという。
参考：
