【KAIRIインタビュー】スターダム復帰から約1年が経過した“海賊王女”が感じる現在

フリーとしてスターダムのリングに復帰して約1年が経過した“海賊王女”KAIRIにプロレスTODAYが独占インタビューを実施!

リング復帰から約1年が経過した現在の心境や、IWGP女子王座獲得、安納サオリ&なつぽいとの「REstart(リスタート)」結成、古巣であるWWE年間最大の祭典『レッスルマニア39』、そしてこれからの日本の女子プロレス界に向けて、世界で活躍して来たKAIRIに多岐に渡るインタビューを行った。

<インタビュー:4月4日>

①スターダム復帰前と復帰後のイメージの違い

――スターダムに復帰されて1年ほどたちますが、復帰前と復帰後のイメージの違いなどはありますか?

イメージ通りだったこともあるし、違うなって思ったこともあるのかな。

――出て行く前と帰ってきた後で変わったなという選手はいらっしゃいましたか?

それはもう本当に全員に対して感じますよね。全員セルフプロデュース力が圧倒的に上がってるなと。それはキャラクターもそうですし、会見での発言やいかに自分の試合に注目してもらうかとか、その辺をやっぱ考えてますよね。

人数が多いので、考えざるを得ないというか、そこで埋もれないようにするためにはもっと考えなきゃっていう…。服装1つにしても、昔は私もそうでしたけど、Tシャツとかジャージとかでやってましたけど、昨日の会見でもみんなちゃんとしてましたよね。やっぱそのプロ意識の自覚というのがぐっと強まったのは感じますよね。

――KAIRI選手が入団されたころに比べると圧倒的に人数が増えましたよね。

そうですね。アットホームの感じは人数が少ないときの方があって、まとまりやすいのもあったけど。今はユニットごとに分かれている感じで。羨ましいですよね、やっぱライバルは多ければ多いほどいいし、やる方も見る方も新鮮味があるので。

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②初代IWGP女子王座戴冠

――KAIRI選手は戻られてからもスターダムの中心にいらっしゃいますが、もう1つ新日本プロレスのマットでも初代IWGP女子王座に輝かれています。新日本プロレスとスターダムの合同興行でメインを締めたというのはいかがでしたか?

これまでやってきて、フリーですけどスターダムに復帰して1番のハイライトだったというか…。新日本さんのリングでプロレスをするなんて…。しかも(岩谷)麻優さんと、しかもメインイベントでベルトを掛けてというシチュエーションが夢にも浮かばなかったような光景が実現されたということで、本当に不思議な気持ちというか、何とも言えない状況でしたね。

――試合後、締めるの大変じゃなかったですか?壮絶な試合でしたよね。

そうですね。でもそれはWWEでどんな時でも、臨機応変に生放送で急にマイクを任されることもありましたし。やっぱチャンスをいただいたときにしっかり生かすっていう練習を散々やってきたので、そういった場でしっかり締められる自信というか、そういうものはありましたね。自信というか責任感ですかね。

――新日本プロレス50周年の歴史に女子がメインを締めてマイクで飾ったというのは、本当に時代の変化を感じましたし、それをKAIRIさんが成し遂げたというのは、女子プロ界の歴史のまた新たな一歩になったと思います。

本当そうですね。WWEでも女子がすごい活動的にみんなで切磋琢磨してメインイベントを張らせていただいたこともあったので、やっぱその流れもいずれ日本に来るのかなってなんとなくは思ってましたけど。まさかそこを任せてもらえるとは本当に光栄でしたし、WWEで私を育ててくれた方々にも恩返しというか、いいところを見せれたなと思います。

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③メルセデス・モネ参戦の衝撃

――そしてその後、挑戦者にまさかのメルセデス・モネ選手。

いやこれも本当に巡り合わせというか、不思議なもので。興味があるという連絡はもらっていましたし、本人もインスタグラムに投稿していたくらいだったのでそれは感じていたんですけど。WWEでやってきましたけど、新日本でお互いフリーとして…まさかまさかですよね。この状況を私もですけど、モネも本当によろこんでくれてましたし、お互いのリスペクトの気持ちはすごいあったので、ああいった試合になったと思うし。嬉しかった、ああいう試合がモネと出来たことが。

――そういう部分、時代が変わってボーダレスになってきていますよね。

そうですよね。特に今年は中邑真輔選手vsグレート・ムタ選手という、夢のような対戦カードが実現したことも本当にすごいなと思いました。WWEが所属選手を他団体に出場させることは今までだったら有り得ないというか、考えもしないことでしたから。

――そうですね。今後も団体をまたいで夢の対決が見れたら嬉しいなと思いますね。ASUKA選手とまたKAIRI選手がどこかでまた…というのも期待したいです。

ASUKA姐さん、またいつかどこかでめぐり逢いたいです。ありがたいことに、アメリカを離れて約3年が経つんですけど、海外からの取材や試合のオファーも実は増えているんです。SNSでも海外のファンの方が英語で早く戻ってきて!とたくさんメッセージをくれるので本当に嬉しいです。感謝しかないというか。

――それはKAIRI選手がWWEで活躍してきたという証ですね。そして現在IWGP女子チャンピオンのモネ選手、次はAZM選手と葉月選手と防衛戦を行います。

まずはモネが日本でどのような試合をするのかが気になりますね。初対戦のAZMちゃんと葉月と、どんな交わり方をするのかなって。一体誰が試合をコントロールして目立つのか興味津々です。ただ、モネも百戦錬磨の選手。一緒にやってきたからこそわかるけど、泥水を飲みまくっていますし。レッスルマニアでもメインをはる器を彼女は持っているから、ここぞという本番は絶対に外さないはず。対する同期のAZMちゃん、そして葉月はスタミナ抜群で3WAYが得意だろうし、この大チャンス容赦なく勝ちに行くだろうなって。ああ、楽しみ!是非会場で見届けたいと思ってます。

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――そしてその勝者に、KAIRI選手とIWGP王座を競った岩谷選手が挑戦するということが決定しています。今後どういう展開になるか楽しみですね。

今は単純にどんな試合が生まれるか…。私はそのIWGPのベルト巻いてる間は、絶対このベルトの価値を上げるっていう気持ちで全試合やってきて、短い間ではありましたけど、自分のできることは全てやったかなと思っていて、少しは価値を上げれたかなと。このベルトの価値を守り続ける試合が生まれていくと思うし、そうなってほしいから。今は見守る側というか、単純に興味がありますね。

④スターダム・アーティスト王座への挑戦

――KAIRI選手は4・2後楽園ホール大会で、QQ(クイーンズ・クエスト)に勝利したプロミネンスに、アーティスト王座への挑戦表明を行いました。その際に、安納サオリ選手となつぽい選手との「REstart(リスタート)」というチームを結成しました。

そもそもわたしとサオリちゃんとなつぽいは、もうかなり前からですよね。6年半から7年前くらいから関わりを持ってて、その当時はスターダムにアクトレスがゲスト参戦をしてくれてたんですけど。そのころは(ジャングル)叫女もいたころなんですけど、スターダムがすごい低迷というか、人数が減っていた時期で選手が足りなくなった時に助けに来てくれたんですよね。その2人がすごい頑張ってくれていたという記憶はあって、またいつか交わる時期があったら…とは思って痛し、動向は気にして見てましたね。

――安納サオリ選手をパートナーに選んだ理由とは?

そうですね。彼女はフリーとしてしばらくやってたんですよね。その間にどんどん自分の力をつけて、いろんな団体でやることって団体それぞれの色もあるし、戦い方もあるし、経験値は本当にぐっと上がったと思うんですよね。しかもベルトも巻いてましたし。ベビーとヒールも使い分けたりしていて、6年前とは全く違う選手になったんだっていうのは、Twitterだけでも分かっていたので、今彼女がスターダムに上がるとどんな化学変化が起きるのかなっていう期待感はすごいありますよね。実際お披露目したときも盛り上がりがすごかったので、すごい期待がありますね。

――なるほど。これからリスタートというチームが新しくスターダムに嵐を巻き起こすのでしょうか。

実は先日3人でリング練習をしたんですが、驚くほどに息がぴったりで。連携攻撃のアイディアも3人で出し合い、良いものが生まれましたのでお楽しみに。もしアーティストのベルトを巻くことができたら、日本全国でたくさん防衛戦をやりたいなって。

――今回は対戦相手がプロミネンスで記者会見でも沸かせていたかと思いますが、記者会見を終えてどのような心境ですか?

やっぱ興味があるんですよね、プロミネンスは。まず世羅さんは数少ない同期なんですよ、2012年デビューで。やっぱり同期だから気になってみてましたし、彼女もいろんな経験を経て、どうなってるのか楽しみですよね。

――木刀でやられた仕返しをしないとですね。

そうですね。ラフファイトというか、デスマッチをやってるくらいそういうのが好きな選手だと思うので、楽しみ!私も、実はハードなの嫌いじゃないので。いやいやどうだろ…、デスマッチは嫌だな(笑)

――相手には鈴季すず選手もいらっしゃいますね。

鈴季すずちゃんが一番興味深い。ハタチですよね?一体何があって、あのような堂々とできるというか貫禄。もうベテラン選手の風格が出てるし、マイクも試合も、マイクはもうあれだけのお客さんの心をコントロールできる側になっている。自分がハタチの頃を思い返すと、あそこまで絶対できないって思うので。一体何者なのかともうちょっと調べたいと思います。

――いろんなことを経験した選手がスターダムのマットに集まってきた試合というのは楽しみですね。

そうですね。私自身もWWEで切磋琢磨してきたので…、本当に楽しみ!

――どういう化学反応が起こるかというところですね。

本当未知なので、ワクワクしてますね。

――「REstart(リスタート)」という名前はどなたが考えらえたんですか?

3人で。3人で話し合いながら、でも以前ユニットを組んだことがあって、その時は「stArt(スタート)」という名前だったんですよね。スターダムとアクトレスの名前を掛け合わせて「stArt(スタート)」。その思い入れがあったので、リスタートで再スタート。

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⑤今年のWWE年間最大の祭典「レッスルマニア」について

――先日、WWEの年間最大のイベント「レッスルマニア」がありました。KAIRI選手も以前出場されてましたが、いかがでしたか?

私、3年連続で出させていただいているんです。やっぱ内部にいたからこそ分かるんですけど、「レッスルマニア」ウィークというのは、レスラーにとっては忙しすぎるというか、その前からもちろんそのサイン会とか試合とか、そのPR含め本当に怒涛の1週間なんですよね。

――いつも以上に忙しいんですね。

本当に忙しい!選手によっては、スケジュール分刻みぐらいで。私も日本から来てる方の取材もありながら試合やって、移動して…とか。その中で試合考えたり体調管理しないといけないんで、本当にお祭りなんですよね、選手にとっても。

――すごい高揚感ですか?

でもすごい外の盛り上がり知ってるじゃないですか、内部はやっぱり日常というか、「この日に人生の全てをかける!」みたいなのはない(笑)。女子のロッカールームも「ついにレッスルマニアだね、会場広いね」みたいな話はするけれど、みんないつも通りのパフォーマンスを出せるようにいつも通りのアップをしてる感じ。

――そうなんですね。でも日本では考えられないような規模でやってるじゃないですか。会場に一歩入ったら…

「行くぜー!」みたいなのもなく。男子とかもどうかな?って見ても同じなので、逆にそれはほっとしたというか。

――平常心というのが大事なんですかね?逆に向けビッグマッチだから意気込み過ぎても怪我しちゃうとかあるんですかね?

そうそうそう!やっぱみんな(試合までの)持っていき方分かってるんでしょうね、自分なりの。レッスルマニアが最大でそこに焦点を合わせるというよりかは、いつも通りのパフォーマンスを、いつも通りぶれずに見せきるっていう。

――だって翌日にもすぐ試合がありますもんね。

そう!次の日RAWだから(笑)。ていうのはあるけど、やっぱり試合して思ったけど、宇宙空間のような、あんな不思議な気持ちになったのはレッスルマニアの会場が初めてという気持ちでしたね。

――やはりプロレス界頂点の祭典というか、そこを夢にしている選手がいっぱいいるわけじゃないですか。

特に女子はレッスルマニア10試合くらい組まれるけど、女子の試合ってチャンピオンシップ、タッグの試合、せいぜい3か4試合あるかないかでその枠を所属選手の女子、NXT合わせると6、70人いるなかで枠を争うわけで。今回IYOさんとASUKAさんがその枠に入っていることがまず…、日本の私達からするとニュースだけ見てるので、今年も出るんだくらいの感覚になってしまうかもしれませんけど。本当にすごいことで。ASUKAさん、チャンピオンシップで負けてしまったけど、抜擢されることの凄さが、だからこそ分かるし、決まるまでの流れはみんな気が気じゃない。

――どれくらい前に決まるものなんですか?

もうその前のストーリーで決まっていくから、年明けかな…。でもギリギリまで教えてもらえないんですよね。ただ、そういうストーリーラインにいるから、もしかしたらっていうのは感づいていたかもしれないけど。

――でもIYO選手ももってますよね。WBCの決勝で、IYO選手が写っていてびっくりしました。

Twitterでもトレンドになってましたよね。

――その後、大谷選手が所属するエンゼルスの始球式もやられてましたしね。

IYOさんもコロナがあったので、私もそうでしたけど、試合がなかなかない時期とか、苦しい時期を知ってるんですよね。それを乗り超えてチャンスをつかんでいるので、本当に嬉しいですね。

――その中で日本人選手のお二人、ASUKA選手、IYO選手が出場されたというのは嬉しいニュースでしたね。

ASUKA選手はね、もう絶大な信頼感なんですよね。ASUKAさんは誰と試合しても相手の良さを引き出すし、コンディションも外さないんですよ。

――大阪弁で暴言を吐くところもいいですよね(笑)

もう、全部必要な要素…、キャラクター、マイク、試合のうまさ、コンディション、強さとか全部をコンプリートしているんですよね。怪我も少ないし、だからもう会社の信頼度が男女含めて1番だと思います。

⑥これからの日本の女子プロレス界に向けて

――世界最高峰の団体WWEを経験したKAIRI選手が、今後日本女子プロレス界に向けてアドバイス等はありますか?

やっぱり広げてブームを起こしていくには、ライトな層をファンとして獲得していかないといけないから、そういう人にも伝わりやすい、見やすい、分かりやすいように。キャラクターや見た目もだし、試合内容もだし、マイクとかももっともっと。日本にもみんないい選手いっぱいいるんで。

――ライト層へのアプローチですね。以前ヨシタツ選手から、日本ではマニア層に向けてプロレスをやっているけれども、アメリカでは子供に向けてやっていると。そうするとお父さんお母さん含めて誰か連れてきてくれて、子供が段々育つとまたさらに次の世代が…といういい循環になっていると伺いました。選手もキャラクターとして、フィギュアがおもちゃ売り場だけでなく、ドラッグストアなどの手軽な場所にも売っていることで、マーケットの捉え方が広いと。

そうなんですよね。選手を見に来ているというか、技とか試合内容というよりかは、この選手が見たくて来ているっていうのが多い感じはしましたね。これは関係ないかもしれないけど、WWEでは技を減らしていけと教わるんですね。いかに削って洗練していくか、だからジョン・シナとかでも超シンプルな技しかしない。上になればなるほど、本当に技をしない。こちらを焦らしてくれるというか。もうゴングが鳴って仁王立ちしているだけでお客さんは最高潮なんです。何故かというとそこまでに深く濃いストーリーとドラマがあるから。トリプルHからはよく、技も大切だけどとにかく《MAKE STORY》=サイコロジーを学び、考え、ドラマを作りなさいと言われました。頭や首から落とすなどの危険技は禁止ですし、張り手も基本的にNG。且つレフェリーが絶対的権限を持っていてとにかくルールが細かいので、そういった制限がある中でどうやって盛り上げるかをひたすら考えていました。そうして学んだことも踏まえつつ、スターダムの試合のテンポ感とどう融合させていくかが自分の課題です。

――なるほど。

加減が難しいからこそ、試行錯誤が楽しいです。パワーファイターやハイフライヤー、十人十色のレスラーがいるように世界中で色んなプロレスの伝統スタイルやリズムがあって、そのどれもが素晴らしいと思うし、闘い方に正解がないのがプロレスなので。「みんな違って、みんな良い」ですね。だから信念は持ってますが自分の考えを誰かに押し付けることはしたくないです。聞かれればなんでも答えるスタイル(笑)。

――選手層が厚くなってきているので、いろんなキャラクタ―がいる中で違いを見せるのが難しい面はありますよね。まずはいろんなところに情報発信をしていくのも非常に大事かと思います。

そうですね、やっぱり時代に合わせてPRというか。今はTikTokとかもね、流行ってるし。私もやらなきゃなとは思うけど…。ただ、発信をする上で言葉選びにはすごく気を遣わないといけないなと。ちなみになんですが、WWEでは差別用語をSNSで使うと直ちに全体ミーティングで厳重注意、罰金もしくは謹慎処分になります。対戦相手への煽りで相手の容姿や体型なんかについて言うこともNGです。

――その辺、日本は少し遅れている感じがありますね。

向こうはいろんな人種がいるからなおさらですけどね。少しずつ日本でもそういう波が来ると思います。

ーー多岐に渡るお話を伺えて有難うございました。

こちらこそ、有難うございました。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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