プジョー9X8、トラブル解消のためギヤのアクチュエーターを油圧式へ変更「かなりうまくいっている」とデュバル

 WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦しているプジョーは、新しいギヤシフト・アクチュエーターシステムの導入により、第2戦ポルティマオ6時間レースにおけるプジョー9X8の信頼性向上に期待を寄せている。

 プジョーはポルティマオ戦を前に、電気式だったアクチュエーターを油圧式へと変更。これにより、アクチュエーターに発生していたトラブルを払拭することができた、としている。

■2022年最終戦で問題が顕在化

 開幕戦のセブリング1000マイルレースで、2台のプジョー9X8はドライバーのパドル操作をギヤシフト操作に変換するアクチュエーターのトラブルにより、大きな遅れをとることとなった。

 チームは、セブリングの時点ですでにこの電子的なトラブルを認識しており、ポルティマオに向けては解決策を練っていた。

「根本的に、最初のものが電気式だったのに対して、新しいものは油圧式になっている」とプジョー・スポールでWECテクニカル・ディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは説明する。

「まったく違うものだ。いまのところ、うまくいっているようだね。(トラブルがないことだけでなく)ギヤシフトの面でも、満足している。以前のシステムよりも信頼性が向上しているのだ」

「問題は、それで充分かどうかということだろう。ここでトラブルに見舞われないことを祈るよ。より良いシステムであることは間違いない」

 プジョーは昨年、電気式アクチュエーターシステムの信頼性の問題を認識していたが、開発に時間がかかるため、最終戦バーレーン8時間レースが終わるまで変更を加えることはなかったとジャンソニーは説明した。

「バーレーンの前に、何かをしなければならないことが明らかになり始めた 」とジャンソニー。

「我々はそれを検討し始めた。これは、我々のクルマにとって非常に根本的な改変であり、大きな変化だ。 既存のものを作り直すということではないんだ」

「(電気式のシステムは)極めてよく機能していた。問題は、コンポーネントの信頼性だけだった」

■すでにテストで1レース分以上の距離を走破

 プジョーは先月、セブリング戦後に行ったポール・リカールでの耐久シミュレーションで新しい油圧システムをテストし、レースでの初適用を前にポジティブなフィードバックを得ている。

 ジャンソニーは、「我々は、ここ(ポルティマオ)に至るまでの走行距離で、このシフトシステムに満足している」と語る。

「ポール・リカールでは、ここでの走行距離よりも多くの距離をこのシステムで走った。だが、それは1回のテストでしかなく、すべてを1回のサンプルで判断するというのは簡単なことではない」

ポルティマオのアルガルベ国際サーキットを走行するプジョー9X8 2023年WEC第2戦

 グスタボ・メネゼス、ニコ・ミューラーと94号車のプジョーをシェアするドライバー、ロイック・デュバルは、新システムを使ったテストでのマシンの走りに満足している。

「いまのところ、かなりうまくいっている」とデュバル。

「問題には見舞われなかった。少なくとも、セブリングのときのような問題はなかった。その点では何も問題はなかったから、ポジティブな印象だ」

「ポール・リカールでのテストは1回だけで、本当にスムーズなコースだから、これからどうなるか。そこから学ぶことになるだろうが、ポジティブな印象だよ」

 他のメーカーと同様に、プジョーもセブリングで優勝したトヨタGAZOO Racingに近づくことを目標としている。

「僕らには僕らが持っているものがあり、それを最適化して彼らに近づけるよう努力しなければならない」とデュバルは言う。

「ここでは、パフォーマンスの面でギャップが小さくなると思う。信頼性の面では、セブリングで(シフトの)伝達経路にあった問題が新しいシステムとなったことで、信頼性の問題を解決するのに役立つと考えている」

「パフォーマンスと信頼性の両面で、彼らに近づくことを願っているよ」

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