【図解】「飽和潜水」とは 知床半島沖の観光船沈没でも注目 宮古沖陸自ヘリ事故 

 陸上自衛隊ヘリコプターが6日から宮古島沖で行方不明となっている事故について、防衛省・自衛隊は14日までに深い海に潜るための「飽和潜水」という手法を使った捜索作業に着手した。実際に潜水士が専用カプセルに乗り込んで海中で作業をしようとしたが、何らかのトラブルが生じ中止に至った。

 防衛省は、カプセルが海中に入ったものの、潜水士が外に出て作業できなかった理由を伏せている。安全管理の徹底が求められる捜索作業中にトラブルが生じたにもかかわらず「運用の中身に関する事」と述べるにとどめた。関係者によると、海底に向かっている途中で機材に不具合が生じたという。

 飽和潜水は、北海道・知床半島沖で観光船「KAZU I(カズワン)」が沈没した2022年の事故で海上保安庁が実施して注目を集めた。事前に一定の時間、加圧した部屋で生活し、体を慣らすことで海中の水圧に耐えられるようにする手法だ。海上自衛隊では潜水艦を救難するために、飽和潜水の技術を習得している。

 海中から浮上した際の急激な気圧の変化による「潜水病」を防ぎ、深い場所で長時間の作業が可能になる。潜水士は加圧室で体を慣らした後、3人一組で専用のカプセルに乗って潜水する。

 専用のケーブル(約15メートル)を通じて温水や酸素などの呼吸ガスを取り込むため、作業の時間制限は基本的にない。一方で動ける範囲は限定される。

 作業後は再び部屋に入り、地上の気圧に体を適応させる。事前の調整よりも長い期間がかかる。

 13日夜に掃海艦「えたじま」が水深約100メートルの海底で機体とみられる物や隊員とみられる姿を見つけたが、特定のための十分な情報を得られなかったことから飽和潜水に乗り出した。今回使用する潜水艦救難艦「ちはや」には潜水士約20人が搭乗している。

 (明真南斗)

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