熱狂と議論を巻き起こしたホラー三部作を解説『ハロウィン THE END』で殺人鬼ブギーマンに驚愕展開あり?

伝説的ホラー映画ついに完結

『ハロウィン THE END』は2018年から始まった、今やホラー界の名ブランドであるブラムハウス・プロダクションズ製作×デヴィッド・ゴードン・グリーン監督によるリブート版『ハロウィン』の3作目です。

イリノイ州ハドンフィールドの町を舞台に、ハロウィンの夜に凶行を繰り返す無敵かつ不死身の殺人鬼、マイケル・マイヤーズ/ブギーマンの恐怖を描きます。

このリブート版は三部作の体裁で『ハロウィン』(2018年)、『ハロウィン KILLS』(2021年)、そして本作『ハロウィン THE END』となります。アメリカでは2022年公開なので『KILLS』から1年後に、その続きが公開されたわけですね。

本作のタイトルに『THE END』とあるように、これでリブート版シリーズは一旦終了です。

※以下、作品の内容に一部触れています。ご注意ください。

人気シリーズならではの“賛否”とは

正直に言うと、この『THE END』は賛否両論わかれました。まず1作目の『ハロウィン』は素晴らしい出来栄えでした。80年代のスラッシャー(殺人鬼ホラー)映画ならではの楽しさを現代にうまく蘇らせてくれた。やはり、このシリーズはマイケル・マイヤーズが忍び寄るように襲ってくる独特の緊張感が売りであり、その期待に十分応えてくれている。

これにはファンも大喝采だったのですが、『KILLS』から少し風向きが変わります。僕らがこの手の作品に期待するのは、いかに殺人鬼/モンスターが怖がらせてくれるか、暴れまくってくれるか、なわけです。それが堪能できるのであれば、極論ですが正直ストーリー展開やパターンは毎回同じでも構いません。しかしながら『KILLS』は1作目の焼き直しに終わらせず、ちょっと捻ったストーリー展開だったのです。

『ハロウィン』は公開時期と同じ2018年の10月31日の惨劇を描きますが、なんと『KILLS』は“その日のハロウィンの夜の続き”の話だったのです。そしてマイケルの存在におびえる町の人々が、恐怖のあまり平常心をなくしていくという群集心理的なお話になる。要は、ある種のパニックものなのです。話の展開としては面白いのですが、マイケルに狙われた者が「いかに生き延びるか」or「いかに殺されるか」という、あのタイトでドキドキするような感じが少し薄れてしまったわけです。正直、凝った話にしなくていいから、シンプルにマイケルの怖さを描いてくれよ、と(笑)。

そして今作『THE END』はさらに予想を超えた展開となり、2018年の悲劇から4年後、2022年のハロウィンが舞台。つまり、また公開時期と映画の中の時間が一致します。マイケルが『KILLS』での惨劇のあとに姿を消してから4年後、再び町に戻って来る……というよりも、なんとマイケルの“後継者”が出現するのです。

つまり『ハロウィン』で恐怖が復活し、『KILLS』でその恐怖が拡散し、『THE END』でその恐怖が継承される、というわけです。

三部作のドラマとしてはよくできていますが、これまた、ただひたすらマイケルの活躍(?)を楽しもうとしているファンにとっては、話がちょっとブレているように感じてしまうでしょう。ここが賛否の“否”の評価につながります。ただ僕は、この『KILLS』『THE END』の流れは悪くないと思います。

“恐怖”ではなく“恐怖の克服”の物語

前提として、(不謹慎ですが)マイケルの殺しのシーンは工夫を凝らしているので、スラッシャー映画として十分楽しめる。そして、自らが抱えている恐怖に決着をつけないと、恐怖はまた繰り返される……という本三部作のテーマは腑に落ちます。

本作の主人公は、ジェイミー・リー・カーティス(『エブエブ』でアカデミー賞助演女優賞受賞おめでとうございます!)演じるローリーです。

なぜマイケルはローリーを付け狙うのか? それは人々に恐怖と絶望を植え付ける存在であるべきマイケルにとって、唯一自分の手から生き延び戦おうとする彼女の存在は危険だということなのでしょう。なぜなら彼女が“反マイケル”のシンボルになってしまうからです。

一方のローリーも、マイケルとの過去――かつて襲われ生き延びたこと――に強く囚われている。それが結果的にマイケルを引き寄せているのかもしれません。リブート版『ハロウィン』サーガは、“恐怖”ではなく“恐怖の克服”の物語だったのです。

随所に散りばめられたオリジナル版&先輩監督へのオマージュ

……などと理屈っぽく書きましたが、マイケルの怖さ&かっこ良さ(←不謹慎ですが)は本作でもチケット料金分以上に描かれているのでご安心ください。

映画の序盤、ハロウィンの夜に子どもが『遊星からの物体X』(1982年)をTVで観ていますが、1978年のオリジナル版『ハロウィン』では子どもたちが『遊星よりの物体X』(1951年)をTVで観ています。『遊星からの物体X』はジョン・カーペンターによる『遊星よりの物体X』のリメイクであり、こういうマニアックな工夫もあります。

また今回、物語のキーとなる人物の名がコーリー・カニンガムというのですが、これはスティーヴン・キング原作×ジョン・カーペンター監督『クリスティーン』(1983年)のオマージュで、主人公アーニー・カニンガムにちなんで名付けたそうです。

監督のデヴィッド・ゴードン・グリーンの次回作は、リメイク版『エクソシスト』。『ハロウィン』サーガで描かれた“恐怖が人の心を蝕む”というテーマが、次の作品にも継承されるかもしれませんね。

文:杉山すぴ豊

『ハロウィン THE END』は2023年4月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開

© ディスカバリー・ジャパン株式会社