MOTUL松田次生が13年ぶりのPP獲得。ミシュランが雨のなか最前列独占【第1戦GT500予選レポート】

 モータースポーツの持続可能性を高め新たな時代の扉を開くべく、今季よりカーボンニュートラル・フューエル(CNF)「GTA R100」を導入した2023年スーパーGT開幕戦、岡山国際サーキットでのGT500クラス公式予選は、雨絡みで目まぐるしく路面の水量が変わる難しいコンディションのなか、最終的にダンプ路面を制した23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生が、後続を大きく引き離すトップタイムを記録。自身13年ぶりのポールポジションを確保すると同時に、僚友の3号車Niterra MOTUL Zとフロントロウを固める盤石のシーズンスタートを切った。

 今季最初の公式セッションとなった土曜午前から、走行時間枠全体で残念ながら降雨に見舞われる出だしに。混走時間帯にはターン4(モスエス)でクラッシュが発生して約30分の赤旗中断が発生し、終盤には雨脚も強まったことで各クラス占有走行枠がキャンセルとなったまま終了した。

 勢力の見極めばかりか、午後の予選に向けた最終確認や各種調整も十全にこなせたとは言えない状況となるなか、最速タイムを刻みながら雨量に脚元をすくわれた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraは、そのモスエスで負った車両へのダメージが大きく予選出走は絶望的に。

 同2番手にはブリヂストン装着の36号車au TOM’S GR Supraが続いて、雨で無類の強さを発揮するミシュランを履く3号車Niterra MOTUL Zを辛くも抑える結果に。

 そして今季より新たに2台体制を敷くARTAの16号車、8号車のARTA MUGEN NSX-GT勢が5番手と7番手。その背後にはダンロップの64号車Modulo NSX-GTにヨコハマタイヤの19号車WedsSport ADVAN GR Supraがトップ10圏内に続き、午後は雨量次第でグリッド順が目まぐるしく入れ替わるだろうことを予感させた。

■Q1:タイヤ交換組は明暗分かれる。1号車も敗退

 セッション直前には通常各10分間の走行枠が15分へと拡大され、タイヤのグリップ発動や路面の雨量に対応する措置が取られるも、GT300のQ1A組開始となる午後14時時点で気温は13度、路面温度も14度と午前からほぼ変化なし。コース上では降り続いた分の水量だけが積算され続けることに。

 結果、GT300のQ1A組は路面の水量増加で赤旗途中終了となり、Q1B組もスタート時間が10分のディレイに。これで本来の予定より20分遅れの14時53分から始まったGT500のQ1は、幸いにして上空からの雨がやや小康状態のなか全14台が一斉にコースへと傾れ込む。

 ここからニッサン、ホンダ、トヨタとピット位置どおりの隊列でウォームアップが進むと、計測2周目で前年度開幕覇者の14号車ENEOS X PRIME GR Supra、山下健太が突如ピットへ。延長されたセッション時間も活用し、ここでタイヤセットの変更を決断してすぐさま戦列に復帰する。

 走行枠が15分となった勝負は、序盤こそチャンピオンの1号車MARELLI IMPUL Zの平峰一貴が、良好な視界も利してタイムボード最上段でタイムを詰めていく。しかし計測5周目に移籍組の37号車Deloitte TOM’S GR Supraの笹原右京が1分30秒238でトップを奪うと、ここから連続周回でのタイム更新合戦が繰り広げられる。

 続く周回から「雨量が減じたダンプ路面に強い」との評価を得るミシュラン勢がワン・ツーに立つと、計測7周目には一時コースオフも伝えられた100号車STANLEY NSX-GTの牧野任祐が1分29秒台へと突入してくる。

 続く計測8周目には上位勢が軒並みベストを更新できず、ここで勝負は決したかと思われたが、チェッカーラップとなった自身計測10周目に1分29秒659とした23号車MOTUL AUTECH Zのロニー・クインタレッリが首位を奪還。午前の豊富な周回数も活かして、タイヤと路面の状況を読み切りトップに返り咲く。

 さらに64号車Moduloの伊沢拓也も100号車牧野の背後3番手に飛び込み、今季1台のみとなったダンロップ勢ながら、見事Q2に進出。タイヤ交換で仕切り直した14号車ENEOS X PRIMEの山下も最後の最後で6番手に滑り込み、同じくタイヤ交換作戦を選択した17号車Astemo NSX-GTは敗退とここでは明暗が分かれる展開に。

 最終的にトヨタ勢は7番手の19号車WedsSport ADVAN国本雄資を含む4台が、ホンダ陣営は8号車ARTA野尻智紀を含む3台が、そしてニッサンはミシュラン装着の2台が8番手のカットラインをクリアする結果となった。

2023スーパーGT第1戦岡山 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)

■Q2:雨のミシュラン健在。松田次生が13年ぶりのポール獲得

 GT300のQ2を挟み15時41分より開始されたQ2では、さらに路面状況が改善。レコードラインの水量が減っていくコンディションのなか、ヘアピン以降テール・トゥ・ノーズの接近状態でウォームアップを進めた100号車STANLEYの山本尚貴と、14号車ENEOS X PRIME大嶋和也が、ミシュラン勢の背後でタイヤへの熱入れと同時に、コース上でのポジション合戦も展開する。

 しかしその後の時間は前評判どおりのワンサイドゲームとなり、陣営内対決で毎ラップのようにタイムを更新した23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生が躍動。最終的に1分27秒860まで伸ばして今季初、そしてCNF時代最初のポールポジションを獲得してみせた。

 松田自身は午前の公式練習で1ラップもしていないなか、難しい条件をものともせず2番手の3号車に対し1秒175もの驚異的なギャップを築き、2010年のマレーシア戦以来、自身13年ぶりの予選最前列を手にした。

 さらに背後のセカンドロウでも熾烈な3番手争いが展開され、ベテランとなった14号車ENEOS X PRIMEの大嶋を退けたGT500ルーキー、64号車Moduloの太田格之進がデビュー戦での3番グリッドを手にする好パフォーマンスを披露。3列目には19号車WedsSport ADVAN阪口晴南と37号車Deloitte TOM’Sジュリアーノ・アレジが並び、4列目に8号車ARTA、100号車STANLEYのグリッドとなっている。

2023スーパーGT第1戦岡山 GT500のポールポジションを獲得した松田次生(MOTUL AUTECH Z)
2023スーパーGT第1戦岡山 Modulo NSX-GT(伊沢拓也/太田格之進)
2023スーパーGT第1戦岡山 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)
2023スーパーGT第1戦岡山 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)

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