悔しさ残る面々……「ハメられた」「今は人に会いたくない」「宙に舞った」「今日のままなら歯が立たない」【GT500予選後MixVoice】

 ウエットコンディションとなったスーパーGT第1戦、開幕戦の岡山予選。タイヤ選択、セットアップの難しい中、各チームはどのように予選を戦ったのか。予選後に聞くことができたドライバー、エンジニア、そしてチーム関係者の声を集めた。

●「満足はしていないけど満足、という難しい心境」
#19 WedsSport ADVAN GR Supra 予選5番手 坂東正敬監督

 このオフ、ミシュランに似た3本のグルーブド(縦溝)が特徴的な新型ウエットタイヤを投入してきたヨコハマ陣営。その最初のウエットタイヤ対決ではミシュランがワン・ツー、そしてダンロップが3番手となり、ヨコハマ勢では19号車WedsSport ADVAN GR Supraが5番手の最上位となった。新投入のタイヤでの5番手獲得、19号車の坂東正敬監督も複雑な心境だった。

「どのチームも同じだったと思うのですけど、正直、シーズンオフに一度しかウエットテストができずにどうなるかわからない中、結果的に5番手というのは開発陣が非常によく頑張ってくれたタイヤのおかげだと思います。逆に言うと5番手というポジションだからこそ、そこから上とのタイム差、タイヤの温まり方、タイムの出し方という部分で課題ができたと言うところで、満足はしていないけど満足、という難しい心境です(苦笑)」

「同じウエットでも、また富士とか鈴鹿では状況が変わると思うのですけど、それでもデータ収集としてはとてもプラスになった5番手だったと思います。決勝もこのまま1ミリくらいの雨量が続くのか、それとも乾いていくのかにもよりますけど、それなりの手応えはあります。ただ、雨量が多くなった時はまた話が変わってくるので、そのあたりはまたデータ採りをしながら他メーカーに追いつけるように頑張るしかないですね」

新トレッドパターンのレインタイヤを投入して予選5番手のWedsSport ADVAN GR Supra

●「完全な判断ミス。今日はもう早く寝ます」
#38 ZENT CERUMO GR Supra 予選14番手 Q1担当:立川祐路

 GT500で歴代最多ポールポジションを獲得している立川祐路が、まさかの予選Q1を担当。しかし、タイヤの選択を失敗してしまい、走行した中で最下位という状況になってしまった。予選Q1を担当することになった経緯から聞いた。

「今は人に会いたいくないですね。チームと石浦(宏明)に行ってくれと言われてQ1を担当しました。ハメられたんじゃないかと思いましたが、午前中の自分が走っていた時はヘビーレインで、ヘビーレインの中ではタイムが良かったらしいので、そのままQ1を担当することになったようです。たしかに土砂降りの時はクルマは良かったのですけど、Q1はどんどん乾いていく方向で、タイヤ選択と内圧が合っていなかった。Q1ではタイやプレッシャーも結構上がってしまっていて、タイムが伸びる状況ではありませんでした」

「走行時間も10分から15分に伸びていたので、そういう部分も含めて完全に判断を間違った形になってしまったのが、一番悔しいですね。きちんとやってのタイムだったら仕方ないですけど、判断ミスによる失敗なので。でも原因ははっきりしているので、明日はいい判断をして、追い上げられるチャンスはあると思っています。とりあえず今日はもう、早く寝ます」

38 ZENT CERUMO GR Supra

●「宙に舞って錐揉みみたいになった」
#39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra 公式練習でのクラッシュにより予選未出走 中山雄一

 公式練習の中盤、モスSでコントロールを失い、アウト側のタイヤバリアにクラッシュしてマシンが回転する大きなアクシデントとなってしまった39号車。ステアリングを握っていた中山雄一に状況を聞いた。

「ドライバー交代して計測2周目ですね。1周前のモスSはラインが外れた部分は水が多かったのですけど、ライン上は水が少なくて、徐々にペースを上げていこうと走っていたところ、何の予兆もなく右リヤが滑ってしまって……。突然、雨量が増えたのか、クルマがコンデイションに合わなくなったのか、フロントガラスに当たる雨の勢いがかなり増えていたので、『慣らしながら行きます』とチームに無線で伝えた直後に、ここまで滑るのかという感じでした」

「滑ってからはまったくコントロールできずに、スポンジバリアにぶつかった時の柔らかい感覚や、宙に舞って錐揉みみたいになったのは覚えています。そこからはよく分かっていないのですけど、地面にドンっと落ちた時が一番衝撃がありましたが、体は意外にどこも大丈夫です。クルマは前後が大きく壊れてしまいましたけど、ドアやサイドはキレイに残っていました。幸い致命傷にならずに、ここが壊れていたら明日の決勝に出れなかったという部分が壊れていなかったので、クルマは直ると思います」

「メカニックさんには徹夜の作業になってしまいますし、明日はクルマを直して頂いたメカニックさんに感謝しきれない気持ちになると思いますので、メカニックさんたちの頑張りに応えたいです。それに関口選手、(脇阪)寿一監督には『あの状況で攻めたからクラッシュになってしまったけど、その攻める姿勢があるのはいいこと』と言ってくれているので、自分にとって一番いいカウンセラーがふたり、同じチームにいてくれて助かっています」

2023スーパーGT第1戦岡山 クラッシュを喫し回収されるDENSO KOBELCO SARD GR Supra

## ニスモ同士のポール争い。トヨタ最上位でも厳しいコメント。モノコック交換の背景……

●「素直に悔しいです」
#3 Niterra MOTUL Z 予選2番手 Q2担当:高星明誠

 同じニッサンZ、そしてミシュランタイヤというパッケージで、ニスモ同士のポール争いとなった予選。Q2では23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生と3号車の高星がトップを奪い合う展開となり、最後に次生がポールを獲得。高星は2番手となってしまった。

「同じパッケージを使っていて23号車に負けてしまったので、素直に悔しいです。ただ、僕たちは今回、クルマの方で新しいトライをしてきていて、それがまだまだ調整しきれていなかったというところを確認できたし、それを外してしまったところでもミシュランのウエットタイヤがカバーしてくれたという部分では最小限にロスを抑えられたかなと思っています。そこはポジティブに捉えて、新しいトライをどうアジャストしていくのか。今回は気持ち的には悔しいですけど、明日に向けて気持ちを切り替えたいなとは思っています」

「(23号車とトップタイムを奪い合う展開で)最後のアタックで、タイムを更新できませんでした。それでも2番手という位置からスタートできるのは、レースをうまく運べる位置にはいますのでポジティブに考えて、ニスモとしてはワン・ツーでスタートしますけど、3号車としては勝てるようにチームと戦略を立てて進めたいと思います」

23号車MOTUL AUTECH Zの松田次生とポールを争った3号車Niterra MOTUL Z

●「今日の雨量のままだったら決勝は歯が立たない」
#14 ENEOS X PRIME GR Supra  予選4番手 Q2担当:大嶋和也

 苦戦が予想されたトヨタ/GRスープラ陣営の中で、予選最上位となった14号車。過去2年の開幕戦を制していることから得意の岡山と言えるが、雨での結果に悲喜交々の様子。予選Q2を担当した大嶋に聞いた。

「これ以上はちょっと、今のパッケージでは無理でしたね。上(ミシュラン、ダンロップ)はちょっと速すぎます。クルマも走り始めから良かったですし、雨量によってタイヤの選択も難しいかったですけど、選んだタイヤも、作戦も悪くなかったと思います」

「とりあえず、今の力は出しきれたかなと思います。この順位で明日ドライになるようだったら勝ちも狙えますけど、今日の雨量のままだったらちょっと歯が立たないですね。ちょっと他のトヨタ勢が沈んでいる中ですが、この順位に来れて良かったです」

14号車ENEOS X PRIME GR Supraは大嶋和也がQ2を担当して4番手を獲得

●「最後までグリップ感がありませんでした」
#100 STANLEY NSX-GT 予選8番手 Q2担当:山本尚貴

 予選Q1では2番手を獲得して上位グリッドが期待された100号車。しかし、Q2ではまさか、最下位の8番手に沈んでしまった。予選後も重い表情のままの山本尚貴に聞く。

「Q1とはちょっと違うタイヤだったのですが、最後までグリップ感がありませんでした。また明日、頑張ります」

この岡山で優勝候補にも挙がる100号車STANLEY NSX-GT

●「リヤタイヤが全然温まっていなかった影響がタイム差になった」
#8 ARTA MUGEN NSX-GT 予選7番手 一瀬俊浩エンジニア

 スーパーフォーミュラでも好調の野尻智紀と大湯都史樹のコンビとあって、今季の注目チームのひとつとなっている8号車。ホンダ陣営のブリヂストン勢で最上位となったが、8番手という結果にはまだまだ満足していない。担当の一瀬エンジニアに聞くとともに、この開幕戦でモノコックを交換したことも明らかになり、メンテナンスを担当するTEAM MUGENの田中洋克氏にも経緯を聞いた。

「セットアップの評価とかまだよく分かっていない状況ですけど、その中でもとりあえずQ1を突破してQ2に繋げられたので、最低限のことはできたのかなと思っています。Q2では同じブリヂストンタイヤ勢でもトヨタ勢とホンダ勢で差があった印象もあるので、そこの原因が何か、あとはセットアップとしてさらなる改善シロがないかなどを今夜探ってみてというところですね。Q2はタイヤのウォームアップで前後バランスが良くなくて、リヤタイヤが全然温まっていなかった影響がかなりタイム差になったのかなと思っています。ウエットタイヤの選択も失敗したかなと思っています」(一瀬エンジニア)

●「安全上のことを考えてモノコック交換を申請しました」
#8のモノコック交換について TEAM MUGEN管理担当の田中洋克氏

「ずっとステアリング系に不具合があって、これまでいろいろ部品を換えてきましたが改善せず、最終的に残ったのシャシーからその不具合が来ているのかなと。今シーズンだけでなく来年以降のことも考えると、ステアリングなのでどこかで大きなトラブルが出て事故にならないとも限らないので、安全上のことを考えて交換を申請しました。交換してから不具合の症状は出ていません」
※モノコック交換により、8号車は日曜のレースでペナルティストップ5秒が課される。

モノコックを交換した8号車ARTA MUGEN NSX-GT

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