教員免許持たぬ「社会人教員」の採用広がる 人員不足や長時間労働の解消へ

広島県教委

 全国の教育委員会が、教員免許を持たない社会人の教員への採用に力を入れている。中国地方の広島、島根、鳥取の3県は本年度の試験で、免許を持たない社会人を採用する対象教科を拡大。山口県は社会人向けに免許取得費用を補助する制度を新設した。全国で教員不足が浮き彫りになる中、各県とも実社会で経験を積んだ人材の積極的な登用を目指している。

 広島県は、2012年度実施の試験から教員免許がない社会人の特別選考を高校の工業科と看護科で始めた。本年度は対象を高校の福祉科にも広げる。介護福祉士か看護師の資格を持ち、正規職員として5年以上の勤務経験があることなどが受験条件。採用する場合、県教委が特別免許状を出す。特別免許状を持つ教員は交付を受けた都道府県だけで教壇に立てる。

 島根県も本年度、特別免許状による社会人採用試験に高校の情報科を追加。鳥取県も中学、高校の家庭科と中学の技術科を加えた。

 山口県は教員免許を持たない人向けに、新たに「教職チャレンジサポート特別選考」を設けた。合格者には教員免許を取得するための学費として年26万円を上限に2年間補助し、取得後に正式採用する。全ての校種で教科を限定せず募る。従来通り高校の工業、情報、農業の3科で教員免許を持たない社会人の採用試験もする。岡山県も同様の採用試験を中学、高校の英語などで実施している。

 各県が社会人の採用に力を入れる背景には全国的な教員不足がある。定年による退職が増えた一方で、学校現場の長時間労働が社会問題化し、志望する若者が減る傾向にある。

 広島県の教員採用試験の昨年度の志願者数は3227人と10年前の02年度比で15・8%減。4・8倍だった志願倍率は3・4倍に下がった。文部科学省は教員確保のため22年4月、教員免許がない社会人を採用できる特別免許制度を積極的に活用するよう各都道府県教委に通知している。

 広島県は今月29日までに県内外の会場とオンラインで計19回の採用説明会を開き、社会人の採用をアピールする。県教委教職員課は「民間の現場をよく知り、高い専門知識を持つ人に教員として活躍してほしい」としている。

© 株式会社中国新聞社