<レスリング>2023年アジア選手権(カザフスタン)出場の男子フリースタイル・チームが帰国

 

 カザフスタン・アスタナで行われた2023年アジア選手権に出場した男子フリースタイル・チームが4月16日、羽田空港に帰国した。初の国際大会だった92kg級の吉田アラシ(日大)が優勝し、「銀1・銅4」を獲得。国別対抗得点は2017年以来の2位という好成績だった。

 湯元進一コーチ(自衛隊)は「若く、しかも重量級の選手が勝っていいムードです。日本のレスリングが盛り上がると思います」と、今回の成績が今後の勢いにつながるとして、うれしそう。「軽量級や74kg級、86kg級でも優勝できたと思う。そこを取れなかったのは悔しい」という言葉も出てきた。メダル獲得では物足らず、優勝できなかったことが無念の気持ちになるほど、今の日本チームには力がある。

 国別対抗得点は、イランを5点上回っての2位だった。イランは86kg級のハッサン・ヤズダニ(4度世界一)が出てないなどベストメンバーではなく、一・二軍混合チームだった。「イランがベストメンバーなら、(順位は)どうだったかな?」との問いには、「日本も一・二軍混合チームです。ベストメンバー同士でも、上に行った可能性はあります」ときっぱり返し、選手の実力を信頼した。

▲国別対抗得点表彰式。2位のトロフィーを受け取った湯元進一コーチ(自衛隊)=撮影・保高幸子

勝ち進むにつれ、「優勝したい」という気持ちが強くなった

 「19歳3ヶ月3日」という日本男子最年少のアジア王者に輝いた吉田アラシは「優勝したこと、最年少だったこと、どちらもうれしいです」と凱旋帰国の第一声。日本代表として優勝を目標に出場するのは当然だが、現実を考えると、最初は「スポットライトを浴びて闘うところ(3位決定戦以上)で闘いたい。そこに行けるといいな」くらいの気持ちだったと言う。

 1回戦で父(市川コシティのエスファンジャーニ・ジャボ代表)の母国イランの選手に勝って波に乗り、実力のすべてを出し切って頂点に輝いた。「日本選手とは違うスタイルですが、組み手は日本選手の方がやりづらい」とのことだが、テクニカルフォールは予想以上の結果。ここで波に乗り、勝ち進むにつれ、「優勝したい」という気持ちが強まっていったと言う。

▲羽田空港で家族に迎えられた日本男子最年少アジア王者の吉田アラシ(日大)

 一方、2回戦のモンゴル戦は4点を先制され、「今後の課題です」と振り返る。さらに、「優勝したことで周囲からマークされる。今までと同じ闘いではポイントを取れなくなるでしょう」と話し、これからの練習に気を引き締める。

 羽田空港には家族が総出で出迎え、快挙を祝福した。父によると、イラン人の血が流れている吉田の快挙は、イランでも大騒ぎになっているそうだ。「1回戦の相手は、おじさんが世界チャンピオンで、期待の選手なんですよ。その選手を破るんですから…」と、息子の快挙に相好を崩しっぱなし。

 6月の明治杯全日本選抜選手権の出場階級は未定。周囲は、オリンピック階級(97kg級)に出場し、勝って世界選手権、さらにはパリ・オリンピックへの挑戦を期待するだろうが、じっくり鍛えたいという気持ちもある様子。いずれにせよ、日本重量級の発展に大きなパワーとなりそうな若き王者の誕生だ。

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