地方議会、2000年代になにか変わったの? (原口和徳)

2000年代に入ってから6回目となる統一地方選挙も後半戦に突入しています。すでに投票が行われた道府県議会議員選挙や政令指定都市の議会議員選挙では、無投票や低投票率などが話題となりました。

これらの事象は、最近になって急に出てきたものなのかどうか、2000年代に入ってから地方議会に生じた変化と共に確認してみましょう。

議員数は半減!

総務省によると、1999年末に地方議会議員の定数は全国で63,023名(都道府県議会議員2,910名、市区町村議会議員60,113名)でした。

第15回統一地方選挙が実施された2003年末には60,011名となり、前回統一地方選挙の行われた2019年末には32,783名、2022年末には32,447名と推移しています。

図表1_地方議会議員数の推移

議員数の削減には平成の大合併が大きく影響しています。

例えば、2003年の統一地方選挙時点での団体(都道府県+市区町村)数は3,257でしたが、2019年の統一地方選挙では1,788まで減少しています。特に町村数は2,511(2003年)から926(2019年)とおよそ1/3まで減少しています。加えて、各地の議会で行われている議員定数削減の取り組みよってさらなる議員数の削減が図られています。

若者と女性は徐々に増加

議会における若者や女性の参画状況はどうでしょうか。

図表2_統一地方選挙における40歳未満の候補者、当選者の割合

統一地方選挙での候補者と当選者における40歳未満の割合は、候補者では4.7%(2003年)が7.9%(2019年)へと増加し、当選者でも3.9%(2003年)が7.0%(2019年)へと増加しています。

なお、候補者、当選者ともに40歳未満の割合が最も低いのは町村議会です。

町村議会でも、候補者は1.8%(2003年)から2.9%へと増加し、当選者も1.6%(2003年)から2.7%(2019年)へと増加しています。

議会において女性議員が占める割合も増加しています。

図表3_女性の地方議会議員数の推移

地方議会議員に占める女性議員の割合は2003年7.9%から2019年14.3%と増加しています。

ただし国際比較をすると、議会における女性の割合は依然として非常に低い水準に位置しています。国連女性機関の調査では、対象となった133か国のうち、日本は高い方から数えて105番目となっていました。

【関連】数字で見る地方議会への女性の政治参画(原口和徳)

増える無投票当選

前回の統一地方選挙において、候補者が定員数に満たない定員割れの議会が8つの町村で生じるなど、議員のなり手不足も頻繁に報じられています。

4月9日投開票の道府県議会議員選挙は939選挙区で行われ、そのうち348選挙区(37.1%)が無投票当選となっています。また、当選者数で計算すると、当選した道府県議会議員うち25%の人が無投票で当選したことになります。

道府県議会議員選挙における無投票の割合は総じて上昇傾向にあり、2003年31.3%(選挙区数ベース)と比べると5.7%の増加です。

なお、無投票当選について、半数近くの人が受け容れているとの調査もあります。

明るい選挙推進協会が統一地方選挙を対象に行っている意識調査において、無投票当選について「無投票になっても仕方がない」「無投票当選でもよい」と回答した人の割合が、49.1%(2003年)、49.3%(2019年)となっており、半数近くの人が無投票を受け入れていることがわかります。また、「無投票になっても仕方がない」との回答は、大都市32.0%、町村49.7%(ともに2019年統一地方選挙に対する回答)と居住地の規模によって考え方が大きく異なっていることも特徴です。

選挙の競争率は変わらず

選挙の競争率(候補者数÷当選員数)も確認してみましょう。

図表4_統一地方選挙における競争率

2003年の統一地方選挙での競争率は全区分で1.17倍、最も競争率が高かったのは道府県議会議員で1.46倍でした。

2019年の統一地方選挙では全区分1.22倍、道府県議会議員1.34倍となっており、道府県議会議員の競争率が若干低下したものの、他の区分では目立つ変化は生じていません。

投票率は低下が続く

統一地方選挙では投票率の低下も深刻な状況です。

道府県議会議員選挙における投票率は、1999年には56.70%でした。2003年には52.48%となり、2019年44.02%、2023年41.85%となっています。2023年の投票率は過去最低の記録となっており、道府県議会議員選挙が行われた41自治体のうち30自治体が過去最低の投票率を記録しています。

また、政令市議会議員選挙の投票率41.77%も過去最低の投票率となっており、選挙の行われた17市の内11市で前回統一選を下回る投票率となっています。

図表5_統一地方選挙における投票率の推移

有権者による投票啓発活動のバリエーションの増加

地方自治体の選挙において国政選挙よりも投票率が低下したり、無投票が発生することは日本に限った事象ではありません。

例えば、18歳選挙権の導入時に頻繁に参照されたアメリカやイギリスにおいても同様の問題は生じており、状況の改善に向けた試行錯誤が行われているところです。

【関連】低投票率と無投票は海外でも問題に。統一地方選挙はどうなる?(原口和徳)

日本でも、期日前投票所や共通投票所の活用などの行政が行う取組だけでなく、選挙割やボートマッチ、選挙小屋の設置など、海外事例も参考にした市民サイドの取り組みが増えてきています。

これらの取り組みは、長年続く投票率の減少傾向に歯止めをかけることができるでしょうか。

ここまでに見てきたように、2000年代は、地方議会にとって当選者、候補者、投票者といった「地方議会に関わる人」が減少し続けた20年間となっています。

新型コロナウィルスのまん延によって、私たちの生活様式は大きな変化を強いられました。

私たちが暮らすまちの未来も、私たちの生活、行動の変容を踏まえたものへと変わっていく必要があります。

新型コロナウィルス感染症のまん延を経験した後に迎える最初の統一地方選挙において、地方議会にもなんらかの変化が生じることになるのかどうか、注目されます。

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