ともにクレイグ・ブリーンと切磋琢磨したライバルたちから追悼の声「これは何かの間違いだ」/ERC

 今季2023年もERCヨーロッパ・ラリー選手権の開幕戦にチーム・ヒョンデ・ポルトガルから参戦し、パンクを喫しながらも総合6位フィニッシュを果たしていたクレイグ・ブリーン『急逝』の報に接し、ともにチャンピオンシップを賭け切磋琢磨したライバルであり友人でもあるラリーストたちから、追悼の声とともにその喪失を惜しむ多くの声が挙がっている。

 今シーズンより古巣ヒョンデに復帰し、ファクトリー契約ドライバーとして再スタートを切っていたブリーンは、クロアチアで開催されるWRC世界ラリー選手権第4戦への出場に向けプレイベントテストに参加。その4月13日に、不慮のアクシデントで帰らぬ人となってしまった。

 現役世界選手権ドライバーの突如の訃報に、世界中から驚きと悲しみの声が挙がるなか、そのステップアップの過程でブリーンも腕を磨いた欧州選手権の現場からも悲しみの声が聞こえている。

 2013年から2年間、ジュニア王者としてファクトリー支援を受けた『プジョー207 S2000』や同R5規程モデルの『208 T16』などでランキング3位につけた“アイリッシュマン”は、続くシーズンにもプジョー・ラリー・アカデミー生として同ランク2位を獲得し、そのプライズによりWRC昇格への道を切り拓いた。

 WRC通算82戦を数えるキャリアを築く道程でも、絶えずERCへのチャレンジを続けたブリーンは、2016年の地元アイルランド戦でERC通算5勝目を挙げると、2020年から2年間はチームMRFタイヤの開発にも貢献。その後のインド製ラリータイヤの欧州選手権制覇への足掛かりを築いた。

 そのブリーンとはERCからWRC時代を通じて競い合ってきた、2023年ERC開幕戦覇者のヘイデン・パッドンは「これは何かの間違いだ!」と、その胸中を綴った。

「君は人間として、そしてドライバーとしてレジェンドと言える存在だった。君がいなければ、このスポーツはより貧相なモノになっていくよ……。RIP、安らかに眠れクレイグ。僕の思いはこの壊滅的な時期に君の家族全員とともにある」

今季より古巣ヒョンデに復帰し、ファクトリー契約ドライバーとして再スタートを切っていたクレイグ・ブリーンは、ERC開幕戦で総合6位フィニッシュを果たしていた
ブリーンとはERCからWRC時代を通じて競い合ってきた、2023年ERC開幕戦覇者のヘイデン・パッドン

■ブリーンの貢献に感謝

 そしてブリーンとともに共闘したチームMRFタイヤほか、今季チームに所属するアンドレア・メベリーニらも、相次いで追悼の言葉を記した。

「MRFタイヤは、ERCの旅路を歩み始めるのに際し、あなたが与えてくれた貢献をいつだって忘れません。クレイグ・ブリーン、安らかに眠ってください。あなたがいなくなるのは、本当に寂しいです……」(チームMRFタイヤ)

「今日起こったことについて、言葉はないと思います。僕の心は散り散りに壊れている。クレイグ、安らかに眠ってください」(アンドレア・メベリーニ)

 そして2023年はチームの一員として、ともにポルトガル国内選手権を戦うベテランのリカルド・テオドシオも「僕らが今、こうして友人や同僚を失ったことについて話しているのは、非常に悲しいことだ」と想いを寄せた。

「僕は彼にこう言ったのを覚えている。『もっと速くなるために、あなたの助けが必要だ』って。でも彼の答えは『必要ないさ』だった。この瞬間に、本当に彼を助ける必要があったのは僕の方だった! こうした会話や、彼と交わした言葉、これらはすべて僕の残りの人生で大きな部分を占め続けるだろう……」

 そしてフランス出身のヨアン・ボナートも、追悼の意を表すべく次のように付け加えた。

「なんて悲しいこと。僕はクレイグのそばにいられて、ともに競えたことを幸運に思うし、いなくなるなんて本当に寂しい……。僕の思いはすべて、彼の家族と彼を愛する人たちとともにある」

昨季2022年に悲願の欧州選手権制覇を達成したTeam MRF Tyresも、黎明期を支えたブリーンに哀悼の意を示した
フランス出身のヨアン・ボナートも「クレイグのそばにいられて、ともに競えたことを幸運に思う」と語った

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