シドニーのナイトレースでTCRワールドツアー初年度カレンダーが完成。コムトゥユーはロブ・ハフを起用

 今季2023年より創設される新生ツーリングカーシリーズ、TCRワールドツアーで、すでに“聖地”バサーストのカレンダー入りが発表されているオーストラリアにて『2番目の開催地』が確定。夜間の照明設備を備えたシドニー・モータースポーツパークが“ナイトレース”を開催することで、グローバル展開初年度のスケジュールが完成した。

 そのTCRワールドツアー参戦を表明していたコムトゥユー・レーシングは、当初の4台体制から減少するプログラムとなったものの、ツーリングカーの元世界王者ロブ・ハフと、アウディスポーツ契約ドライバーのフレデリック・バービシュを起用。同じくタイトル防衛に挑むTCRヨーロッパ・シリーズでの4名のラインアップも明らかにした。

「象徴的なマウントパノラマ、そして最新鋭のシドニー・モータースポーツパークの双方で、こうしてTCRオーストラリア・シリーズと新生TCRワールドツアーを開催できることに興奮している。このオーストラリア大陸で11月の連戦が組めたのは素晴らしいことだ」と挨拶したのは、現地のシリーズオーガナイザーを務めるモータースポーツ・オーストラリアのユージーン・アロッカCEO。

「我々の国が有する象徴的なふたつのサーキットで、より国際的なふたつのイベントが開催されるのはエキサイティングな見通しだ。この機会は確実にオーストラリアのTCRシリーズにとっての後押しになるし、多くのエントラントや関係者、そしてファンが訪れることが期待される。それはNSW(現地ニューサウスウェールズ州)にとっても経済的な貢献となるだろうね」

 これにより初年度のTCRワールドツアーは投光照明の元で実施されるナイトレースから、バサースト、そして現在も開催協議中のマカオ・ギアレースと3週連続でのフィナーレに向かう。

 その新シリーズへの参戦コミットを確約しつつ、体制未発表となっていたアウディスポーツのトップカスタマーは、この4月中旬に入って改めて2台のマシンを登録することを表明。順当な人選となったバービシュに加えて、イギリス出身のWTCC世界ツーリングカー選手権チャンピオンをサプライズ起用した。

「我々にはフレデリック・バービシュとロブ・ハフという、真のタイトル候補たりうるふたりがいる。このTCRワールドツアーとTCRヨーロッパがクロスする忙しい週末もいくつか控えているが、挑戦する準備はできている」と語るのは、チームのプロジェクトリーダーを務めるロビン・ヴァン・へーメルライク。

新生『TCR World Tour』最後のピースは、夜間の照明設備を備えたシドニー・モータースポーツパークでの”ナイトレース”に
WTCR最終年となった昨季は、Zengo Motorsportで奮闘したロブ・ハフ。今季はアウディ陣営入りを決めた

■コムトゥユー、TCRヨーロッパに向けた体制も発表

 2021年のWTCR世界ツーリングカー・カップでランキング2位に入り、翌2022年にGTワールドチャレンジに主戦場を移していたベルギー出身のバービシュにとって、今回の抜擢は“古巣復帰”となり、そのWTCR最終年で限られたプログラムながら、ゼングー・モータースポーツで奮闘したハフにとっては新天地での再出発となる。

「新たなTCRワールドツアーはある部分でWTCRの意思を受け継ぐ存在ではあるが、既存のチャンピオンシップにジョインするという完全に新しい方式を採用している」と続けたへーメルライク。

「TCRが望んでいた『カスタマーレース』のアイデアに応えるこの世界大会は、スパ・フランコルシャン、サンルイス、バサースト、そしてマカオなど、世界に名だたる有名なサーキットと非常に相性が良いだろう」

「我々は公式のアウディスポーツカラーを採用し、引き続き第2世代アウディRS3 LMSで過去2年間に得た経験を利用し、チームとドライバーのタイトルを目指したいと考えている」

 そのコムトゥユー・レーシングは、同時にTCRヨーロッパに向けた体制も明らかにし、昨季ランキング2位を獲得したおなじみトム・コロネルを筆頭に、インディペンデントに相当するダイヤモンド・トロフィー受賞者のヴィクトール・ダビドフスキーの残留に加え、すでにアナウンス済みだったラリークロス界の新鋭コービー・パウエルの起用と、経験豊富なジョン・フィリピの移籍加入をアナウンスした。

「TCRヨーロッパも依然として素晴らしいチャンピオンシップであり、2023年も確固たるカレンダーと非常に強力な競争相手により、さらに高いレベルの勝負が繰り広げられるだろう」と続けた前出のへーメルライク。

「2022年に我々が獲得したチーム、ドライバー、ダイヤモンド・トロフィー、そしてルーキー・アワードの4つのタイトルを防衛するため、世界戦とは異なり4名のドライバーで挑むことにした」

 同じくチームを率いるジャン-ミシェル・ベアト代表も「コムトゥユー・レーシングはつねに挑戦を楽しんできた」と、その決断の背景を明かす。

「すべての成果は、次の挑戦への第一歩に過ぎない。我々の目の前にあるシーズンは、チームの歴史の中でもっとも激しいものになるだろうと確信している」

 昨季ともにタイトルを獲得したネストールの実弟、フランコ・ジロラミはチーム離脱が確定したが、チームは引き続きアウディRS3 LMS 2を走らせ、スケジュールに組み込まれた3戦のTCRワールドツアー併催イベントでは、バービシュとハフを加えた6台体制の大所帯で挑むことになる。

ハフの僚友には、アウディスポーツ契約ドライバーのフレデリック・バービッシュを起用する
今季もトム・コロネルがTCRヨーロッパ・シリーズでの4名のラインアップを牽引する

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