シューマッハー、メルセデスF1のリザーブの仕事は「驚きの連続」 旧型車でのテストの計画も

 ミック・シューマッハーは、昨年末でハースF1チームを離れ、今年、メルセデスF1チームのリザーブドライバーに就任した。シューマッハーにはWEC世界耐久選手権やELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズの複数のチーム、全日本スーパーフォーミュラ選手権の少なくともひとつのチームからオファーが寄せられたようだが、彼は、今年はレースに出場せず、メルセデスでの仕事に専念するという決断を下した。

 以前、その理由について、シューマッハーは次のように説明した。

「このチームでの新しい役割に完全に没頭し、できるだけ多くのシミュレーター作業を行い、すべてのグランプリにリザーブドライバーとして出席したいと考えた。まずはチームの運営方法やマシンがどう機能するかについてできるだけ多くのことを学び、同時に僕がコース上に出る必要が出てきた場合には、すぐにそれに対応できるようにしなければならない」

 オーストラリアGPの後、シューマッハーは、シミュレーターでの作業がいかに有意義であるかについて語った。

「今は基本的にたくさんのシミュレーター作業に取り組んでいる。昨年、この世代のマシンでレースをしていたので、今季型のマシンをどう走らせるか、どういう作業をすればよいかについては、とてもよく分かっている。コースに出るときには、チームにとって追加の目としての役割を果たし、1年を通して開発プログラムに貢献していきたい」

2023年F1オーストラリアGP ミック・シューマッハー(メルセデス)

 過去2年間はハースでレースに出場すると同時に、フェラーリのシミュレーターに乗る機会を得ていたシューマッハーは、メルセデスがブラックリーのファクトリーに持つツールに大きな感銘を受けたと述べている。

「このチームのシミュレーターで走ることは、とても印象深い経験であるのは間違いない。このシミュレーターはものすごく高度でリアルなんだ。だからもっと乗る時間を増やしてほしいとチームに頼んだ。自分がシミュレーターで走るたびに、チームが進歩することができると感じるからだ」

 しかし、いかに優れたシミュレーターであっても、実際にコースで本物のマシンに乗る経験にはおよばない。チーム代表トト・ウォルフは、シューマッハーにリザーブドライバーとして最大限の準備を整えさせるため、旧型マシンでテストをする機会を与えるつもりであると述べている。メルセデスは、TPCプログラム(Testing of Previous Cars)に従い、2021年仕様のW12を使い、複数のサーキットでプライベートテストを行う計画を立てている。

「我々のドライバーのひとりが、病気や怪我で突然出場できなくなった場合、代わりに走るのはミックだ」とウォルフは言う。

「従って、近いうちに、彼にコース上で走行する機会を与える必要がある。旧型車の準備をしているところであり、できるだけ早く準備を整えたいと考えている」

 シューマッハーは、レースで走ることを恋しく思う気持ちはあるものの、今年のメルセデスでの経験は、新たな発見をもたらす素晴らしいものであると述べた。

ミック・シューマッハー(メルセデス)

「メルセデスに加入した最初の日、温かい歓迎を受け、すぐさまなじむことができた。ブラックリーのファクトリーでたくさんの時間を過ごしてきた。僕がまず言えるのは、このチームの体制は本当に印象的だということだ。彼らがプロジェクトに取り組む際にどれほどのレベルの準備を行うかということに、僕はまだ慣れようとしている段階で、すべての情報を吸収しようとしている。情報量が、これまで自分が経験してきたものよりはるかに多いんだ」

「それから、レギュラードライバーだと、これほど大勢のエンジニアとコミュニケーションを取ることはない。サーキットで直接マシンの担当をしてくれているエンジニアだけなんだ。バーレーンでのテストの時や開幕戦の時には、レースチーム全体に流れる情報の量と速度に本当にショックを受けた。僕が思っていたよりはるかに強烈で正確だった」

「僕にとって新しい発見をもたらす経験だ。どこか他のところでレースをしていたら得られないような、素晴らしい体験だと思う」

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