被災桜、よみがえる 大槌の旧赤浜小跡地、増殖させた苗木咲く

クローン技術でよみがえり、開花した旧赤浜小のソメイヨシノ

 東日本大震災の津波にも耐えた大槌町の旧赤浜小の桜がクローン技術でよみがえり、この春初めて花を咲かせた。復興工事のため2014年度に伐採されたが、住友林業(東京)が組織培養による苗木の増殖に成功。21年に同校跡地に植え直された。桜は震災後も力強く咲き、春が来るたびに被災者を励ました地域のシンボル。地元住民は「桜の子どもが帰ってきてくれた」と慈しみ、今後の生育に期待を込める。

 かれんな花を咲かせたのは、旧赤浜小跡地にある赤浜遺跡公園に植えられた1本。高さ2メートルほどまで育ち、複数の枝で薄いピンク色の花が浜風に揺れた。

 苗木は、芽の中にある1ミリほどの分裂組織「茎頂(けいちょう)」を培養液で育てた。同町には1.5メートルほどに生育した5本が贈られ、同校跡地のほか近隣にも植樹。残り4本はシカの食害などで苦戦しているだけに、町中央公民館赤浜分館の神田義信分館長(77)は「1本でも咲いてくれてほっとした。地元にとってうれしいニュース」とほほ笑む。

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